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「SAP Fieldglass」を通じてデジタル人財育成と就労マッチング、持続可能な経済的自立を支援

SAPとグラミン日本、生活困窮者と企業のジョブマッチングで提携

2021年02月05日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 SAPジャパンと一般社団法人 グラミン日本は2021年2月4日、生活困窮者と企業のジョブマッチングを行う「ソーシャル・リクルーティング・プラットフォーム」で連携協定を締結したことを発表した。SAPの外部人財管理ソリューション「SAP Fieldglass」を基盤として活用し、デジタルスキル人財の育成や就労マッチングを行うもので、SAPの社内プログラムから生まれたアイディアとなる。

 両者が共同で進める「ソーシャル・リクルーティング・プラットフォーム」は、シングルマザーなどの生活困窮者の経済的な自立支援を目的とする。SAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏は、「企業や団体が提供する雇用機会と生活困窮者の就労ニーズをスピーディーにマッチングさせる」と説明した。

グラミン日本とSAPジャパンが発表した「ソーシャル・リクルーティング・プラットフォーム」の概要

(左から)SAPジャパン インテリジェント事業本部 バリューアドバイザー ディレクターの太田智氏、SAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏、グラミン日本 理事長CEOの百野公裕氏

デジタル人財育成と就労マッチングで「人手不足と貧困、2つの課題を解決」

 グラミン銀行は、バングラデシュのムハマド・ユヌス博士が貧困撲滅を目指して設立した金融(マイクロファイナンス)機関。通常の金融機関が融資の対象としない人やグループに対し、起業や就労のための少額の資金を低利/無担保で融資する。この活動を通じて貧困層の経済的自立を支援し、2006年にはノーベル平和賞を受賞している。

 グラミン日本は2019年秋、日本における貧困問題の解決を目的として設立され、「利益の最大化ではなく、社会課題の解決こそが目的」など、ユヌス博士が掲げる「ソーシャルビジネス7原則」に基づいて運営されている。

グラミン銀行の概要と、ユヌス博士の「ソーシャルビジネス7原則」

 グラミン日本 理事長CEOの百野公裕氏は、支援対象である生活困窮者の現状として、「ひとり親、特に母子世帯は2人に1人以上(51.4%)が相対的貧困の状態。これは子供の貧困問題に連鎖している」と説明する。このひとり親の貧困率は、OECD(経済協力開発機構)の中でも日本が突出している。そうした背景があるうえに、昨年からのコロナ禍が経済の“コロナショック”を引き起こし、「就職活動もなかなかできない状況。かなりの深刻化が予想されている」(百野氏)。

 ここで目を付けたのが「デジタル人財」に対するニーズだ。「時間の制約のない働き方ができるうえ、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めており、デジタル人財が必須となっている。人手不足と貧困、2つの課題を解決できる」と意気込む。

相対的貧困率の高い日本の母子家庭(シングルマザー)をエンパワーメントしていく新たな方向性として、DX推進に不可欠な「デジタル人財」に着目した

 具体的には、グラミン日本が就労・起業トレーニングやデジタルスキルトレーニングを提供してスキル習得を支援し、さらに企業への就労マッチングを行う。このマッチングを行うデジタルプラットフォームとして、SAPジャパンが「SAP Fieldglass」を構築し、グラミン日本が運用する。

 これに加えて、受入先企業のダイバーシティ&インクルージョンの促進に向けて、グラミン日本からの働きかけ(アドボカシー)も積極的に行う。生活困窮者がスキルアップし、企業がその人たちを雇用することは、企業側のダイバーシティ、インクルージョン、SDGs、ESGなどの取り組みにもつながると考えており、そうしたテーマでのワークショップやイベントも開催する計画だという。

取り組みの全体像。就労・企業やデジタルスキルのトレーニングを提供したうえで、企業との就労マッチングを行う

 百野氏は、就労マッチングがうまくいくためには、まずは企業側の積極的な参加が重要だと指摘する。現時点の企業サポーターは28社で、これは今後も増やしていく方針だ。また支援団体としてシングルマザー支援協会、自閉症の就労を支援するアーネストキャリアなどが参加を検討していると説明した。

グラミン日本のアドバイザリーボード、会員企業各社

SAPの社内起業プログラムを活用、「誰もが平等に成長のチャンスを持ち続けることができる社会を」

 今回の「ソーシャル・リクルーティング・プラットフォーム」というアイディアの考案者は、SAPジャパン インテリジェント事業本部 バリューアドバイザー ディレクターの太田智氏だ。グラミン日本でのボランティア活動で生活困窮者をどう支援するかを考えるワークショップに参加し、SAP Fieldglassを活用して課題解決できると気づき、社内に提案したという。

 太田氏が利用したのは、SAPがグローバルで展開する社内起業プログラム「One Billion Lives(1BL)」。2014年にAPJ(アジア太平洋・日本)地域でスタートし、その後グローバルに拡大したプログラムで、SAPのグローバルビジョンである「世界をより良くし、人々の生活を向上させる」ことにつながるアイディアに投資する。大田氏の提案は、135のアイディアの中から3回の先行を経て最終選抜された。ちなみに日本発のアイディアが最終選考に残ったのは、これが初めてだという。

SAPの社内起業プログラム「One Billion Lives(1BL)」で最終選抜された

 SAP Fieldglassは、世界180カ国、20万社以上のサービス会社が登録するプラットフォームで、外部人財の募集情報、選定、契約、勤怠、請求といった管理を一元的に行うことができる。Siemens、Johnson & Johnsonなどの企業が導入しており、年間21万2000件、取引金額にして547億ドルの契約が生まれている。

 通常は外部人財を求める企業が運用するが、今回は仲介者としてグラミン日本が運営し、複数の企業と複数の就労希望者を結びつける。中長期的には、勤務実績などが記録されてスキルの見える化が進み、求職者個々人にさらに適した仕事が見つかったり、次のスキル開発計画に役立てるといったことができる、と太田氏は説明する。

 「誰もが豊かな経験をもとに、適した仕事を生き生きとできる自分本来の力を発揮できる環境を目指す。誰もが平等に成長のチャンスを持ち続けることができる社会を実現していきたい」(太田氏)

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