にっぽん丸の新型コロナウイルス感染防止対策
こうして一泊二日のプレオープンクルーズは、終始何かしら食べて飲んで呑んで寝ている、という大変至福の時を過ごしたのでありました。
船旅ということで「密じゃね?感染すんじゃね?」と危惧する人が少なくありません。加えて、マスクを外す機会が多い飲食が楽しみのメインとなると、一層心配になるかもしれません。
しかし、事前のPCR検査や分散集合からの乗船、乗船時における検温、施設利用時の人数制限うや混雑度告知など、にっぽん丸では多くの人が狭い空間に密集しないように、十分な対策を施していました。船客も通常定員が500人のところ、4割の200人までの乗船としています。
にっぽん丸では感染予防対策として食事のタイミングも重視しています。船内ではマスク着用が求められていますが、食事中はどうしても外さざるを得ません。ダイニングやラウンジ、カフェ、メインバーなどなど、船内に備えてあるイスは、すべてひとつおきにカバーやメッセージパネルを置いて、隣や対面に座れないようにしています。
加えて、誰がどのタイミングで近くにいたかを把握できるように、すべてのテーブル、もしくはイスにQRコードを割り当て、使用した人の乗船証(船内では乗船証を常時携帯することが求められています)のQRコードとテーブル、もしくはイスのQRコードを専用デバイスで読み込んで利用記録を残すようにしています。
ここで「COCOA」などの既存の接触確認アプリではなく、独自開発のQRコード利用アプリを使うのは、洋上にいる船内ではインターネット接続が確実ではないこと、そしてスマートフォンなどの扱いに慣れていない人でも行動が把握できるようにするのが理由です。このQRコードを使うチェックは、航海中に飲食するすべてのタイミングで実施していました。
また、船内で開催するコンサートやイベントなどでは、演者の前にアクリル板を設置し、観客席も使える数を減らしたほかに、人が密集しやすい終演時には、前列から時間をかけて退場するように誘導していました。
さらに、万が一船内で有症者やPCR検査陽性者が発生した場合は、船内イベントを中止して船客全員は自分の船室に待機してもらうほか、有症者と陽性者は専用エリア(場合によっては陰圧テントを設置した専用船室)に隔離することになります。
横浜港という大都市の目の前で起きた「ダイヤモンド・プリンセス」における新型コロナウイルス感染クラスター発生によって、多くの人がクルーズ客船による船旅を危険視するようになってしまったのは残念ながら事実です。しかし、あの事案から得た多くの教訓を反映したガイドラインを策定し、かつ関係者が時間をかけて訓練することで、感染のリスクを抑制した航海を心がけられるようになっています。そして、万が一感染者が発生した場合でも、その拡大を最小化できるようになっているのもまた事実です。
このレポートで紹介しているように、船旅そのものはとても魅力的な旅の形態です。また、日本でクルーズが利用できない大きな理由のひとつとして「長い休みがとりにくい」という事情がありましたが、これも週末の一泊二日、もしくは、週末を絡めた二泊三日のクルーズが増えています。
ちなみに、料金は今回筆者が体験した「横浜ワンナイトクルーズ」のデラックスシングルですとひとりあたり12万3000円(税込)ですが、最安のスタンダードステートですと4万9000円(税込)になります。なお、ステートクラスでは船室がステートルームになるほか、利用できるダイニングや受けられるサービスがデラックスクラスやスイートクラスと異なります。
高めに見える料金も、宿泊代と食事代が一緒と考えればかえって割安ですし、国内クルーズはGOTOトラベルキャンペーンの対象となります。Go To キャンペーンで旅行したいと考えているなら、その目的地(?)のひとつとして、感染防止対策を十分に施して、今なら定員を抑えてゆったり過ごせるクルーズを体験する貴重な機会と言えるでしょう。