最新ユーザー事例探求 第55回
予算や決算のデータと事業内容の情報を一元化、市民や民間事業者にもわかりやすく共有する取り組み
国も注目する柏崎市「デジタル予算書」、行政を中から変えるDXの先行事例
2021年03月02日 08時00分更新
新潟県柏崎市は2021年2月12日、市の予算書をデジタル化した「デジタル予算書」をWebサイトで一般公開開始した。これは柏崎市の2021年度予算とそれを執行する事業内容を収録したデータベースであり、誰でも無償でアクセス、閲覧できる。さらに各事業のスタート後は、その実施状況や実施後の評価も随時アップデートし、広く市民に公開していくという。
国内初というこのデジタル予算書の取り組みを、柏崎市はなぜ行ったのか。今回は柏崎市の開発担当者と、開発を支援したウイングアーク1stに取材した。
「厚さ3cm、1kg」の紙予算書をデジタル化、市民や民間事業者とも情報共有を
柏崎市では、市議出身で4年前に市長に就任した櫻井雅浩氏のリーダーシップの下、「市政のデジタル化」を強力に推進してきた。たとえば市議会では議員全員にiPadを配布し、配付資料のペーパーレス化を図っているという。
そうした取り組みの一環として、市長が市議時代から課題を感じていた予算書についてもデジタル化を進めることにした。およそ3年前から検討を開始し、システム開発を進めて2021年2月、2021年度予算の全データをWebで一般公開するに至った。
「行政の予算書は、翌年の事業の内容がすべて詰まった重要な資料です。ですが、その開示の仕方や扱いやすさには課題がありました」。柏崎市総合企画部 企画政策課 課長代理の若月啓満氏は、従来の予算書が抱えていた課題を次のように説明する。
「従来の予算書は厚さ3cm、重さ1kgを超える膨大な紙の資料で、これは議員にしか配られません。市民に対してはWebを通じてPDFファイルで公開していましたが、これには実施する事業名と金額程度しか書かれていないため、検索もできず、どんなことをする事業なのかもわからない状態でした。市としての重点的な事業についても、わずか1~2行の説明が書かれてあるだけでした」(若月氏)
こうした状況を改善し、市民と市職員、議員が同じ情報を共有できる基盤としてデジタル予算書が企画された。これは行政への市民参加を促すためにも重要なことだと、若月氏は語る。
「“街づくり”は行政だけで行うものではないと考えています。市民と行政、民間事業者という柏崎市の全関係者が、いっしょになって取り組まなければいけない。税金が原資である市役所で、そのお金の使い方、目指す方向性の情報は、詳細を含めてしっかり開示し、共有しなければいけないと考えました」(若月氏)
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