0歳児と4歳児の保護者をしてます盛田諒ですこんにちは。COVID-19にモヤつく日々のなか、子育てしながら働いている他の方々はどうしているのでしょう。できれば時間をとって話を聞きたいなあと思ったとき、まっさきに浮かんだのがイラストレーターのamycco.さんことemiさんでした。
emiさんは文鳥ちゃんのイラストで有名。2016年に子どものゴイちゃんが生まれてからツイッターには子どもの話題が増え、同い年の子を育てるものとしてしみじみ「いいね」をつけていました。
そんなemiさんにインタビューを申し込み、日々の暮らしについて話したところ、「うちも同じです……しんどいですよねそれ……」という共通の話題がわんさか。しかしそのなかにも肩の力が抜けた、それでいて芯の通った心地良さがありました。無理をせず、小さな出来事を大切にしているemiさんらしいエピソードは、日々のモヤにさしこむ光のようです。
料理の合間に一仕事
──いま仕事はどうされていますか。
保育園の時間帯にやってます。あと、ごはんを作ってるときは(ゴイちゃんが)一人で遊んでるんで、データの書き出しなどちょっとした作業は煮込んでる合間とかを見てやってます。本当は私が夜型で、夜が一番集中できるのでじっくり考える仕事は夜やりたいんですけど、子どもがなかなか寝てくれなくて、寝てくれる頃には私の方が眠くなってしまって困ってます……。
──うちも子が本当に寝ないのでわかります……。出産後、仕事の量は変わりましたか。
出産した2016年が一番忙しかったんですが、生まれた瞬間、仕事がパタッとなくなりました。「生まれました」とブログに書いたので気をつかってくれてたこともあると思うんですが、それに加えて、もしかしたらちょっとした絵を描いて発表してたのが仕事につながってたのかもしれないなと思います。描いたものをホームページとかに発表していたのがなかなかできなくなった、それもあるのかなと。
──いわゆるポートフォリオづくりが止まってしまって。
どこで私のことを知ってくださったのかわからない仕事をたくさんいただいていたんですが、自分からの発信が減ったせいか、そういう新たな出会いみたいなのは減ってしまいました。最近ではブログもなかなか更新しなくなってしまったので、見た人には「この人生きてるのかな」くらいに思われているかもしれません。
──代わりにツイッターでemiさんのことを知った人も多そうです。
そうですね……いまは晩ご飯何作ったとかしか、メモみたいなことしか書いてなくて、何のツイッターかわからなくなってますが……。
「1人でやりたかった!」にケンカした日々
──子育てでしんどかったなあ、というのはいつですか。
生まれてすぐ、子どもがいることにまだ慣れていなくて、「この人はどんな人なんやろう……」と思っていたときですね。愛情が自然に生まれてくるわけでもなく、どんな距離感で接したらいいかがわからなかった。最初は子育てが新鮮で楽しかったですが自分のペースで過ごせる日がなく、何ヵ月か経つごとにだんだん疲れてきてしまったので、「もし育児が週休2日制だったら、リフレッシュも休憩もできて、めっちゃ赤ちゃん育てるの楽しめるのに……」といつも思ってました。
──すべてが赤ちゃんのペースで進みますからね……。
1日の区切りがなくなるじゃないですか。「毎日しっかり寝てリセットして明日を迎える」とかじゃなくて、寝た後も、すぐ子どもが起きて、私も起きて……という繰り返しでいつまでも1日が終わらないので……。
──0歳の頃からすれば、いまは全然ラクになった。
一緒に4年間過ごしてだいぶ親しくなりましたからね。あと(子どもが)どんな人がわかって安心したところもありました。
けみおの眉毛のYouTube見るとなぜか即泣き止む赤子。もう2年前なのか…なつかしいな…。 pic.twitter.com/CKz2FrzoYD
— emi (@_shiemi) February 13, 2019
──ゴイちゃんはどんな人なんでしょう。
赤ちゃんのときからすごい研究熱心な人だな、と思ってました。
──研究……。
おもちゃがなくても、その辺のコップとか箱を使って自分で遊びを考えて、何時間も集中してくれたので、「今日は子どもと何して遊んであげよう」と考える必要がなかったんですよ。1人遊びが得意で、4歳になっても自分でなにかを組み立てるのが好きです。
──1人で遊んでくれるのは親としてはラクでよさそうですが。
1歳前後は黙々と遊んでくれててラクでした。大変だったのが2歳くらいのイヤイヤ期で、事あるごとに「1人でやりたかったー!1人でやりたかったー!」と言うんですよ。
──なんでも自分でやりたいという……。
カタコトしか話せないときは「1人!1人!」とずっと言っていて。こっちが「これやる?」と聞くと、「やらない」という。それで先に私がやってしまうと、「1人でやりたかった!」と言うんです。
──「これやる?」って聞いたのに……。
こうやって後から言葉にすると、「そんなことで?」と思ってしまうのですが、それで2歳のときは毎日ケンカしてて。子どもは根にもつ性格なので、あとになって「1人でやりたかった」と言うのでケンカになるんですよ。私、そんなにふだん怒ったりしないんですが、そのときは怒ってしまうことが多くて、「私って怒るんや……」みたいな気持ちになってつらかったです。
──そういうときあきぴょんさん(夫)はどう反応されるんですか。
夜、「こんなことがあってつらかったよ」と話そうとすると、「子どもももう言葉わかるから、あんまり悪く言わんとき」と言われてしまって。それはそうなんだけど子どもとしか昼間はしゃべれないから話くらいは聞いてほしいな……とは思いました。
──実際、そういう話できるのはお互いの配偶者くらいですからね。
そういう風に言って、短い時間でも聞いてもらったりはしましたね。
子どもが生まれてから一番輝いている夫
──家事育児は家族でどう手分けしていますか。たとえばお料理とか。
平日は私が作ってるんですが、子どもが生まれる少し前から休日は(夫が)たまに作ってくれるようになりました。掃除は夫がメインでやってくれてます。私が掃除ヘタで、キレイの水準がふたりで違うので……夫がきれい好きなので、細かいところにも気がついてやってくれてます。
──ツイッターを見ているとあきぴょんさんは子どものお世話も得意そうです。
夫は、子どもが生まれてからが一番輝いてるんじゃないかっていうくらい輝いてるんです。子どもと向き合う姿を見てるのが私は一番好きというくらい、そういう姿が見られてよかったな、と思います。赤ちゃんのときからお世話をしたり、あやしたりがすっごいうまくて……育児を通じて、夫のいいところを新たに発見した感じです。
一時帰宅してもずっとべったりあきぴょんにくっついている…。完全なるお父さん子だ( ⁰⊖⁰) pic.twitter.com/iy0wI4zTnD
— emi (@_shiemi) July 7, 2018
──いわゆる子どものしつけについて、あきぴょんさんと話し合うことはありますか。私は以前、子どもの寝る時間が遅いことをめぐって妻と醜い言い合いをしたんですが……。
話し合ったことはないですが、二人とも「早く寝てほしい」と言ってますね……。
──emiさん自身はしつけについてどう考えているんでしょう。
まだ自分自身のしつけがちゃんとできていないと思うので、人に対してしつけなんてできる立場じゃないと思っていて、一緒に学んでいく感じです。子どもは準備や片づけがすごく遅いんですが、私もめちゃくちゃ遅いので、人のこと言えないなと……。
──私も同じです……。子どもと接するときに心がけていることはありますか。
普通の人と話すときみたいにしてますね。口が達者なので大人としゃべってる気持ちになってしまうんですけど、よく考えたら理解力は幼児なので、配慮をしてあげないといけないなあと思うんですけど。まだ4歳なんだと、たまに思い出してあげないといけない。
──私自身、よく「親にこうしてもらったから」ということを意識して子どもに接することがあるんですが、emiさんはどうですか。
私も小さい頃は工作をしたり絵を描いたりするのが好きだったんですが、親は「もっと外で遊びなさい」などと言わずに好きなだけ好きな遊びをさせてくれる人でした。1人で好きなことに没頭できる時間ってとてもいいものだったなぁと今振り返っても思うので、子どもがレゴなどで作品づくりに没頭しているときは、できるだけ邪魔せず見守るようにしています。できあがる作品も楽しみで、作家さんとファンのような感じになっています。
うちにずっと飾っていたサヴォア邸のレゴを4歳児が分解して組み直してできた新たな建物。元は3枚目の建物なんだけど、新たなのもとても好き…。 pic.twitter.com/HWGeU38wjE
— emi (@_shiemi) January 17, 2021
──ゴイちゃんのレゴ、本当にすごいですよね。
ただ、自分が子どものころは全然ほめられて育った記憶がなくて。親は普通のいい人だったとは思うんですけど、「かわいいね」と言ってもらったこともないし、よくできてもほめられた記憶がなくて。当時は今ほどほめる文化がなかったのかなあと思うんですけど、それがちょっとさびしかったなというのがあるんで、子どもには意識的にほめるようにしてます。自信をもってもらいたいと。親も(ポジティブなことを)思ってくれてはいたのかもしれないけど、言葉にしてほめたり「大好き」って気持ちを伝えたりはしてくれてなかった。もし思っていてくれてたなら知りたかったなぁというのもあるし、言葉にしないと伝わらないこともあるな、と思ってそうしています。
──あきぴょんさんもそこは同じ感覚をもっているんでしょうか。
(ほめることについて)話し合ったりしてないし、意識もしてないと思うんですけど、2人ともなんとなくほめたりするようにはしている、と思います。
「作れなかった思い出」が増えていく
──COVID-19で変わったことはどんなことがありますか。
3歳から保育園に入ったんですが、入園した瞬間に2ヵ月くらい「登園自粛してください」となって。去年4月から仕事を増やしていこうと思っていたんですが、いきなり2ヵ月休みになり、どうスタートを切っていいかわからなかったです。
──仕事も生活もできないことも増えて、不安が大きかったかと思います。
不安ではあったんですが、最初のころはまだ「できることで楽しもう」と思えていました。近所を歩いたり、野菜を育てたりとか。ただ、1年以上が経って、「いつまでこれが続くんかな……」っていう不安があって……今が一番しんどいですね。
──出口の見えない不安ですね。
子どもが「やりたい」ということがあったとしても、そのたびに「コロナが終わったら行こうね」と言うのもつらかったですね。おなじ状況が1〜2年続いたら、子どもは成長してしまって、やりたかったことからも卒業してしまうから……。
──やりたかったことというと。
2〜3歳のとき「クッキー工場の見学に行きたい」と言っていたことがあったんです。神奈川に見学できる施設があるとわかって、旅行がてら行こうかと言っていたんですが、そのあと新型コロナで行けなくなって。一番興味があったときに行けたらいい思い出になっていただろうなあと。たぶん本人はもうクッキー工場に行きたかったことすら忘れているかもしれないんですけど、それもまたつらいですね……。
──COVID-19の影響もあり、子どもにつかう時間が増えると、自分のためにできることが減ってきたかと思います。
いろんなことをしようと思わなくなってきましたね。前は服を見るのも好きだったんですが、今は毎日、色違いで同じ形の服を交代で着てればいいや、くらいになって。
──仕事の仕方も変わりましたか。
夜中に無限の時間があったときは色々なことを思いついたなあ……みたいなことは思いますね。いつまでも探求したりとか、そういうことができなくなって。
──余白がなくなり、目の前しか見えなくなっていくような。
「これからどうしていきたい」という先のことがわからなくて、それよりも目の前の毎日を過ごすような感じになりました。絵を描くときも新しいものを生み出すというより、今までのストックから絞り出しているように感じることもあります。インプットはあまりできないのに、なんとかしてアウトプットをしようとしている、みたいな……。子どもと日々を過ごすことで広がった世界というのは確実にあって、世界がカラフルになった感覚すらあるのですが、まだ仕事には活かせていないです。
3人で、笑って暮らせていたらいいかな
──働きながら子育てをしている人なら少なからずわかる感覚かと思います。そんないまemiさんが自分のためにしていることはありますか。
無理をしないことですね。無理して追いつめられるよりは、色々できなくても気がラクになるようにしたい。子どもが0歳のとき、寝られなかったとき結構心身ともにしんどかったので無理をしなくなりました。「頑張るよりも寝よう」と。
──無理に100%以上のことをやろうとしない。
もう「元気に生きていけたらいいか」という感じになってきています。
──割り切るまでは葛藤があったかと思います。
子育ての不安はもともとあまりないんですけど、自分の将来への不安がずっとつづいてたんですよね。毎日やること以外になにかチャレンジしたりとか、時間をかけて取り組んだりということがなかなかできなくて、自分の将来が不安な時期が何年か続いて。そのあとに「元気に生きていけたらまぁいいか!」と思うようになってきました。
──段々自分のなかで変化が起きてきたような感覚ですか。
新型コロナの影響もあるかもしれないです。「悩んでもできないものは仕方ない」みたいな。あるもので、できるだけ楽しく。できないことが増えたなら、できる範囲で楽しいことを見つけていこうというふうに考えられるようになってきた、と思います。
──ゴイちゃんの成長とも関係があったり……。
そうですね……子どもが赤ちゃんのときは、夫婦2人で遊べなくなったことがすごくさびしかったんですよね。「たまには前みたいに2人で気ままに過ごしたいな……」と思ってたんですけど、子どもが成長して、3人で過ごすのが楽しくなったんです。2人だけで過ごしたいという気持ちはあまりなくなってきて、今の3人で今楽しめることを楽しみたい、今は3人で過ごせる特別な時間だという気持ちの方が大きくなってきました。
──どれくらいの時期からですか。
3歳くらい、おしゃべりが楽しくなってきてからですね。一緒に楽しめることが増えてから、かもしれないです。
──これから子どもと、家族でどんなことをしていきたいですか。
毎日楽しく生きていきたいです。できれば旅行とかもしたいですけど、でも、どこかに行くとかでもなくただ家にいるだけでもいい。3人で、笑って暮らせていたらいいな、と思っています。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。4歳児と0歳児の保護者です。Facebookでおたより募集中。
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