子どもと赤ちゃんと暮らしています盛田諒ですこんにちは。先日子どもが3歳児から4歳児になりました。「となりのトトロ」のメイと同じくらい。このごろメイと同じように主張がハッキリしてきて、こっちが不機嫌にしていたら「怒ってたら平和が守れないでしょ!」「怒ってる人の平和は悲しい平和だよ!」とたしなめられています。ちゃんと平和を守らなければ……。
●フードコートで子が吐いた
3歳児として最後の週末、赤ちゃんの初節句を兼ねた家族写真を撮ろうかということで、久々にショッピングモールまでクルマを出して写真館へ行きました。しかし3歳児は「写真いやだ」「こんなところ二度と行かない」と猛烈に抵抗(「二度と」は3歳児の流行語)。プロの手によってギリギリ笑顔の写真を撮れましたが、撮影後なんとも浮かない表情に。お昼の時間だったのでメシでも食って元気を出そうと、会計をすませる妻と一旦離れてフードコートへ。「すまんなあ」という気持ちをこめてゼリーつきお子さまラーメンセットを注文。ラーメンをすする子の隣に座り、天ぷらうどんに箸をつけたそのとき、子どもが「ゲホー!」と盛大に吐きました。
「あら出ちゃったの!」
世にも間抜けな感想とともにあわててリュックからタオルをひっぱると、テーブルに広がるゲホーと、子どもと私の服をぬぐいます。「びっくりしたね!」と言いながらデロデロになったタオルをビニール袋にぎゅうぎゅう押しこむと、店員さんにペコペコ謝りながら事情を話し、ゲロまみれの子を抱っこしてトイレへダッシュ。子どもは私のシャツにも「ゲホー!」。シャツの中はドロドロびしゃびしゃ。「うおお大丈夫だよ大丈夫〜!」と言いながら走っていく私。頭の中には誰でもない誰かのコメントが泡のように浮かんでは消えてをくりかえしました。
(こんなときに吐かせるなんて)
(何かあったらどう責任とるつもりだ)
(親なのに子どもの体調に気づかなかったのか)
店員さんすいません!お客さんすいません!しかし子どもに罪はありません!「大丈夫だよ大丈夫!」と言い聞かせていたのは子どもなのか自分自身なのか、ともかくトイレへ駆け込みました。ぐしょぐしょになったシャツと肌着を脱ぎ、子どもにうがいをさせているところに妻が合流。一人じゃなくて本当によかったと安堵しながらビニール袋に汚れ物をあれこれ詰め込み、素肌にダウンという珍妙きわまりないコーデでトイレを出ていくことになりました。
●大丈夫だよ、大丈夫
地獄のような一日が明けて、子どもはあっさり回復。発熱もなく、新型コロナなどではなく胃腸炎でした。ホッとする反面、もしあれが感染症だったら、自分がとった行動は間違っていたんじゃないかという不安もよぎりました。
子どもが商業施設で吐いたときはどうすればいいのか。新型コロナウイルスに係る厚生労働省相談に電話で聞いたところ、トイレでうがいをさせ、施設のインフォメーション等に子どもが吐いた旨を伝え、病院を受診してください、掃除は施設のスタッフにおまかせくださいということでした。
拍子抜けするほど普通の話でしたが、そういう普通の話が頭に入っていないとどんどんよけいなことを考えるのが不安なときというもの。不要な外出を避ける、子どもの体調に気をつけるということを前提としても、子どもは「まさか」というタイミングで吐くことがあるものです。そんなとき、人知れず自分を責めてしまっている人は私以外にもいるんじゃないでしょうか。
特に夫婦二人ではなく親一人と子どもだけで出かけたとき、同じことが起きたら「周りに迷惑をかけた」という思いは一層強まってしまいそうです。
地獄のような思いをした今となっては、できるだけたくさんの「もしも」を頭の中に入れておきたい、そしてもし同じ立場になっている人を外で見かけたら「大丈夫だよ」という意思をどうにか伝えられたらと思います。子どもと一緒に出かけたときに「大丈夫です」というまなざしを向けられるだけで気がラクになったという経験は本当に数え切れないほどあるものなので。人と距離をとることが求められる中、できることは限られても、できる形で平和を守らなければと思った週末でした。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。4歳児と0歳児の保護者です。Facebookでおたより募集中。
人気の記事:
「谷川俊太郎さん オタクな素顔」「爆売れ高級トースターで“アップルの呪縛”解けた」「常識破りの成功 映画館に革命を」「小さな胸、折れない心 feastハヤカワ五味」
アスキーキッズメルマガ 毎週土曜に配信中
アスキーキッズは毎週土曜、一週間ぶんの記事をまとめて読めるメールマガジンを配信中。人気連載「ほぼほぼ育児」をはじめ、ニュース、イベント、プログラミング教育入門、みんなの子育て体験談など、子育ての参考になる情報満載です。ご登録はこちらから。
この連載の記事
-
第68回
アスキーキッズ
ラン活ラン活ランランラン -
第67回
アスキーキッズ
男性育休は素晴らしいですが、問題はその後です -
第66回
アスキーキッズ
こんなときだからこそ平凡な育児日記を書いておきたい -
第65回
アスキーキッズ
「いい夫」って言葉、圧がすごくないですか -
第64回
アスキーキッズ
元気に生きていけたら、まぁいいか。emiさんの子育て -
第63回
アスキーキッズ
0歳児の魂百まで -
第62回
アスキーキッズ
仕事と育児の両立でグチャグチャになったときこそ「自分にとって大切なこと」にしがみつくことが救いになる -
第60回
アスキーキッズ
チキンソテーだよ子育ては -
第59回
アスキーキッズ
2人目育児、1人目が救いになった -
第58回
アスキーキッズ
実録! コロナ出産 緊迫の1ヵ月 そのとき夫は - この連載の一覧へ