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「SAP導入は簡単ではない。だが……」担当者が語る「S/4 HANA」「BTP」などを採用した理由

DXと“SX”を推進、凸版印刷が「S/4 HANA」など3製品を採用

2021年06月07日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 凸版印刷は2021年6月2日、自社におけるデジタル変革(DX)推進の基盤として、「SAP S/4 HANA」などSAPのテクノロジーを採用すると発表した。同社の担当者は「SAP導入は簡単ではない。だが大きな壁を突破していきたい」と語る。

SAPジャパン主催の発表会に出席した、凸版印刷 執行役員 デジタルイノベーション本部長 兼 DXデザイン事業部 副事業部長の伊藤隆司氏

 凸版印刷は1900年に創業し、今年で121年目を迎えた大手印刷会社だ。2000年前後にはデジタルの時代に即した“紙からの脱却”も考え、食品や医薬品の包材である透明バリアフィルム(GLフィルム)やICタグ製品の開発と生産、電子チラシポータル「Shufoo!」や電子書籍ストア「BookLive!」などのビジネス展開も行っている。現在は情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスと大きく3つの事業を持つ。

凸版印刷の事業概要。旧来の「印刷」だけにとどまらない幅広い事業領域を持つ

 こうしたデジタルの時代を経て、現在の同社は「DX・SXの時代」に向けた変革を目指している。DXはデジタル変革、そしてSXは“サステナブルトランスフォーメーション”の略で、持続可能な社会を実現するビジネスが大きなテーマだ。

 凸版印刷 執行役員 デジタルイノベーション本部長 兼 DXデザイン事業部 副事業部長の伊藤隆司氏は、「デジタルシフトが加速する一方で、世界的な環境意識やSDGs意識も高まっている」と、DX・SXを目標に掲げる理由を説明する。ここには新型コロナウイルス感染拡大や、グローバル市場拡大の影響もある。

 DX・SXを推進するにあたって、凸版印刷では今年5月に中期経営計画を発表した。これは2021年度からの3年間(2021年4月~2023年3月)をターゲットとしたもので、その重点施策の1つとして「システム基盤のモダナイゼーション」を掲げている。具体的には、グループ会社の経営情報をクラウド上で一元管理することで「データ主導の経営」を実現していくことを目標としており、5年間で合計200億円規模のシステム投資を計画しているという。

 その一環として、凸版印刷ではSAP製品の採用を決定している。具体的にはERPの「SAP S/4 HANA」、マネージドクラウドサービスの「SAP HANA Enterprise Cloud」、そして開発プラットフォームの「SAP Business Technology Platform(BTP)」だ。これらの導入で経営効果の最大化を狙い、KPIの整備、全体最適を前提とした制度改革、業務の可視化を進める。

 伊藤氏はSAPに対する期待を、「(1)DXの加速」「(2)SXの推進」「(3)国内外のグループ会社への展開」という3点から説明した。

 (1)は、同社が「Erhoeht-X(エルヘートクロス)」と名付けて進めるDX事業全般をサポートする役割だ。伊藤氏は、「DXを軸とした自社内の競争力をさらに高めるために、システム基盤のモダン化が必須。これを実現するシステム基盤がSAPになる」と語る。S/4 HANAで標準化を進め、HANA Enterprise Cloudで堅牢かつ安定した基盤を構築し、BTPにより他のシステムとの親和性、連携、拡張性を得ることで、事業変化に柔軟に対応できる環境を構築するという。

凸版印刷のSAPに対する期待(1)。DXを加速させるプラットフォームとしてSAPの3製品を採用した

 (2)について、伊藤氏は「凸版では以前から自然環境に優しい製品開発を進めてきた」と語る。最近でも「TOPPAN Business Action for SDGs」を策定しており、世界的なESG投資指標の構成銘柄にも選定されている。一方のSAPでも、2009年から持続性に取り組んでおり、2020年には「Climate 21」として製品に持続性の指標を組み込むプログラムを展開している。「SAPと凸版は同じ価値観を持つパートナー」だと伊藤氏は述べた。

凸版印刷のSAPに対する期待(2)。“サステナブルトランスフォーメーション(SX)”を進めるうえで価値観を共有できるパートナー

 (3)は、グローバル展開を進める凸版印刷にとって重要な要素となる。SAPの3製品を利用することで、世界中で利用できるクラウドプラットフォームを構築できるため、「国内と国外の拠点にあるグループ全体のデータをSAP基盤を活用しながらつなげたい」と語る。これにより、同社が掲げるデータ主導経営の実現を支援できるとする。

凸版印刷のSAPに対する期待(3)。グローバル展開するグループ会社全体のデータを「つなげる」

 こうした期待を語りながらも、伊藤氏は「SAP導入は簡単に、円滑に進むとは考えていない」と語る。「だが、大きなハードル、大きな壁を突破していくという強い意気込みでSAPを採用した」。こう述べて、DX、そしてSXに向けた決意の強さを見せた。

 同席したSAP ソリューション事業推進室 シニアソリューションプリンシパルの高橋正樹氏は、SAP BTPについて「先進的な技術要素を組み込みながら、ローコード、ノーコードで拡張や融合を可能とするサービス群」だと説明した。SAPが先に発表したサービスパッケージ「RISE with SAP」のユーザーは、無償バウチャーを使って60以上のBTPサービスを利用できるという。

 なお凸版印刷は、SAP導入を検討時期にRISE with SAPがまだ発表されていなかったため、現時点ではRISE with SAPは使っていない。

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