3歳児くんの保護者をしています盛田諒ですこんにちは。朝日新聞出版が10月13日、私も取材対象として登場する「妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体」(朝日新書)を発売しました。朝日新聞が運営するウェブメディアwithnewsの特集企画「父親のモヤモヤ」をまとめた一冊。「『イクメン』誕生から10年──現実はどう変わったか?」というキャッチコピーどおり、共働き時代の父親がどんな状況に置かれているのかを様々な角度から取材した内容です。
●幅広い世代に読んでほしい
「仕事も家庭も、何もかもが停滞している」。朝日新聞の男性記者がひとりの父親として抱いた「モヤモヤ」を出発点として、当事者である子育て中の男女、ジェンダーなどに詳しい有識者、子育てに関わるNPOの代表らに取材しながら、子育て中の男性の立場を立体的にまとめた一冊。「ママ友の輪に入れない」「男子トイレだけおむつ交換台がない」などの父親あるあるエピソードも多く、「そうなんだよ…」と苦笑まじりに読まされました。高度経済成長期と現在では社会に求められるものが根本的に違っているなど、現役世代だけでなく、自分たちの親世代を含めた幅広い世代に知ってほしい話も入っています。
詳しくは本で読んでもらうとして、タイトルになっている「妻に言えない夫の本音」はざっくり「仕事が優先」「子育てしんどい」の2つ。要は仕事と家庭の「両立疲れ」のことでした。女性からすれば「何を今更」「やっと気づいたか」と言われるような話です。それでも性別役割分担の中で「仕事」の中心を担ってきた男性が当事者意識をもった意味は大きく、これからの行動次第で社会は変えていけるのではないかと希望を持たせるような内容になっていました。
それでは具体的にどう変えればいいのかということで登場するのが、いわゆる働き方改革的な考え方。長時間労働の是正や、事情に応じた柔軟な働き方の実現。本の中ではライフステージに応じて柔軟に仕事の中身を変えられるようにしてはという提案も出てきます。時代に合わせて転勤を見なおす企業が増えているなど「なるほどなあ」と思わされる話も出てくる一方、せっかく問題として「本音」を取りあげたにも関わらず、「家庭の時間を大切にする社会を作ろう」という「建前」で終わっているようなモヤモヤ感も若干残りました。
●「子どもがいても仕事は普通に続けたい」が本音
結局、男女を問わず「親なんだから子どもの面倒を見るのは当たり前だけど、仕事は普通に続けたいんだよ」ってのが多くの人の本音だと思うんですよ。仕事を減らせば経済的な不安も出てくるし、「子どもがいることは周囲にとって迷惑なのか?」というモヤモヤも出てくるし。それに対しては「事情に合わせて仕事を変える」だけではなく「事情があっても同じ仕事ができるようにする」って選択肢が増えてもいいんじゃないかと思うんですよね。
働き方を変えるという選択肢があるなら、もう一方で、育て方を変えるという選択肢があってもいいんじゃないかっていうことです。
たとえばベビーシッターのような子育て系サービスの割引が利く福利厚生なんかがあるんですよね。子どもの世話や親の介護をしないといけない人が会社の福利厚生を使って、信頼のおけるプロのケアを受けながらバリバリ働くためのサポートを受けられるって選択肢が増えてもいいんじゃないかなあと。給付金と違って本人と家族だけが使えるサービスの割引なら不公平感も少ないんじゃないかと思うし。都心では既にそうして働いている人もいるかもしれませんが、特に地方の中小零細企業でそういう選択肢が増えたらいいんじゃないかと思います。
「自分の子どもなんだから自分で面倒を見なければ」とか「自分の親なんだから自分で介護しなければ」っていうコンサバな見方がある一方、現実にあわせた進歩的な見方があっていいんじゃないか。もっと「多様な育て方」が認められていいんじゃないかと思うんです。本の中には「母親だけに育児を担わせる考え方は間違い」という意見が出てきますが、むしろ今どき「親だけに育児を担わせる考え方はどうなんだ」という意見が出てきてもいいんじゃないかと。
もちろん異論はあると思いますが、個人的には、別に誰が子どもを育てようと、結果みんなが幸せになるなら何でもいいんじゃないかと思います。
「妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体」は、そんなふうに親たちが感じるモヤモヤについて考えさせられる一冊。「私はこう考える」という意見が読んだ人の数だけ出てくるんじゃないかと思います。実体験にもとづく生々しい話も多く、できるだけ色々な人に手にとってほしいと感じました。あ、私のサインが欲しかったら遠慮なく言ってくださいね!
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。3歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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