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パナソニックの55V型透明有機EL、カーテンのように透過/遮光が切り替わる

2020年11月23日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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 パナソニックは、55V型透明有機ELディスプレイモジュールを商品化。2020年12月上旬から出荷を開始する。有期ELを使用した透明ディスプレイは国内初となる。

 有機ELならではの色鮮やかな高画質映像を実現する一方で、バックライトを必要としない自発光型の透明有機ELパネルを採用することで、背景が透けて見え、空間を遮断せずに、周囲の環境に溶け込んだり、実物に重ねて映像を表示したりといった使い方が可能になる。

 独自開発の調光ユニットを搭載し、画面オン時のコントラスト感とオフ時の透明性を両立する「TP-55ZT110」、背景を透過させながら明瞭な映像表現を実現する調光ユニットなしの「TP-55ZT100」を用意した。まずは、日本や台湾、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドを皮切りに発売し、順次グローバルに展開する。

バックライト不要の自発光デバイスだからできる

 パナソニック アプライアンス社スマートライフネットワーク事業部ビジュアル・サウンドBU商品企画部の村山靖部長は、「展示会での試作品展示などを通じて多くの反響を得ている。従来のディスプレイにはなかった透明ならではの魅力を体感してもらえるのが特徴である」とした。

 sらに、「画面をオフにしたときには、黒い画面ならず、空間と調和したり、従来は映像が表示できなかった窓ガラスのような場所にも映像が表示できること、さらに、背景との組み合わせで、これまでにはない映像演出効果が得られるという点が、従来のディスプレイとは大きく異なる。5Gによる通信インフラの進化や、コンテンツの多様化も加速するなか、新たな映像表現が可能な透明ディスプレイへの期待の声が多く寄せられたことを受けて、今回の商品化に至った」とする。

 今回商品化した透明有機ELパネルは、画素ごとに配置された有機EL素子が自ら発光するためのバックライトを不要としながらも、色鮮やかな高画質を実現。広視野角となっていることから、斜め方向からでも見やすいという特徴がある。

端的に言えば、網戸の原理

 そのため、デジタルサイネージやショーウィンドウなど、広い空間での表示にも適しているという。

 「端的にいえば、網戸の原理と同じである。格子状の網の間の抜けた部分から、外景を見ることができる。色のついたセルと、透明のセルが交互に配置されており、透明部分を通じて背景も見ることができる」としたほか、「自発光の有機ELパネルを搭載していることから、上下左右から見た際の輝度変化が少なく、広視野角を実現している」という。

 ディスプレイ部の厚みは、調光ユニットなしのTP-55ZT100では3.8mm、調光ユニットを搭載したTP-55ZT100でも7.6mmと、いずれも1cm以下の超薄型であることから、一枚のガラス板のように周囲の空間に溶け込むことができる。

 また、ディスプレイモジュール内の各部材を、真空で高精度に貼り合わせることで反射ロスを抑えて、透明性を高めているという。

 「セルとガラスを張り付ける際に、空気層が入ると界面での反射が起こり、透過率が減衰する。スマホに保護フィルムを張り付けるときに気泡が入らないように張り合わせるのと同じである。高精度な貼合技術によって、クリアな映像表現を実現している」とした。

明るい環境下でも、締まった黒が再現できる仕組み

 TP-55ZT100に搭載した独自開発の調光ユニットは、パネル背面に装着して、光の透過率を電気的に制御。透明モードと遮光モードを切り替えることができる。遮光モードでは、調光ユニットの透過率を下げてパネル後方からの光透過を抑え、明るい環境下でも背景が見えず、黒の引き締まった高コントラストな映像を表示する。

 「外光が入るような明るい環境では、透明ディスプレイの特性上、どうしても外光が透過し、映像にコントラストがでず、視認性が低下しやすい。透過性を電気的に制御することで、黒の再現性を強化。一般的な透明ディスプレイでは実現できないコントラストにより、テレビと比較しても遜色がない映像が楽しめる。透明ディスプレイと通常のディスプレイの両方の良さを兼ね揃えた多機能なディスプレイである」と位置づけている。 さらに、商品の提供形態を、ディスプレイ部と電源ユニット部を分離させたモジュール仕様としていることから、設置場所の柔軟性と、システム設計の汎用性が高いという特徴を持つ。住宅への採用だけでなく、店舗などの商業施設や、駅や空港などの交通分野、ホテル、公共施設をはじめ、さまざまな場所に柔軟に設置することができる。

 「様々な用途での利用を想定して、モジュール仕様とした。複数枚を接合した大画面表示も可能になる」という。短辺方向は最大2枚まで、長辺方向は原理上、何枚でも接合することができる。

 価格はオープンとしており、「モジュールにソフトウェアなどを組み合わせたシステムとしての提案となるため、商談によって異なる」として、価格の目安なども明らかにしなかった。

 「デジタルサイネージとしての利用や、映像表示が可能なパーティションとしても利用でき、有機ELの鮮やかさと透明性により、洗練された空間を創出できる」としている。

過去の展示会でも試作機を展示、空間に溶け込む提案を

 パナソニックでは、2016年以降、ドイツが開催されるIFAや、米国で開催されるCES、イタリアのミラノサローネ、中国の中国国際輸入博覧会、日本のCEATECなどに、透明ディスプレイの試作品を展示してきた経緯がある。これらの展示を通じて、市場性を模索し、改良を重ねてきた。

 「ビジュアル・サウンドBUは、長年に渡り、テレビやオーディオで培った映像、音響技術をもとに、それを極めることを追求してきたが、人に寄り添うことを考えた場合に、これらの技術をどのように生かしていけるのかといった観点からも、試行錯誤を重ねてきた。テレビやオーディオ機器のように、商品そのものを前面に出すのではなく、空間に溶け込んで演習することができれば、人にとって心地よい空間を創出できると考えた」とする。

 中国国際輸入博覧会への出展では、ガラス窓に映像を表示。パナソニックセンター大阪のRe-Lifeサロンでは、自然音によりリラックスができる空間創出を行う取り組みなどを行ってきた。2020年10月23日から、大阪・吹田の万博記念公園で開催された次世代型モビリティサービス実証実験では、小型自動運転EVに透明ディスプレイを搭載し、透過して見える風景とディスプレイに映し出されるアバターによるガイダンス映像を重ねて表示するといった提案を行った。

 「透明ディスプレイは、まだ黎明期であり、まずは有用性と、パナソニックの画質の高さを実感してもらうこと、認知度を高めることに取り組みたい」とした。

投下率と質感の両立、鏡として利用できるミラーディスプレイも

 今回の会見では、同社が取り組む次世代ディスプレイについても説明した。

 表面素材の質感と表示の視認性を両立する高性能ディスプレイモジュールでは、新開発の多層化粧シートにより、建材レベルの質感を持ったディスプレイに、文字や写真を表示するほか、タッチ機能も搭載。木目のテーブルにリモコンを表示して、それを押すと家電の操作が行えたり、家族の予定や連絡先をテーブル上に表示したりできる。

 パナソニック アプライアンス社技術本部デジタルトランスフォーメーション開発センターくらし空間・デバイス開発部の大上智也部長は、「視認性を高めるためには、透過率をあげる必要がある。だが、透過率をあげると表面の質感が落ちてしまう。独自プロセス仕様で作製した表層と、特殊光学フィルムの多層構造で、透過光と質感を調整している」という。

 このディスプレイ技術を使用したインタラクティブテーブルが、神奈川県横浜市の日産パビリオンのNISSAN CHAYA CAFÉに設置されており、一見、普通に見えるテーブルに、人が座ると、必要な時に、必要な情報を表示するといった利用が可能になっている。「一般の人にも新たなディスプレイ技術を体感してもらえるものになっており、料理だけでなく、目でも楽しめる新たな体験価値を提供している」という。

 もうひとつは、鏡としても、テレビとしても利用できるミラーディスプレイだ。

 通常は、鏡として利用しながら、必要に応じてテレビ画像をしたり、欲しい情報を表示したりできる。半分を鏡、半分を映像表示といった利用も可能だ。

 鏡と光源の間に配置した光制御デバイスと、専用設計の特殊光学ガラスにより、映像の視認性を向上。映り込みの無いクリアな映像を表示できるのが特徴で、鏡としての反射特性を均一化。独自光学ボンディング構造による多重反射ロスの低減などによって、既存のミラーディスプレイにはない視認性を実現しているという。

 「これまでは鏡越しの映像といった感じであったが、鏡の映像が映らず、クリアな映像が表示できる」とした。 同社では、「長年培った映像技術やノウハウを活かし、お客様のくらしにおける様々な空間の価値向上と、新たな映像文化の創造にチャレンジしていく」としている。

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