IoTフードロッカーなど、5G活用の新サービスが横浜みなとみらいに集結
「MINATOMIRAI Activation Program Startup Pitch デモデイ」レポート
ドコモは2021年3月5日、パシフィコ横浜にて「Minatomirai 5G Conference -Innovation city YOKOHAMA-」を開催。5G時代における街づくりや地域の活性に関するセミナーやニューノーマルに対応した働き方のデモンストレーションなどが、会場およびオンラインにて披露された。
当日は特別企画として「MINATOMIRAI Activation Program Startup Pitch デモデイ」と題し、6社のスタートアップ企業が登壇。それぞれの事業内容や取り組みについてプレゼンテーションを行なった。
採択されたスタートアップ6社がデモ
「MINATO MIRAI 21 Activation Program」はMM地区ビジネスエコシステム形成プログラム実行委員会が主催するプログラムだ。横浜みなとみらい21地区を活性化させ、街を活用した実証実験などを通じてイノベーションを創出する。「with/postコロナの社会に必要な技術・ビジネス、5Gを活用した技術・ビジネス」や「水辺空間を活用し、エリアの賑わいを創出、活性化させる取り組み」といった募集テーマで、2020年8月に募集を開始。審査やキックオフイベントを経て、応募59社のなかから5社の取り組みを採択し、今回のデモデイへとつながっている。
MM21地区ビジネスエコシステム形成プログラム 実行委員長で、横浜みなとみらい21 専務理事 藤田格氏は「みなとみらい21地区は2019年度で事業所の数が1800社、就業者が11万人、年間の来街者が8300万人を超える首都圏を代表する街として成長してきた」とし、5社について「(みなとみらい21地区と)この街の名前が示すとおり、ここに集まってまた住んでいる人たちが未来を展望してお互いに影響し合いながら、新しい価値の創造を目指して活動することで、この街のさらなる発展につながる取り組みを採択した」と話している。
ピッチイベントに登壇したのは、採択された5社のうち4社。加えて今回のイベントにあわせて、5Gとの親和性のある事業を展開する2社をピックアップ。合計下記6社のプレゼンテーションが行なわれた。
・ミノージャパン
・リアルワールドゲームス
・Root
・ボトルト
・365ブンノイチ
・プラプラ
ランチをロッカーでピックアップ/ミノージャパン
ミノージャパンは、IoTフードロッカーを使った、食事のデリバリーシステムをプレゼン。すでに現在サービスはスタートしており、東京千代田区にある日比谷国際ビルにIoTフードロッカー「Minnow Pod」を設置。11時までにスマートフォンから提携するレストランの提供するランチメニューからオーダーすると、専属の配送者が各レストランへ出向いてまとめてピックアップ。そのままMinnow Podへと配送される。あとは注文したユーザーがMinnow Podの前でスマートフォンを操作すれば、ロッカーの扉が開いてランチを入手できるというシステムだ。
ミノージャパン代表取締役池田保氏は、「この超効率的デリバリーによって、飲食店からの配達手数料とユーザーからの配達手数料を競合他社の3分の1から4分の1、さらには5分の1と下げることができる」と、このビジネスモデルの利点をアピールしていた。
ヘルスツーリズムの実現を目指す/リアルワールドゲームス
リアルワールドゲームスは、観光と健康そしてエンタメを組み合わせた「ヘルスツーリズム」を実現する、位置情報ゲームを提供している。開発のきっかけは、同社の代表取締役で今回のピッチに登壇している清古貴史氏が「会社の往復が5分ぐらいで非常に運動不足の状態で生活していた」ため。実際データでも過去20年で1日の平均歩数は1300歩も減少しており、昨年はさらにコロナ禍で減少が見込まれているとのこと。
位置情報ゲームを制作する際に、ポイントとなるが高コストとなる地図データだ。同社では、自社3D地図エンジンを開発したことで、大幅なコストダウンで提供できるとのこと。これにより「地図基盤と位置情報データベース、そしてブロックチェーンを利用した「アルクポイント」を発行し、この3層構造で提供可能としている。防災や観光、健康とそれぞれ別の予算で作られていたが、リアルワールドゲームスの地図エンジンを使うと、パッケージで提供できる」と清古は説明していた。
農業のスマート体験サービスを提供/Root
Rootは、日々の畑の楽しさを誰もが気軽に味わえるコンテンツに変換する「スマート体験農園システム」のプラットホームを提供しているスタートアップ。スマートフォンのアプリから、実際の農業と連携して映像体験やライブ配信、自動収穫予測シミュレーターなどが利用できる。
さらに、みなとみらい21地区でのチャレンジとして「マイホップ栽培・マイビール醸造」を楽しむプログラムをスタート。神奈川大学みなとみらいと提携し、ビルキャンパスの屋上にテラスをホップ栽培の拠点として、最大10株のホップ栽培から、約200リットルの「神大みなとみらいビール(仮)」を醸造する計画を発表。登壇した同社代表取締役の岸圭介氏は「サポート付きのマイホップ栽培から、収穫醸造体験乾杯イベントへの参加。そして最後はマイビールが届く」と話しており、今年度は神奈川県足柄の同社の畑とあわせて2ヵ所で、ひと株3万円から参加者を募集している。
ドリンクシェアでエコなサービス/ボトルト
ボトルトは、飲食店などのドリンクをマイボトルに入れて、持ち運べるサービスを提供している。飲食店側は、スマートフォンアプリから飲食店を選んで支払いまで完結でき、容量も設定可能。代表取締役の飯田百合子氏は「駅ナカのコーヒーショップ、そば屋の昆布茶、クラフトビールの店。そしてゴクゴク飲みたいレモン水のようなドリンクを用意している店。さらにはカレーやスープといったものまで、用量を設定してもらうことで、自分のボトルにピッタリの自分のボトルを起点に商品を買いに行くことができる」とメリットを説明。
アプリでは「環境スコア」が設定されており、ボトルトのサービスを使うと、ペットボトル削減数や二酸化単相削減量をAIで推測しポイント化。そのポイントはプレゼントと交換可能となっており、ユーザー側のメリットもアピールしていた。
5GやIoTで街をあそびゴコロのあるデザインに/365ブンノイチ
365ブンノイチは、人間が持つ最善の資源でありながら、有効活用されていないユーモアを使って、心にゆとりのある社会を目指すことをミッションとしているプロボノチーム。街自体をエンタメ空間に変身させることに取り組んでおり、5GやIoTテクノロジー、センサーを活用することで、歩行者の動きに合わせてデジタルアートを展開したり、飛び出し多発地帯ではアニメーションを地面に投影して愛嬌あるキャラクターが歩行者をエスコートするといった、リッチなクリエイティブの実現に取り組んでいる。
登壇した365ブンノイチ プロジェクトリーダー兼理事の田村勇気氏は「クリエイティブでまったく違う場所に生まれ変わることができる。街の屋台エリアは一躍撮影スポットとなり、地域を代表する名所に。通行人が投稿したTwitter動画は580万回以上再生された」と、これまでの取り組みついてアピール。さらに「100年に1度と言われる意匠法の改正に加えて、道路法や道交法改正により、今や地面や空間の利活用が可能となっている。今後このような試みは確実に広がっていき、新しい景観や機能を提供できる」と話していた。
街をテーマパークに/プラプラ
プラプラは、街の底力アップとしての第一歩としてタウンツーリズムの実現を目指しているスタートアップ。街の動画マップの撮影や編集、制作、運用といったことから、位置情報や動画サービスの構築、街の個性を生かしたコンテンツの制作を請け負っている。
ピッチで登壇した同社代表取締役の今井隆造氏は、現在提供しているアプリ「動画マップ プラプラ」を例として紹介。「駅から降りたら今日の街の催し物がわかる。目の前の入りにくい扉を開けなくても中の雰囲気がわかる。街中がステージのようになっていて、辺境のようなところで路上ライブをしていても気がついてもらえる」と話しており、参加型の街、街をテーマパークにというアイディアを自治体や企業、個人のパートナーに提案していた。
来年度は5Gという切り口を強めて募集
6社のプレゼンテーションのあと、横浜みなとみらい21 企画調整課担当課長 大橋直之氏が登壇。来年度の「MINATOMIRAI Activation Program Startup Pitch」について「5Gのプロジェクトという形でエリアマネジメントとして、ワンストップ窓口を開設し、5Gという切り口を意識した街作りを進めていきたい。来年度の募集もそういう方向性になると思う」と話していた。