HCI/SDSをベースに開発、アプリサーバーの統合など柔軟な構成が可能
インサイト、DB専用機の最新版「Insight Qube Gen.4」発売
2020年09月11日 07時00分更新
インサイトテクノロジーは2020年9月10日、複数種のデータベース(DB)システムを混載できるDB専用サーバーマシンの最新版「Insight Qube Gen.4」をリリースした。HCI(ハイパーコンバージド・インフラストラクチャー)をベースに開発されており、DBシステム以外のアプリケーションも同じ筐体上に仮想化統合できるなどの特徴を持つ。
インサイトではこのハードウェアに、同社が提供するDBコンサルティングなどのサービス、DBセキュリティやDBバックアップなどのソフトウェアもバンドルし、ソリューションとして販売していく方針。デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するうえで、マルチシステムの統合を図っている企業などに提案していく。
HCIとしてもSDSとしても構成可能、外部ベアメタルサーバーも接続できる
Insight Qubeは、DB専門のコンサルティングサービスとソフトウェア開発を手がけてきたインサイトテクノロジーが、DBシステムを高速化させる専用サーバーマシンとして2012年から提供する製品だ。DBパフォーマンスの劣化原因となる4つのボトルネック(CPU、メモリ、ネットワークI/O、ストレージI/O)を排除したハードウェア構成とチューニング、さらに高い信頼性を実現することで、エンタープライズの基幹DBなどに採用されてきた。
今回発表したGen.4は、HCIとブロック型SDS(Software-Defined Storage)のテクノロジーをベースに開発されており、「マルチハイパーバイザ+ベアメタルサーバー」のサポート、「シンプルかつ柔軟性の高い高速ストレージ」、「ハードウェア更新時におけるサービス停止時間の最小化」といった特徴を持つ。
Gen.4のHCIノードは、VMware ESXiおよびHyper-Vに対応するマルチハイパーバイザの仮想化環境を提供し、DB以外のさまざまなワークロードを統合できる。さらに、高速なブロックストレージとしても機能し、外部に用意したベアメタルDBサーバーからのストレージ接続もサポートする。
外部ベアメタルサーバーのサポートによる顧客メリットについて、同社 取締役 兼 CTOの石川雅也氏は、特にOracle Database製品利用時のライセンスコスト削減だと説明した。Oracle DBを仮想環境で利用する場合、未稼働のノード数も含め課金対象となってしまう。そこで、Oracle DBをベアメタルサーバーとして切り離し、なおかつInsight Qubeを共有ストレージとして利用することで、ライセンスコストの増加を抑えつつ統合的な運用ができるシステムを構成可能だと語る。
ストレージにはSDSを採用しており、最小構成は3ノードとなる。ただしHCI(コンピュート+ストレージ)ノードとしても、ストレージ専用ノードとしても設定できるため、ニーズに応じた柔軟なシステム構成が可能となっている。
また、データの冗長化に「RAID1メッシュミラー」方式(RAID1の冗長データをクラスター全体に分散する方式)を採用しており、ノード数を増やすことでストレージI/O性能をリニアに拡張できるうえ、ノード追加時のリバランスやノード障害発生時のリビルドも「分単位」(石川氏)で非常に高速だとアピールした。
「他社のSDSにはリバランスに何時間もかかるものがあるが、Insight Qubeでは分単位、それも1ケタに近い分単位で完了する。高速にリバランスができるので、ノードの追加後、すぐに高い性能を発揮できる」「最小構成は3ノードだが、うち2ノードに障害が発生しても稼働は継続でき、データロストもしない」(石川氏)
このリバランス/リビルドが高速であること、SDSがESXiのバージョン混在環境をサポートすることによって、ハードウェア更新の際のサービス停止時間最小化も実現できるという。
石川氏は簡単なノード構成例で説明した。まずは、古いバージョンのノードで構成されたクラスタに新しいバージョンのノードを追加することで、リバランスを自動実行させる。次に、古いバージョンのノードを順にシャットダウンしていけば、新しいノードで自動的にリビルドが実行され、ハードウェアの更新が完了する。
DBコンサルティングサービスを付加して提供、DX推進企業の悩みを解決
インサイトテクノロジー ソリューション企画本部長の阿部健一氏は、Insight Qube Gen.4の販売戦略について説明した。同社ではこの製品を「DXを実現するマルチデータ統合プラットフォーム」「“Hyper Converged Data Infrastructure(HCDI)”」と位置づけているという。
阿部氏は、現在の企業がDB周りで抱える課題として、「DX推進で複数アプリケーションを統合したものの、DBの統合が困難でそこが残っている」「サイロ化した複数のシステムが存在し、運用が複雑なうえに個別の保守運用契約でコストがかかっている」「オンプレミス/クラウドのDBにおける適材適所の使い分けが難しい」といった点を挙げる。
そうした課題解決のために、多様なDBシステムを統合できるInsight Qubeの新版を開発したが、今回はそれだけでなく、DBコンサルティングサービスもバンドルしたかたちで提供するという。
「顧客企業における現在のDB使用状況を理解したうえで、DBはどう統合したらよいか、ハードウェアのサイジングはどうしたらよいか、そういった(コンサルティングを通じた)支援を行う。 また有償にはなるが、当社ではPoCやDB移行作業のサービスも提供できる」(阿部氏)
またクラウドとのシームレスなインタフェースとして、Qlik Technologiesのレプリケーションツール「Qlik Replicate」を販売しており、これを活用して「オンプレミスとクラウドとのデータの行き来をスムーズにすることができる」と紹介した。
Insight Qube Gen.4の価格はオープンプライス。なお、ハードウェア本体のみの最小構成価格は1200万円(税抜)からとしている。阿部氏は「マルチDBを有する企業に対し、ダイレクトタッチ販売をベースに展開していく」と販売方針を述べた。
また今後、アプリケーションが載せられるHCIのメリットを生かし、Insight QubeにさまざまなDB関連ソフトウェアを統合したかたちでも提供していくという。第一弾は、同社のデータベース監査/セキュリティツール「PISO」を統合したバージョンを今秋リリース予定で、その後もDBレプリケーション(前述のQlik Replicate)、DB仮想化、DBバックアップ、DBテスト、DBマスキングなどのソフトウェアを順次統合していく予定だと説明している。