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TechEd 2020レポート/「SAP Business Technology Platform」を中核に統合、自動化などの強化を発表

「SAPを開発者フレンドリーに」、CTOがカンファレンスで語る

2021年01月06日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 SAPは2020年12月17日、開発者向けカンファレンス「SAP TechEd 2020」をオンラインで開催した。SAPのエグゼクティブボードメンバーでCTOを務めるユルゲン・ミュラー氏は基調講演で、SAPが注力する「SAP Business Technology Platform」を中心にSAPの技術戦略について話した。

SAP CTOのユルゲン・ミュラー(Juergen Mueller)氏

 「SAP HANA」の登場から10年、SAP HANAを購入した顧客数は5万3000社に達しており、HANAは「S/4 HANA」「SAP Industry Cloud」などのSAP製品の土台となった。さらに、2019年にはクラウドネイティブで利用できる「SAP HANA Cloud」も発表した。SAPが今後注力するのは「開発者」だ。しかし「まだ開発者フレンドリーな会社とは言い切れない」――ミュラー氏はそう述べる。

 SAPは「インテリジェント・エンタープライズ」ビジョンの下、技術面では「Intelligent Enterprise Program」として「過去最大のエンジニアリングプログラム」(ミュラー氏)を進めている。これはシームレスなユーザー体験、連携されたドメインモデル、組み込み型&クロスプロダクトでの分析、単一のワークフローインボックス、協調されたライフサイクル管理、エンドツーエンドのプロセスブループリント、と7つの特徴を備えるもので、たとえば2019年は15%しか完成していなかったエンドツーエンドのプロセスは、「2020年中には80~90%が完了する」と見込んでいる。

 今年のTechEdでフォーカスされた「SAP Business Technology Platform」は、SAPの技術戦略の中核をなすフレームワークだ。機能としては「データベースとデータベースマネジメント」「アナリティクス」「アプリケーション開発と統合」「インテリジェントテクノロジー」の4分野を備える。これにより「開発者をエンパワーし、クラウドへの移行などの企業の目標を開発者が加速できる」(ミュラー氏)ことを目指すという。

SAP Business Technology Platform

 開発者がSAP環境においてよく行う作業シナリオとして、ミュラー氏は「SAP環境の拡張構築」「さまざまなデータソースからの価値創出」「SAPと非SAPシステムのインテグレーション」の3つを取り上げ、デモを交えながら新機能を発表した。

 1つ目の「SAP環境の拡張構築」では、TechEdに合わせて「SAP Cloud Platform Extension Suite」の強化が発表されている。

 基調講演でミュラー氏が強調したのが、SAPの開発言語であるABAP開発者向けの強化だ。「Project Steampunk」としてSAP Cloud PlatformでのABAPでマルチテナント機能を導入、ABAPで開発したアドオンのクラウド移行を支援するものとなる。特にパートナー企業にとって、「単一のSteampunkインスタンスにある共有のABAPコードベースで複数のテナントをホスティングできる」と説明、これによりABAP実装のコストを削減できるという。

 「ABAPは現在もインテリジェント・エンタープライズ(ビジョン)の中心にあり、Business Technology Platformでもサポートしている。SAPは開発者のキャリアや投資を保護する」とミュラー氏は述べ、ABAP開発者にアピールした。この機能は2021年に提供を開始する。

 また、クラウドネイティブ開発者が「SAP Enterprise Messaging」を使って、S/4 HANAやSAP SuccessFactors、ECC(ERP Central Component)向けに拡張を構築できる機能も紹介した。

 2つ目の「さまざまなデータソースからの価値創出」では、SAP HANA Cloudを活用したデータインテグレーション機能を発表した。これは、SAP HANA CloudとオンプレミスのHANAシステム、S/4 HANAシステム、外部データソースを相互に接続できるものだ。デモでは合併した2社が「AWS Athena Connector」を使って、「AWS S3」ストレージにあるデータとS/4 HANAをSAP HANA Cloudインスタンスに接続し、お互いのデータを遠隔から扱うことができるようにし、最終的に全てのデータベーステーブルを結合する様子を見せた。

 またビジネスユーザー向けにも、「SAP Analytics Cloud」インスタンスとSAP HANA Cloudインスタンスを接続し、簡単な設定作業によりSAP HANA CloudからSAP Analytics Cloudのデータを直接参照するなどのデモを行った。

 「SAP HANA Data Lake」ではペタバイト級のデータ処理が可能となり、2021年第一四半期にはS3バケットを直接クエリできる機能も利用可能になるという。

 3つ目の「SAPと非SAPシステムのインテグレーション」では、「SAP Cloud Platform Integration Suite」の機能拡張、ソリューション間のオブジェクト同期機能となる「SAP Cloud Platform Master Data Integration」サービス、ビジネスオブジェクト向けの共通データモデル「SAP One Domain Model」を紹介した。

 デモとして、新入社員の入社にあたってSAP SuccessFactors、電子メール、Slack、外部の給与管理サービスを統合し、電子メールとSlackで最初の勤務日にウェルカムメッセージを送るなどのことを行った。イベントへのサブスクライブをSAP Enterprise Messagingで行い、SAP Cloud Platform Integrationなどを使ってSlack通知や外部の給与管理統合のビジネスフローを作成、外部システムとはSAP Open Connectorsで連携する、といったものだ。

SAP Cloud Platform を通じてSAP、非SAPのシステムを統合するデモを披露

API Business Hubを通じて簡単にシステムのインテグレーションができる

 「SAP One Domain Model」は、“First Objects”としてリクルーティングからリアイアまでのビジネスプロセスをサポートする。今後、さらに他のエンドツーエンドのプロセスをサポートしていく予定だ。

 「SAPとSAPの統合はさらに容易になり、SAPと非SAPの統合はもっと簡単になる」とミュラー氏、Gartnerによりエンタープライズ ・インテグレーションプラットフォーム・アズ・ア・サービスではリーダーに分類されていることも紹介した。

 これらを利用できるのが「SAP API Business Hub」だ。ユーザーインターフェイスを刷新して使い勝手を改善しており、インテグレーション可能なシステムを簡単に発見し、数クリックで統合してアクティベートできるという。

 SAPはまた、SAP Cloud Platformの無償トライアルを90日間から12カ月間に延長すること、2021年には“Free Tier”(無償ティア)を導入することなども発表している。これらは、開発者に訴求する取り組みの一環となる。ミュラー氏によると、SAP CommunityのWebサイトは毎月のユニークビジター数が280万人という。

 基調講演では触れていないが、SAP Cloud Platform Extension Suiteではローコード/ノーコードツールとして、「SAP Cloud Platform Workflow Management」「SAP Raum」「SAP Intelligent Robotic Process Automation(RPA) 2.0」も発表している。

 プレス向けセッションでミュラー氏は、開発者向けの取り組みが「課題」だと認め、「SAPのアプリケーションと技術を受け入れた顧客にはとても満足してもらっているが、一般的に“開発者向けの企業”とは思われていない。この部分をもっと伝えていきたい」と語った。

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