Power Exporter 9000との併用で広がる使い道
ここからは、防災をテーマにした展示の模様をお届け。
Honda eはエンジンフードの中央に充電ポートを搭載する。「CHAdeMO(チャデモ)」規格に準拠した急速充電と、EV Type1規格の通常充電に対応。CHAdeMOでの充電なら、公称では30分で80%の急速充電が可能。80%充電状態で、最大202kmの走行が可能という。
Honda eを活用した車中での避難生活の紹介として、ホンダの可搬型の外部給電機「Power Exporter 9000」を使ったデモが披露された。
Power Exporter 9000は最大9kVAの出力に対応し、電子レンジや電気ケトルなど消費電力の大きい家電も駆動させることができる。災害時の非常用電源として自治体にも提供実績がある商品だが、自動車に積載しておけば、避難所、小規模オフィス、店舗の非常用電源として活用できる。
充電、給電はユーザー側で切り替える必要はなく、Power Exporter 9000をポートに接続すれば、自動的に給電モードに切り替わるとのこと。ユーザーフレンドリーな使用感というべきか、難しい操作が必要ないのは、平常心を保てないこともある非常時や緊急時にはありがたい。
Honda eそのものにも100Vのコンセントを搭載している。1500Wまでの出力に対応するため、車内でも電気ケトルが使える。
電気ケトルの仕様や、温度環境によっても異なるが、ホンダによれば、カップヌードル1食分に必要なお湯の量を300mlとした場合、日清食品の「カップヌードル」なら、Honda eに蓄電されている電力で、400食分が作れるとのこと。
Honda eは、大規模災害時に数日生き延びられるほどの電源にもなり得る電源電気自動車なのだ。
大規模災害とはいかないまでも、数時間の停電時なども活躍できるだろう。担当者によれば、Honda eの車内インテリアは「リビング」をテーマにしているそう。車内はコンパクトカーとしてはかなり広く感じるし、木目調のダッシュボードや、後部座席のダウンライト、硬めでがっしりとしたシートなど、リビング的な要素がふんだんに取り入れられている。
蓄電器「E500」や防災セットも一緒に積んでおきたい
Power Exporter 9000は120万円を超えるので、個人での導入は少々ハードルが高いが、より手軽に使える製品としてホンダは「E500」という蓄電器も用意している。
最大出力は500Wで、重量も5.1kgとコンパクト。何よりメーカー希望小売価格が8万8000円と個人でも導入しやすい範囲であり、ホンダでも車載電源として、キャンプやスポーツ観戦時の利用を推している。
スマートフォンの充電なら軽くこなせる出力だし、電気ケトルや炊飯器も500W以下の製品なら使える。たとえば、1Lのお湯なら3回程度の沸騰、3合炊飯器なら2回程度の炊飯が可能。
アウトドアな趣味を持つユーザーなら、普段からE500をフル充電で積んでおいてレジャーで活用しつつ、いざというときは、Honda eの電力に+αの電源として非常用電源として使える。
電源というテーマからは逸れるが、ホンダは防災への取り組みとして、全国の販売店で防災安心キットも販売している。1人用で7920円からと手ごろな価格ながら、7年保存クッキーや7年保存水などの食料、常備用カイロ、防じんマスク、使い捨てトイレ、ホイッスルなど、緊急時に役立つ物資をコンパクトにまとめている、頼もしいパッケージだ。
車を離れる場合に氏名、連絡先などを記入して、ダッシュボードなどの見える場所に置いておける「災害時伝言カード」も特徴的。災害時、放置された自動車が移動できず、避難路がふさがれてしまうことがあるというニュースを見たことはないだろうか。
やむを得ない事情で車を置いていかなければならなくなったとしても、鍵の場所、エンジンのかけ方などをメモしておき、他者が移動しやすくしておいたり、家族向けの伝言を書き置きしておいたりと、さまざまな使い方ができる。
Honda eの持つ可能性とは
Honda eは特徴的な外観や、その先進的な仕様に注目が集まっているが、非常時にはかなりの容量を持った電源になるなど、電気自動車の枠を超えた可能性を持ったクルマだ。
限られた階級や、軍の役職の人物の移動手段から、量産化の時代を経て、さまざまな機能が盛り込まれ、庶民の「足」となって普及し大衆化、その後はハイブリット化の促進によって低燃費、環境保護といった文脈で語られることも増えた自動車。
次世代のトレンドが電気自動車であるらしいことは周知されてきているが、今回の展示で、ホンダがHonda eで見せているのは、単に次世代の自動車というよりも、自動車という概念の進歩であるかもしれない。