• Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

イベントレポート

注目の特集

アクセスランキング

週刊アスキー最新号

  • 週刊アスキー特別編集 週アス2024May

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

MITテクノロジーレビュー

3D格闘の金字塔は復活したのか?

話題の3D格闘ゲーム『Virtua Fighter esports』はシンプルで奥深いな読み合いによる緊張感が味わえる!

2021年06月10日 17時00分更新

文● KAMEX 編集●八尋/ASCII

新規参入者に向けた施策の成功と課題

 ただし、先述したような「楽しくステップアップしていける仕組み」は、ごく初期にしか機能しないのではないかというのが私の見解だ。本作を始めてみたプレイヤーの行動の流れを一つ仮定してみよう。

1.対戦でなんとなくボタンを押してみる「ガチャプレイ」
2.投げ、しゃがみパンチなどキャラクター問わず強いムーブを発見
3.意欲が湧き、ゲームメカニクスを説明するチュートリアルを受ける

 多少前後はあるが、だいたいこんなところではないだろうか。そして次のステップで必ず発生するのが「4.使用キャラの練習」のはずだ。いや、これすらも楽観的な予測に過ぎない。格闘ゲームに限らず対戦ゲームを経験したプレイヤーなら「まずは使用キャラの練習」というプレイヤーも多いはずだ。

自分に合わせたキャラクター選びこそ楽しいという人もいる

 本作は初心者のキャラクター練習をサポートする機能、コンテンツがやや脆弱だ。キャラ別のコマンド表に乗っている「基本コンボ」は3種類しかない。コンボの成立にチャレンジするような専用のモードもない。キャラクター別の立ち回りのヒントなどもない。

 もちろん、誰もがインターネットを利用する現代、『VF5FS』時代のブログを参照したり、『VFes』での参入者に向けた動画を視聴することで使用キャラのスキルを向上することは可能ではある。しかし、プレイヤーにゲーム外の情報収集を要求する構造は、現代の対戦ゲームとして不親切であり、スタンダードに達していないといわざるを得ない。

共通システムの紹介は充実しているが、キャラ別のチュートリアルコンテンツは皆無だ

 実戦、あるいはフリートレーニングで様々な行動を模索して身につけるというのは、アーケード主流の時代に熱狂的な勢いがあったからこそ成立した構造ではないだろうか。本作のこの「上達への導線の無さ」は配信当初からフリープレイとして無料配信をし、一気にプレイヤーを獲得しようという施策と噛み合っていないのではないだろうか。

 『VF5FS』のベテランプレイヤーの親切さに頼りがちなのでは? という風に私には映っているし、せっかく本作をきっかけに格闘ゲームを始めてくれた私の友人たちがプレイを継続してくれるか、実に不安である。

 「友人とやる格闘ゲームの楽しさ」。これは、ひたすら上を目指す大会やランクマッチとはまた別格の楽しさなのだ。それを失いたくない。格闘ゲームの経験者なら分かっていただけると思う。

私は情報収集を経てようやく特殊な技を出せるようになったが、その過程で脱落してしまうプレイヤーもいるかもしれない

当時のプレイヤーでなくても分かった「変わってよかったこと」

 『VF5FS』稼働時、アーケードで別のゲームをプレイしながら横目に見ていた感想では「地味なゲーム」という印象だった。そしてもう少し観察すると、それは鉄拳のような長いコンボの少なさのせいであること以上に「ヒットエフェクトがない」ことによるものだと感じたのだ。

 リアル志向のテイストだったのかもしれないが、出した攻撃がガードされたのかヒットしたのか分かりづらいのではないか。たまにヒットした箇所がピカッと光るのはカウンターヒットということだったらしい。こうして、表現とゲーム性の両面で、私は当時「食わず嫌い」をしてしまったのだ。今は後悔している。

本作で追加されたヒットエフェクト。以前のテイストを好むプレイヤーもいるかもしれないが、競技性という点では間違いなくプラスだろう

 『VFes』ではハッキリとヒットエフェクトが追加され、先述の問題はなくなった。「eスポーツ」的な競技性、そして観戦のしやすさを意識した仕様変更なのではないだろうか。それでも他タイトルほどの派手なヒットエフェクトではないのは、実在の格闘技を意識した本作のテイストを損ないたくないからではないかと思っている。

この記事をシェアしよう

ASCII.jpの最新情報を購読しよう