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現場作業のワークフロー設計や作業分析機能も、「TeamViewerフロントライン」で“Connected OT”狙う

TeamViewer、製造業や物流業向けARソリューションを国内発売

2020年12月01日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 リモート接続ソリューションのTeamViewerジャパンは2020年11月25日、AR(拡張現実)技術を活用した製造業の現場向けソリューション「TeamViewerフロントライン」シリーズを国内販売開始した。今年8月に買収を完了したUbimax(ユビマックス)のソリューションで、現場と遠隔指示者を映像でつないだリモートサポート、作業手順を自動指示するワークフローなどの機能で現場作業の効率化を支援する。

 記者発表会では同製品の特徴や販売戦略のほか、「Connected Operational Technologies(Connected OT)」の普及を目指す同社の方向性が紹介された。また、製造業向けの技術者派遣や開発請負を手がけ、Ubimaxソリューションの国内販売も行ってきたパートナーのアウトソーシングテクノロジーも出席し、国内での活用事例などを紹介した。

「TeamViewerフロントライン」シリーズの全体像。ピックアップ、組立/製造工程、保守/検査、遠隔サポートという大きく4つのソリューションで構成される

サムスン、BMW、エアバスなどグローバルですでに400社以上が採用

現場作業のワークフロー化や作業ログ分析、ITとの連携で新たな価値を生む

 TeamViewerはもともとリモートアクセス/ITコネクティビティ、IoT/センサーデバイスコネクティビティのソリューションをラインアップしているが、今回はここに現場作業支援のARソリューションが加わった。その狙いは何か。

 TeamViewerジャパン ビジネス開発部 部長の小宮崇博氏は、Ubimax買収とフロントラインシリーズ製品を通じて“Connected OT”を実現し、デジタル世界と実世界の結合によるビジネス価値向上を目指すと説明する。

 従来のOTは、あまり“Connected”ではなかったことを小宮氏は指摘する。デモビデオでは、作業者が紙の作業指示書を参照しながら、手作業で製造機械に設定データを入力し、作業完了部品の個数を作業者自身で数える作業光景が映し出された。フロントラインでは、そうした指示/機器設定/作業ログなどをスマートグラス、AR、画像認識などの技術でデジタル化/自動化する。

 「TeamViewerはすでにIoTやITをつなぐ製品を持っており、ヒト、モノ、情報の間を連携してきた。さらに今回、フロントラインの技術でワークフローをここに連携する。これを基盤としていわゆるバリューチェーンどうし、たとえばエンジニアリングチェーンとサービスチェーン、サプライチェーンとサポート/サービスチェーンを結合する、そうしたビジネスを生み出そうという狙いだ」(小宮氏)

従来のヒト/モノ/データをつなぐソリューションに加えて、フロントラインを通じて現実世界のヒト/ワークフロー/データをつなぐ狙い

TeamViewerの目指すConnected OT、DXの姿(デモビデオ)。TeamViewer IoTを通じて取得した機器情報から異常予兆を検知し、現場作業員はスマートグラスに表示されるデータを参照しながら作業にあたる

 TeamViewerフロントラインは、単にスマートグラスとARの技術を提供するだけのソリューションではない。たとえば現場業務のワークフローを設計し、それに従って作業者に指示を出すと同時に、作業ログを取得/蓄積するアプリケーションも提供する。これにより現場作業のデータ分析が可能になる。むしろこちらが本質的なビジネス価値を生むと言えるだろう。

 「たとえば生産計画と現場の実績にギャップが生じているが、どこに原因があるのかわからないといった悩みがある。フロントラインシリーズでワークフローをデジタル化することで、作業のどこに想定外の時間がかかっているのか、ログデータからクリティカルパスや異常(アノマリ)を分析することができる」(小宮氏)

現場業務のワークフローを「デジタル化」し、作業ログを分析することで、業務の最適化と効率化などを実現可能にする

 小宮氏は、現場業務はITとOTの組み合わせで成り立っており、これらをデジタルによって結合させることで、業務の効率化だけでなく「新しいコト」を創造し、価値を生み出していきたいと語った。「TeamViewerはもともとITサポートから出てきたメーカーだが、さらにOTやヒトとの結合、そして新しいコトの創造を目指して、今回フロントラインを発表した」(小宮氏)。

ビジネスと現場、ITとOT、ヒト/モノ/コトのすべてをデジタルで結合することで、新たな価値を創造する狙い

 TeamViewerジャパン パートナー営業本部 本部長の菰田詠一氏は、ビジネス戦略として、国内へのConnected OTテクノロジー普及/展開を進め、多様な業界におけるDX促進を支援するほか、生産し工場に向けた実践的なエコシステムの構築を図ると述べた。

 具体的にフォーカスするセグメントとしては製造、建設/土木、流通、医療を挙げ、各セグメントのエンタープライズから中堅企業をターゲットに、パートナーとの共同プロモーションや海外ユースケース紹介などを図る。そのための協業パートナー拡充やトレーニング拡充、支援プログラムを通じた情報展開などを行っていくとした。

従来のTeamViewerソリューションは直接販売ルートもあったが、今回のフロントラインは100%パートナー経由での販売となる。パートナーがコンサルティングや導入支援などの付加価値を提供する

 TeamViewerジャパンでは、2021年中に10社の付加価値パートナー獲得と、100社での実導入を目指したいとしている。

アウトソーシングテクノロジーが国内活用事例を紹介

 フロントラインパートナーの1社であるアウトソーシングテクノロジーからはマネージング・ディレクターの須永知幸氏が出席し、国内における同ソリューションの採用実績などを紹介した。同社では、主要顧客である製造や物流の現場でデジタル化が加速し、ニーズが顕在化したことから、2020年2月よりUbimaxフロントラインの販売を開始している。

 須永氏は、現場業務のデバイスとして「やはり注目されているのはスマートグラス」だと語る。従来の紙、スマートフォン/タブレットとは異なり「ハンズフリー」で、作業を行いながら情報を閲覧したり、内蔵カメラで現場状況を撮影、さらに遠隔指示者と共有できるからだ。操作もボイスコマンド(音声)を通じて行える。

 「ただし、スマートグラスさえあれば現場活用できるわけではない。スマートグラスの上に、現場シーン、現場業務に適したアプリケーションが載っていることが大事だ」(須永氏)

 フロントラインでは前述したワークフロー設計とログ分析のほか、APIを通じた既存システムとの連携もできる点を強調した。「たとえば現場写真や作業内容の記録を含む作業報告書の作成を自動化する、といったことも可能だ」(須永氏)。

スマートグラスとARの活用によって、遠隔支援からワークフローに沿った業務内容指示、さらに熟練工の作業手順を動画で参照しながら作業するトレーニングなどにも活用できると説明

 国内における活用事例としては、製造業(輸送機、電子部品、建材)をはじめ、造園関連企業、化学プラント、中古車販売といった幅広い業種を紹介した。たとえば、コロナ禍により海外出張ができない製造業で海外生産拠点をリモート支援して品質を担保する、化学プラントにおける試験業務で作業手順をワークフロー化/可視化して作業品質を一定化する、といった用途で利用されているという。

アウトソーシングテクノロジーが手がけた、TeamViewerフロントラインの国内活用事例(本番導入、トライアル)

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