このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

Apple M1搭載で大幅性能アップの「iPad Pro」&カラフル7色「iMac」特集 第31回

M1搭載iMacの「電源コネクター」まったく新しい機構の秘密

2021年05月25日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

プラグ側の中心の円柱の表面に掘られた溝と、本体側の内側のスリーブの内壁の突起によって、接続角度を制限する

180度単位で、コネクターの接続する向きを合わせる機構

 これで、コネクターとしての要素はすべて揃ったようにも思えるが、まだ重要な機構が足りない。それはコネクターを構成する本体に対して、プラグの回転方向をピッタリと合わせるための機構だ。DC電源だけの円筒形コネクターなら、本体に対してプラグをどんな角度で接続しても問題ない。ところが、Ethernetポート用のコネクターを加えたことで、接続可能な角度には制限ができる。その接点は30度ずつずれているから、回転の最小単位は30度ごとということになるが、残念ながら電気的には、そこまでフレキシブルな仕組みにはなっていない。

 この制限の角度は、実は180度だ。つまり、1周360度のうち、2ヵ所しか接続可能な位置がないということになる。考えてみれば、これはUSB-CやLightning コネクターのように、裏表なく接続できるコネクターと同じことだ。というわけで、12個あるEthernetポート用の接点は、6個ずつが1組となっている。言い方を変えれば、表に6個、裏に6個の接点が並んでいるのと同じことだ。

 コネクターの接続角度を180度ごとに制限するために、本体側の内側のスリーブの内壁には、180度離れて2本の突起がある。また、プラグ側の内側の円柱の外側には、砂時計の断面のような形の溝が彫ってある。本体側の突起が、その溝に入り、コネクターの接合が始まると、深く刺さるほど、突起が溝のカーブに沿って所定の角度に決まっていく。

 言葉で説明しても分かりにくいが、図に表すのもなかなか難しい。ここでは、DCプラグ側のスロープのある溝に、本体側の突起が回転しながら位置決めされていくということを、なんとなく想像していただければいいだろう。

本体側の内側のスリーブの内壁には、内側に向かって180度ずれた位置に突起がある

 こうした予備知識があれば、実際のiMacのコネクターを見たときに、細かな形状の意味が分かってくる。本体側コネクター写真を見ても、回転角度を決める突起が、はっきりと見える。

本体側のコネクターの内部には、180度毎に回転方向合わせる突起が見える

 また、上に示したプラグ側の写真を見ても、中央の円柱の周囲にカーブした溝が彫られていることに気付くだろう。おそらく、この回転方向の位置決めには、マグネットによる磁力線の配置も貢献しているものと思われる。目で見て角度を確認しなくても、プラグを本体側のコネクターに近付けるだけで、ほとんど自動的に正しい位置に接合されるようになっているのだ。

 なおEthernetポートとして使われている標準的なRJ-45コネクターのピン数は8となっている。このDC電源コネクターのEthernetポート用の電極数は12だが、上で述べたようにこれは表に6、裏に6と同じことなので、逆向きにつければ、接続が入れ替わる。そのため、12の電極をすべて別の用途に同時に使うことは難しいと思われる。実際には、DC電源コネクターの電極と、電源アダプターのRJ-45用ソケットのピンが1対1に電気的に接続されているわけではない。おそらく、コネクターの接続の向きによって、自動的に接続の割り振りを決められるような仕組みが内蔵されているものと考えられる。それについては、何も情報が公開されていないため、今のところ不明となっている。

 

筆者紹介――柴田文彦
 自称エンジニアリングライター。大学時代にApple IIに感化され、パソコンに目覚める。在学中から月刊ASCII誌などに自作プログラムの解説記事を書き始める。就職後は、カラーレーザープリンターなどの研究、技術開発に従事。退社後は、Macを中心としたパソコンの技術解説記事や書籍を執筆するライターとして活動。近著に『6502とApple II システムROMの秘密』(ラトルズ)などがある。時折、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士として、コンピューターや電子機器関連品の鑑定、解説を担当している。

 

■関連サイト

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

ASCII.jp RSS2.0 配信中