HTCが提供している「VIVEPORTインフィニティ」は、定額料金でVRコンテンツが遊び放題になるVRサブスクリプションサービスだ。月額1500円、年額プランだと、1か月あたり1000円で利用できる。
そんなVIVEPORTインフィニティのVRコンテンツを紹介する本連載、第8回となる今回は、VRパルクールゲーム「TO THE TOP」を紹介する。ビルの屋上やアスレチックなど、一歩間違えれば転落してしまいそうなコースを高速で駆け抜ける、スタイリッシュな作品だ。
そもそも「パルクール」とは、障害物や高低差のあるコースを、生身でアクロバティックに走破していく競技。主にエクストリームスポーツに分類されている。ビルからビルに大ジャンプで飛び移るといった映像を、動画サイトやテレビで見たことがある人も多いのではないだろうか。
そのパルクールをVRで楽しめるのが本作。シングルプレイでは、イージーやミディアムなど、難易度別に用意されたステージを順番にクリアしていく、というのがゲームの流れだ。「近未来の世界に存在する“TO THE TOP”アカデミーでチャレンジをクリアする」というストーリーも存在するが、どちらかといえばゲームプレイ重視の作品になっている。なお、本作はチュートリアルを含めて完全日本語化されているので、英語が苦手な人も安心だ。
「TO THE TOP」にはスティック操作やワープといった、VRゲームでよくある移動システムは存在しない。その代わりに、ハンドコントローラー(手)で地面や突起を掴み、カエル跳びのような要領で、“跳び進む”というユニークな仕組みが採用されている。
手で掴める場所(壁や地面)は青く表示されており、連続でジャンプを繰り返すと、跳ぶ際の高さや速度がさらに増す。ステージ各所の白い球体のチェックポイントに触れることで、その後失敗しても同地点からやり直すことが可能。回数制限もないので、好きなだけ試行錯誤できる安心設計だ。
最初の方のステージでは、手で掴める青ポイントも多く、特に不自由なく移動できるが、進むにつれて青ポイントは減少。ある程度掴めるポイントが残っているマップでも、落下ポイントが多くなるなど 、ゲームの進行に合わせて難易度は上がっていく。下手なジャンプをすると、掴めるところが存在しない場所に降りてしまい、チェックポイントに戻る羽目になることも。
途中からは、掴むことで滑れる“緑床”や、飛行要素なども登場し、プレイヤーにマンネリを感じさせない作りになっている。
本作のジャンプシステムだが、正直に言うと筆者はプレイ前、少し疑念を抱いていた。現実では全身を使うパルクールを、ほぼ直立不動の状態で、手だけでプレイするというのが、上手くイメージできなかったからだ。
だがこの懸念は、遊び始めてすぐに消え去った。非常に直感的にプレイできる上、スピード感もかなりのもの。途切れることなくジャンプを続けていると、まるで自分がプロのパルクール選手や忍者にでもなったような気分だ。恥ずかしさを承知で表現すると、「風を感じる」ことができた。
また、VR酔いをほとんど感じないのも驚いたポイントだ。パルクールということで、動きはもちろん、進む場所などを見つけるため、視点も割と激しく移動させる必要があるのだが、これが意外と酔わないのである。
恐らくだが、手や頭部の動作は激しい一方で、身体自体はほとんど動かさないことが、酔いを軽減しているのだろう。もし、スティック操作や直接移動がメインの移動方法ならば、こうはなっていないハズだ。掴み操作でのパルクールというシステムを考えた開発陣には、素直に賞賛の意を送りたい。
少し気になったのは、ステージのアンロック条件がやや厳しいこと。各マップは、一定タイム以下でのゴールや、コース上に配置された「ジェム」の収集などで入手できるメダルを、一定数集めることで解放されていく。しかしその個数が割とシビアで、普通にステージクリアするだけだと、メダル数が足りずに、すぐに“収集プレイ”を行なうことになる。
探索も楽しいことは楽しいのだが、個人的には、それはあくまでも“付加要素”であってほしかった。イージー難易度のステージをアンロックするためにある程度の収集が必要というのは、少し厳しくもあるし、挑戦のし甲斐があるとも言える。
総評としては、2017年にSteam版が発売された少し古いVRゲームながら、その輝きは今も失われていないタイトルと評せるだろう。酔いにくく、かつ激しく動けるゲームを求めている人にオススメしたいタイトルだ。
「TO THE TOP」の価格はVIVEPORTでは2050円。VIVEPORTインフィニティに登録すれば、定額で本作を含めたVRコンテンツが遊び放題になる。詳細はこちらから。
© 2017 Electric Hat Games. TO THE TOP is developed by Electric Hat Games and Panic Button, LLC. Electric Hat Games and TO THE TOP logos are trademarks of Electric Hat Games. Panic Button logo is a trademark of Panic Button LLC. All other marks and registered trademarks are property of their respective owner. All rights reserved.
この連載の記事
-
第6回
デジタル
世界に「光」を咲かせよう! 癒しVRアドベンチャー「Fujii」レビュー -
第5回
デジタル
ちょっと違う“Apex”はいかが? 奥深い物語展開が魅力のVR SFアドベンチャー「Apex Construct」 -
第4回
デジタル
昔懐かし“脱出ゲーム”がVRで臨場感たっぷりに楽しめる「Abode 2」 -
第3回
デジタル
爽快感バツグン! 日本刀でフルーツを斬りまくるVRゲーム「Fruit Ninja VR」 -
第2回
デジタル
気分はジェームズ・ボンド、でも死にまくりなVR脱出ゲー「I Expect You To Die」 -
第1回
デジタル
でっかくなったりちっちゃくなったり……不思議なVRパズルゲーム「A Fisherman's Tale」 - この連載の一覧へ