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ウイングアーク1st、企業間文書流通のデジタル化プラットフォームを発表

2021年06月22日 09時00分更新

文● 指田昌夫 編集●大谷イビサ

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 2021年6月16日、ウイングアーク1stは新たに開発した企業間文書データの流通プラットフォーム「invoiceAgent」について、発表記者会見を開催した。契約書、取引、伝票のすべてを電子化して企業間でデータ流通させることで、事務処理が大幅に軽減するという。

バズワード「DX」は顧客を惑わしている

 記者会見の冒頭に登壇したウイングアーク1st 執行役員 事業統括担当 兼 CTOの島澤甲氏が、市場動向と新プラットフォームの開発背景を説明した。

ウイングアーク1st 執行役員 事業統括担当 兼 CTOの島澤甲氏

 同社は企業向けに、社内文書管理や共有を行なう「帳票・文書管理ソリューション」と、BIダッシュボードなどデータ活用基盤を提供する「データエンパワーメントソリューション」という2つの事業を展開している。今回の新製品は前者の製品となる。

 同社の帳票・文書管理ソリューションは、2021年2月期の売上高が115.1億円、市場シェアが67.3%と好調に推移している。内訳は、帳票出力のデジタル化を行なう「SVF」製品が中心だが、近年急拡大しているのが、文書管理基盤の「SPA」製品である。「SPA製品は前期比160%と高い伸びを示しており、昨今のニューノーマルのビジネス環境の中で力強く伸びている」(島澤氏)

 島澤氏は、DXはバズワード的に語られることが多く、顧客を惑わしていると語る。

「当社はSVF、SPAの製品を通じて、企業内DXのニーズに対して具体的に応えてきた。今回発表した新製品『invoiceAgent』は、それを企業間の文書データ流通に拡大し、企業と企業の間でデータを円滑にやりとりするニーズに、具体的に応えるものだ。人を定型業務から解放し、重要な判断と意思決定に集中できる世界を実現したい」

帳票を介さずデータのみを流通させる基盤

 続いて、同社執行役員 Business Document 事業部長の満岡明弘氏が、invoiceAgentの概要を説明した。

 invoiceAgentは、企業間でやりとりされるあらゆる文書をデータ化し、クラウド上でセキュアにやりとりするプラットフォーム。「日本の商取引を変革するという、強い思いを持って開発した」(満岡氏)という。

 満岡氏は本製品について、「企業は、社内にデータを持っているにも関わらず、わざわざそれを紙に出力して、取引先に郵送している。また、それを受け取った側も、その紙をまた入力するということを繰り返しており、膨大な労力をかけている。これをなんとか、データのまま流通させる方法はないものかというのが原点だった」と語る。

ウイングアーク1stが描くこれからの企業間DX

 invoiceという言葉は、日本では請求書を指すことが多いが、本来の意味は、請求書、納品書、明細書など「送り状」全般を指す。そうした文書をデジタル化し、共通基盤に乗せることで、企業間を行き来する事務処理が大幅に軽減できると同社では考えている。invoiceAgentのネーミングには、そういう意味が込められている。

 企業がERPなどの業務システムのデータを基に、取引先への受発注などを行なう場合、同社のSVFなどを使って一旦帳票の形に変えて、それを郵送などで送ることが一般的だ。

 同社がすでに提供している「SVF TransPrint」というサービスでは、紙へプリントせずに直接データのまま外部企業へ送る機能を実現している。ただ、送った先の企業とのデータ連携が図られていなかったため、汎用的なPDFやエクセルなどのフォーマットを使わざるを得なかった。

 しかし、企業内の帳票出力で高いシェアを持つSVFであれば、送った先の企業もSVFを使っている可能性がある。そこで、SVFのユーザー企業同士の場合、帳票形式を介さなくてもデータの中身を直接送受信することができる仕組みとして開発したのが、invoiceAgentである。

「これまでは、発注書、納品書、受領書、請求書といった、商取引の中で企業間を行き来する帳票が発生するたび、その作成、保管が必要だった。invoiceAgentは、その作業を全て不要にすることで、企業間DXを実現する」(満岡氏)

 もし、取引先にSVFが導入されていない場合でも、CSVファイルを介してやりとりすることが可能だ。「単にデータを送るだけ、受け取るだけでなく、商取引の双方向性を実現し、双方のDXを進めていくことができる」(満岡氏)

2万8000社の既存ユーザーへ売り込む

 invoiceAgentは、契約書、取引、伝票のすべてを電子化して企業間でデータ流通させるプラットフォームを目指している。満岡氏は「契約書だけの電子化など、機能ごとのシステムは数多くあるが、一元管理したいと考える企業は非常に多いと思っており、そのニーズに応えていく」と説明する。

 ここまで説明してきたとおり、invoiceAgentは同社がすでに高いシェアを持っているSVFとの親和性が高い。そこで同社では、まず全国2万8000社を超えるSVFユーザーに対してinvoiceAgentを訴求し、導入を進めていきたいとしている。「SVFユーザーであれば、システムを改修することなく簡単に導入が可能なので、積極的にアプローチしていきたい」(満岡氏)

 また、SVF TransPrintでの実績によると、導入企業は平均して500~600社の取引先に文書を送っているという。同社のユーザー企業のさらに先にいる、これらの取引先企業への営業にも力を入れる。さらに、紙の文書の取引が多い食品や不動産などの業界に特化したソリューションも提案していく。

 同社ではこれらの施策によって、invoiceAgentを今後数年間で3万社へ導入することを目指している。

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