7月末にOriolusのポータブルオーディオ新製品が発売された。
ポータブルヘッドホンアンプの「BA20」、ポータブルDACの「BD20」、そしてポータブルイコライザー「SE02」だ。これらは低価格でコンパクトでありながらフルバランス構成の本格的な製品である。
なかでもひときわ耳目を集めたのはSE02だ。日本のオーディオ全盛時代にはこうした単機能の「グライコ」(グラフィックイコライザー)製品は人気があったが、いまではすっかり忘れられていたものだ。それを中国メーカーがユニークな着想でポータブル製品として蘇らせたのはいかにも今の時代らしい。
SE02は特定の周波数だけ通すバンドパスフィルターを左右別々に5種類(63Hz、330Hz、1kHz、3.3kHz、10kHz)搭載している。これは低域、中低域、中音域、中高域、高域と言い換えた方が分かりやすいかもしれない。
つまみを手で触れて音を作る楽しさを思い出す
BD20、BA20と組み合わせて試したみた。まず、精巧にできたグライコのミニチュアモデルのような感覚が楽しい。なかなかに精密感があって、スライダーの動きもスムーズ。センターにクリックがあるので、簡単に初期設定に戻すことができる。215gでずっしりとした重みがある。ちなみにSE02は電池を必要としているのでパッシブな機器ではない。バッテリーは4時間の充電で15時間の使用が可能だ。
イコライザ機能のオン/オフスイッチがあるので、効果は簡単に比較して試すことができる。イコライザーの考え方はスマホアプリのイコライザーと同じだが、デジタル処理ではなくアナログ回路を通す、音の変化は自然で滑らかだ。自分で好みに音にカスタマイズをしていく感覚はオーディオの楽しみの一つだということを思い起こさせてくれる。
デジタルイコライザーだとよく音割れを起こしてしまうが、SE02ではそういうことは起こりにくい。イコライザーを使うことによる音質低下もほとんど感じられない。試しにBluetoothレシーバーである「Oriolus 1795」の4.4mmバランス端子の後段としても接続して試してみたが、むしろ音質が向上する感じさえする。ゲインはないが、なんらかのバッファアンプのような働きをしているのかもしれない。
SE02はDACなどのソース機器とアンプの間に入れることが推奨されている。ポータブルで使う場合は、BD20とBA20を重ねて持ち運ぶことになるが、さすがに3段重ねはかさばってしまう。使う際には再生する曲を選び、BD20にデジタル出力するスマホなども必要だ。
となると、PCなどに接続してデスクトップで使ってみるのが面白いかもしれない。BD20、BA20とも音質は価格以上の上質さがあるので、音質の高さと趣味性を兼ね備えたシステムが作れるのではないかと思う。
ポータブル分野で、中国の成熟を感じとれた
コストパフォーマンスの高さで売り上げを伸ばしてきた中国オーディオ製品が、こうした遊びの部分にまで踏み込む製品を開発したのは、それだけ成熟してきているということではないだろうか。
この連載の記事
-
第300回
AV
インド発の密閉型/静電式ヘッドホン? オーディオ勢力図の変化を感じた「INOX」 -
第299回
AV
夏のヘッドフォン祭 mini 2024レポート、突然のfinal新ヘッドホンに会場がわく! -
第298回
AV
ポタフェス2024冬の注目製品をチェック、佐々木喜洋 -
第297回
AV
なんか懐かしい気分、あなたのApple WatchをiPodにする「tinyPod」が登場 -
第296回
AV
逆相の音波で音漏れを防げる? 耳を塞がないヘッドホン「nwm ONE」──NTTソノリティ -
第295回
AV
NUARLのMEMS搭載完全ワイヤレス「Inovatör」(旧X878)の秘密とは? -
第294回
AV
AirPodsで使用者の動きからBPMを認識、それを何かに応用できる特許 -
第293回
AV
次世代AirPodsにはカメラが付くらしい、じゃあ何に使う?(ヒント:Vision Pro) -
第292回
AV
OTOTEN発、LinkPlayの多機能ネット再生機「WiiM」とSHANLINGの「EC Smart」を聴く -
第291回
AV
ビクターの新機軸、シルク配合振動板の魅力とは? HA-FX550Tを聴く -
第290回
AV
HDTracksがMQA技術を使ったストリーミング配信開始へ - この連載の一覧へ