n次創作者がインセンティブを受け取れる試み「n次流通プロジェクト」とは?

ブロックチェーンで漫画アニメゲームのファンが得する社会を作る!

文●石井英男 編集●ASCII

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創作の連なりをブロックチェーンに刻む試み

―― 「n次流通プロジェクト」は2020年春に実証実験が行われたと聞きました。その具体的な方法と流れを教えてください。

中尾 今回の実証実験ではKADOKAWAグループ・ComicWalker編集部の協力を得ました。まず、漫画『文豪ストレイドッグス』の電子書籍版をオリジナル、一次創作として位置づけます。次に、その電子書籍をePUB Viewer for Twitter」というTwitterのタイムラインで電子書籍が読めるビューアに載せました。これが二次創作という位置づけになります。

 そしてePUB Viewer for Twitterで『文豪ストレイドッグス』を読んだユーザーが「いいね!」したり、動画投稿サイトなどで漫画の面白さを紹介する動画を配信したりといった行動が三次創作と位置付けられます。さらにそうしたユーザー発の三次創作に触発されたユーザーの行動やコンテンツが四次創作を……と続いていくわけです。

 なお、それらコンテンツやメディアの連携、またPID管理やコンテンツの評価、報酬の分配、利用者権の管理にはブロックチェーン技術が使われており、藤井さん率いるシビラが開発・運営を担当しています。

n次流通の概念図

―― 実証実験用に「ユーザーの創作実績を管理できるアプリ」が配られたと聞きます。ユーザーはどのような体験ができたのでしょうか?

藤井 たとえばフォートナイトが3億ものユーザー数を抱えている理由はゲームの面白さだけではありません。「ゲームプレイによる楽しみ」が一次商圏だとしたら、「ゲーム外での行動による楽しみ」は二次商圏と言えます。この二次商圏、つまり膨大な動画やライブ配信、ユーザー同士の交流などを含めた楽しさが多大な貢献をしているわけです。こうした「ゲーム業界で起きていることをゲームコンテンツ以外で再現しよう」が狙いの1つです。

 そこで我々は「ゲーム外での行動」を評価できるシステムを考えました。これをロイヤリティマネジメントシステム 2.0と呼んでいます。買って読む以外の――漫画の原著作者をシンボルと呼んでいるんですが――シンボルが『それは良い貢献だね!』と思えるものを評価できるように、アプリを2つ作りました。漫画のライブ配信アプリと、各ユーザーの貢献や評価がバッジ、カード、レベルで表現されるユーザーナーチャリングアプリです。

 これらアプリの裏側がブロックチェーンになっています。まずライブ配信、これはシンプルですよね。1人で読むのではなく、配信者が『文豪ストレイドッグス』の1話をたとえば10人くらいで読んでいると。なかには初見配信で視聴者が配信者の先生役になったりとか、配信しながら知り合いと飲んで駄弁ってるだけとかもあるでしょう。そういった行動を起こしてもらうのがアプリの目的といいますか、役割の1つです。

 配信者は漫画を買って自分で消費しているだけではなく、漫画というコンテンツありきで新しいコンテンツを生んだことになります。

 ただ、漫画のライブ配信が流行ったとしても、原著作者は(直接的には)得しません。ここでアプリが活きてきます。ある配信を見た結果、多くの人が『文豪ストレイドッグス』をより好きになったとか、その配信がきっかけで書籍を買った人がいたりしたら、その配信者は作品に貢献していると言えます。なので、その人を評価する。これがロイヤリティマネジメントシステムが2.0である理由です。

 そうした貢献がユーザーナーチャリングアプリ側では、「何をしたらどのバッジがもらえる」とか「現在のあなたのファンレベルはいくつです」というかたちで可視化されます。そして、ある特定のバッジ3つとファンレベルが5以上という条件を満たすと公式パートナーとしてカードと特典が付与されますと。これはゲーム業界ですでに起きていることですね。

―― 確かにゲーム業界ですと、「あるゲームの人気に一役買った配信者が、続編を一足先にプレイしてその動画を配信する」といった流れがありますね。

藤井 今回は、1話丸々読めたり、ライブ配信できる環境をもらえる、といった特典が用意されました。

―― 1話丸々読めたり、ライブ配信できるってすごいですね。。

中尾 こうしたやりとり自体もトークンでアクセス制御しています。ePUBビューアは認証機能がないので、誰が読んでいるのかわからないような構成になっています。それに対して、誰が読んでいるかではなく、「ある特定の人だけはこのコンテンツにアクセスして良いよ」という状況をトークンで実現しています。

藤井 我々が用意した、ある1行を組み込むだけで、そのコンテンツにアクセスするトークンでチェックをかけて……という制御を可能にしました。

実証実験ではライブ配信用アプリ、ユーザーナーチャリングアプリの2種類を配布した

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