仕事・移動・生活……すべてがオンラインになった社会で、私たちはどのように働き、どう生きるべきなのか? また、通勤・出張や何気ない雑談を失い、働きづらさを感じたり、アイディアが生み出しにくくなったと思う人も多いはず。
7月2日に刊行された長田英知氏の新刊「ワーケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する『新しい働き方』」は、まさにそんな人のために書かれた1冊。長田氏はAirbnb Japan 執行役員で、シェア×働き方のプロフェッショナルだ。
本書では「ワーケーション」が創造性と生産性を両立する働き方の「解」として、個人・企業・さらには誘致する地方自治体の何を変えるのかを考察する。
海外と日本の事例をふんだんに収録
本書内においては、まだ始まったばかりの試みであるワーケーションについて、国内外の先進的な事例をふんだんに収録している。
海外企業においては、1200人以上の全社員がリモートワークで働いているGitLab社や、文書でのコミュニケーションを重要視しているAmazonなどの事例を引用し、真のリモートワークを実現するために必要なビジネスコミュニケーションを提示している。リアルかバーチャルか、同期か非同期かといったことを意識してコミュニケーションをとることが大切だとか、どのツールをどのような局面で使うべきかなど、リモートワークが普及した今だからこそ必要な、働き方のヒントが詰まっている。
国内企業においても、ユニリーバ・ジャパンや、三菱地所、日立製作所などの調査や事例を引用し、ワーケーションにどんな効果や問題点があるかについて言及している。たとえば、経営者、管理職からの視点では、帰属意識への不安や、人事評価の難しさが挙げられる。それに対して、ワーケーションを導入することで帰属意識が高まった事例や、著者の外資系企業での経験をもとにした、公正・公平な人事制度の方法を示している。また、労災・リスク管理といった領域まで網羅し、ワーケーションの導入の不安を解消している。
ポスト・コロナの「勝ち組自治体」になる方法
さらに、地域・自治体にとっても、ポスト・コロナ社会で勝ち組となるため、関係人口を増やす施策として、ワーケーションを提案している。ワーケーションとして訪れた人々に対して、「多様な人が集まる場」を仕掛けることこそが大切で、コワーキングスペースや、喫茶店などのサードプレイスの重要性を説き、新しい地方観光のあり方も示している。
個人にとっては、移動距離と創造性の相関関係の視点から、移動の重要性を説き、ワーケーションが個人の業務の生産性をいかに高め、そして、創造性を高めるのかを述べている。つまり、移動が必要ない社会において、創造性を高めるためには、移動をしなくてはいけないという矛盾をはらみ、その解決策がワーケーションなのだという。
ワーケーションについて網羅的に紹介している本書は、個人の働き方を見直したい人にとっても、制度導入を検討している企業や地方自治体の人にとっても、ポスト・コロナ社会の働き方を考える上でおすすめの一冊だ。