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文系エンジニアとして勉強会に学んできた自身の経験をもとに

文系学生をコミュニティに呼び込むための3つの提案

2021年01月14日 07時00分更新

文● 重森大 編集●大谷イビサ

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 AWSの勉強会では、技術的な話題が多い。当たり前のことだ。当然、そこに集まる人はエンジニアを中心に、いわゆる理系の人が多くなる。大学では文系学部で学んでいた方がエンジニアになることもないわけではないが、理系学部出身者の方が圧倒的に多いことだろう。

 そんな中で、文系のしかも大学生が四国クラウドお遍路2020に参加していた。2019年に続き2年目の参加という本田 翔也さんだ。文系学生エンジニアが勉強会に出るということ、また他の文系学生エンジニアが勉強会に出やすくなるために要望したいことを、自身の経験にもとづいて語ってくれた。

文系の仲間にコミュニティに参加してもらいたいけれど、来てもらえないその理由

 「文系学生が、エンジニアコミュニティーに求めること」と題して登壇した本田さんは、高知工科大学の4年生だ。工科大学ときいて理系なのではと思ったが、経済・マネジメント学群に学ぶ、文系の学生なのだという。研修で触れたのをきっかけにAWSを使い始め、四国クラウドお遍路2019では5分間のLTでその経験を話した。

高知工科大学 経済・マネジメント学群 本田 翔也さん

 「親切な高知県庁の方に連れられて、徳島で開催された四国クラウドお遍路2019に参加しました。LTで『これからエンジニアとしてやっていきたいです。今欲しいのは実践の機会とお金です!!』と話したら、そこで会ったご縁からアルバイトが決まりました」(本田さん)

 アルバイト先は、部式会社カミノバ。本田さんはそこでエンジニアとして、kintoneのカスタマイズなどを行っている。さらに、勉強会で話をした縁から、株式会社神戸デジタル・ラボへの就職も決定。エンジニアとしての人生をスタートすることが決まっている。

コミュニティの縁からアルバイト、就職内定も決定!

 本田さんはコミュニティに参加するメリットをいくつも挙げた。新たな情報、知識を得る機会になること。現役エンジニアの方々とのつながりを持てること。現役エンジニアの経験やツール活用事例を学べること。そしてこれらが、プログラミング学習や勉強のモチベーション維持につながること。

 しかしその一方で、文系エンジニアにとってITコミュニティは近づきにくいものでもあるようだ。文系にもエンジニアをやってみたいという人はいる。そういう人にはコミュニティに来て欲しいけれど、足を運んでもらえないと、本田さんは言う。

「何をやっているかわからない、難しいことが多くて近づきにくい、もくもく会ばかりやっているイメージがあるなど、文系学生が参加するにはハードルが高いのが実情です。これを解消するため、文系学生である私からいくつかの提案があります」(本田さん)

文系エンジニアから見たコミュニティのイメージはちょっと残念、挽回しなければ

 工業大学に通っていた(出身とは言っていない)筆者にしても、紹介されてJAWS-UGに参加してみるまで、勉強会というのはまったく未知の空間だった。文系の学生にとっては、なおさらわかりにくいだろう。もっと参加者の裾野を広げるために、本田さんの提案に皆で耳を傾けようではないか。

文系学生がコミュニティに参加したくなる3つの方法

 本田さんからの提案は、大きく分けて3つ。1つめは、活動内容をもっとわかりやすく伝えること。どのような活動をしているかわかりにくいため、思い込みや誤解から入りにくいイメージを抱いてしまう。そうならないよう、活動風景、活動内容をもっと積極的に発信し、コミュニティの雰囲気を伝えていくべきだと本田さんは言う。

「エンジニアの勉強会という言葉の響きから、もくもくとPCに向かっているイメージを抱いている人もいます。参加している人たちがわいわいと情報交換している様子や、懇親会の楽しい雰囲気をもっと押し出していくと、文系のエンジニアにも活動内容がわかりやすくなるのではないでしょうか」(本田さん)

 懇親会の雰囲気を押し出すと、「おっさんたちが集まってうぇーい」って感じになってなおさら引かれないだろうか。大丈夫かな。本田さん、大丈夫なのこれ。でも活動風景を伝えていくというのはとても大切だと思う。筆者もその一助になればとの思いから、地方勉強会の様子を記事でお伝えしてきた。しかしメディアが取り上げることができる勉強会は限られている。各支部でTwitterまとめなどをうまく活用して、「JAWS-UG ○○支部」と検索したら活動の様子がわかるくらいに発信していけば、文系学生にも伝わるのではないだろうか。

 本田さんからの提案その2は、ハンズオンを増やすこと。ITに興味がある人が多いとはいえ、「AWSって何?」「kintoneってどんなもの?」という人がほとんどだ。わからないものの活用事例を聞いても、それはやっぱりわからない。わからないものの話はわからないのだ。ではどうやってわかってもらうのがいいかと言えば、実際に触れてみるのが一番。

「わからないことが多くても、体験会のような勉強会なら足を運びやすいと思います。ハンズオンをもっと取り入れてみてください」(本田さん)

 筆者もハンズオンで触れてみて、AWSというものがなんとなく見えてきはじめたのだ。深く理解できなくても、一度触れてみた機能であれば「ああ、あの機能の話か」と、わかった気になって聞ける。準備が大変だが、ハンズオンの効果はやはり大きい。

 3つ目は、学生に積極的に声をかけてくれる大人の存在が、勉強会との橋渡しになるということ。本田さんも最初に誘われたときは「めんどくせ!」と思ったそうだ。しかし引っ張られて参加してみたら、案外楽しく、成長もできたという。

積極的に声がけしてくれる大人の存在が勉強会の橋渡しになる

「学生に、ぜひ積極的に声をかけてください。いやがっているみたいでも、大人から積極的に声を掛けられれば心が動きます。反応が出たら、『よし釣れた!』とばかりに、会場に連れて行ってください」(本田さん)

 そんなナンパ指南みたいなことでいいのか、本田さん。

いつかは文系エンジニアのコミュニティも作れるかも……?

 本田さんからの提案を、大人たちがどのように受け止めて、どのように対応していくか。次世代を、それも情報系の学生だけではなく文系学生にまで裾野を広げて芽吹かせ、成長させるのは「うぇーい」と楽しんでいるおっさんの行動にかかっている。

 「僕は特殊例だから必ずしもこうなるとは限りませんが、少しでも『行ってみよう!』と思ってくれる文系学生が増えてくれればいいと思っての提案です。コミュニティに参加する文系学生が増えれば、文系エンジニアのコミュニティも作れるのではないかと思っています」(本田さん)

本田さんは、次回はエンジニアとして登壇することを宣言した

 エンジニアとしての就職が決まっている本田さんの学生生活は残りわずか。最後に次のように強く宣言して、登壇を締めくくった。

 「次回は現役エンジニアとして登壇します。I’ll be back!」(本田さん)

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