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Discover 2021で「GreenLake Lighthouse」「Project Aurora」発表、“Edge to Cloud”構成を強化

HPE、「インサイトの時代」に向けてGreenLakeポートフォリオを拡充

2021年06月28日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 米Hewlett Packard Enterprise(HPE)は米国時間2021年6月22日、年次イベント「HPE Discover 2021」を開催した。今年のDiscoverでは、同社が“Edge to Cloudプラットフォーム”と位置づける「HPE GreenLake」の最新サービスや、ハイブリッドクラウド環境向けの“ゼロトラスト”セキュリティなどを発表した。本稿では同社プレジデント兼CEOのアントニオ・ネリ氏による基調講演をレポートする。

今年のHPE Discoverでは、複雑化しているハイブリッドクラウド環境の運用をシンプル化/自動化する「HPE GreenLake Lighthouse」が発表された

米Hewlett Packard Enterprise(HPE) プレジデント兼CEOのアントニオ・ネリ(Antonio Neri)氏。「すべての企業はテクノロジーカンパニー。それがデジタル経済に参加するための必須条件だ」

「インサイトの時代」に向けてGreenLakeを強化、拡充

 2015年の分社化以来、HPEではオンプレミスとクラウドの“ライトミックス(正しい組み合わせ)”を標榜して、ハイブリッドクラウド戦略を進めている。2018年からCEOを務めるネリ氏は、ここにエッジも加えるかたちでハイブリッドクラウドの素地を整えてきた。その中核をなすのが、クラウド型のサービスをオンプレミスやエッジにも展開するHPE GreenLakeプラットフォームだ。昨年のHPE Discover 2020では、ここにコンテナ/データファブリックのソフトウェアポートフォリオ「HPE Ezmeral(エズメラル)」も加えている。

HPE GreenLakeが目指すのは、あらゆるITリソースやワークロードをクラウドサービス型のユーザー体験で提供できる環境だ

 ネリ氏は、昨年のDiscoverで打ち出した「インサイト(洞察)の時代」というメッセージを再度強調した。「この50年間、企業は“3V”――ボリューム(Volume)、バラエティ(Variety)、速さ(Velocity)――にフォーカスしてきた。一方で、インサイトの時代には“1つのV”、バリュー(Value)にフォーカスする必要がある」。現在の、データは豊富にあるが洞察は乏しいという状況を変えていかなければならない、と説く。

 データの収集、保存、アクセス、そして分析を支える技術とコストは大きく進化している。その一例として、ネリ氏はヒトのゲノムマッピングを挙げる。「2000年代に行われた最初のヒトゲノムマップ解析にかかったコストは20億ドル、期間は15年間だった。現在は1人1000ドル以下のコストに下がっており、時間も大幅に短縮されている」。この進化が医療に大きなインパクトを与えることになると続ける。

 HPEの研究部門、Hewlett Packard Labsにおいても、米Carnegie Clean Energyの波力発電にAIを用いる実験や、ドイツ神経変性疾患センター(​DZNE)でアルゴリズムとパラメーターのみを共有し、機密情報の共有なしで遺伝子研究を支援する取り組みなどを行っていると紹介した。

 それでは、HPEがGreenLakeにより、エッジからクラウドまでにもたらそうとしているものは何なのか。ネリ氏は「アプリとデータがどこにあってもクラウド体験を得られる」ユーザー体験だと語る。ハイブリッドインフラ上にある多数のクラウドサービス、業界固有のワークロードを選択して、それをサービスとして(as-a-Service)利用し、使ったぶんだけを従量課金型で支払えばよい。さらには、最短2週間というスピードで導入できる点も強調する。

 「HPE GreenLakeのエッジからクラウドまでのプラットフォームにより、データ主導のエンタープライズを今すぐ構築できる。HPE Financial Servicesを使ってアズ・ア・サービスモデルに自社のペースで移行でき、HPE Pointnext Servicesを使ってどこから始めるのかなどのアドバイスを受けられる」

 GreenLake事業は順調で、すでに世界900以上のパートナーが提供しており、第2四半期は42%増で成長した。利用企業の数は1200社以上にのぼるという。5月に新しいストレージブランド「HPE Alletra」を加えており、イベント中は、コンピューティングインフラのプロビジョニングと管理を行う「HPE GreenLake Cloud Platform」にComputeを加えた。一部顧客からスタートし、2021年後半に広範囲で利用できるようにする。

「GreenLake Cloud Services」のビジネス概況

運用自律化の「GreenLake Lighthouse」とゼロトラスト強化の「Project Aurora」

 Discover 2021の新発表で目玉となったのは、「HPE GreenLake Lighthouse」と「Project Aurora」だ。

 HPE GreenLake Lighthouseは、分散化が進み複雑化しているIT運用をシンプル化するために、Ezmeralをベースに構築されたクラウドネイティブなモジュラー型プラットフォームだ。ユーザーがハイブリッドクラウド環境の一元管理ポータル「HPE GreenLake Central」から、ワークロードやビジネス要件(最大のパフォーマンス、最小のコスト、その両方のバランスなど)、展開する場所(クラウド/データセンター/エッジ)を指定することで、複数のクラウドサービスを自律的に組み合わて最適なリソースを迅速に構成してくれるという。

 まずは仮想マシン/コンテナ環境向けを2021年夏に提供開始し、エッジや特化型ワークロード向けは2021年後半に提供するとしている。

GreenLake Lighthouseは、ワークロードとビジネス要件に適したリソースを自律的にオーケストレーションする

 Project Auroraは、GreenLakeクラウドプラットフォームに“ゼロトラスト”のセキュリティを組み込むプロジェクトだ。ネリ氏は「“エッジからクラウドまで”の世界では、セキュリティリスクはさらに大きくなる」と述べ、プラットフォームレベルで“Intrinsic Security”(内在するセキュリティ)を実現することが必須であることを指摘する。

 HPEではこれまでも、ProLiantサーバー内蔵の「HPE Integrated Lights-Out(iLO)」などを通じて、サプライチェーン/ハードウェア/ファームウェアといったレイヤーにおけるセキュリティの担保に取り組んできた。今回はそこに「OS/ハイパーバイザ」「プラットフォーム」「ワークロード」の各レイヤーを追加し、これらのレイヤーにおける一貫性を自動的かつ継続的に検証することで、不正な改竄などによる攻撃の発生を防ぐ。さらには、「SPIFFE(Secure Production Identity Framework For Everyone)」およびその実装となる「SPIRE」などのオープンソース技術と組み合わせることもできるという。

 「企業のセキュリティチームがセキュリティ侵害を発見するのに要する時間は平均して28日。Project Auroraはこれを“秒単位”に短縮する」

 Project Auroraは、2021年末までに対象範囲をGreenLake Lighthouse、GreenLake Cloud Services、Ezmeralなどに拡大するという。「プラットフォーム中立型でゼロトラストポリシーを定義して実行できる」。

「Project Aurora」の概念図。下位レイヤーでのセキュリティを担保することで

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