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NutanixとAWSインフラを連携させハイブリッドクラウドを加速

「Nutanix Clusters on AWS」はパブリッククラウドとオンプレミスに調和をもたらす

2020年08月18日 10時30分更新

文● 五味明子 編集●大谷イビサ

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 2020年8月13日、Nutanixはハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)ソフトウェアおよび同社の全製品/サービスの運用を、Amazon Web Services(AWS)が提供するクラウド環境(Amazon EC2ベアメタルインスタンス)に拡張する「Nutanix Clusters on AWS」の一般提供を開始した。

Nutanix APJ地域担当 フィールドCTO ジャスティン・ハースト(Justin Hurst)氏

ハイブリッドクラウドは理想的なインフラだが複雑

 日本の報道陣向けに発表を行なったNutanix APJ地域担当 フィールドCTO ジャスティン・ハースト(Justin Hurst)氏は「われわれの顧客の多くが"ハイブリッドクラウドは理想的なインフラだが複雑"という課題を抱えている。Nutanixはその解決のため、パブリッククラウドとオンプレミスの間に調和をもたらすソリューションを提供したいと考えてきた」と語っており、その最適解が今回のNutanix Clusters on AWSであるとしている。

 Nutanix Clusters on AWSは、NutanixユーザーがAWSベアメタル上に構築されたNutanixプラットフォーム(AWS VPC内)を利用できるソリューションで、Nutanixのクラスター管理ツール「Nutanix Prism」から単一管理することが可能だ。つまりNutanixユーザは、構築済みのオンプレミス/プライベートクラウドと、AWS上のリソースを"単一"のハイブリッドクラウドプラットフォームとしてシームレスに運用できるようになる。また、後述する通り、ライセンスに関してもタームライセンスの持ち込みやPay-as-you-Goなど多くの選択肢が用意されている点も特徴だ。

Nutanix Clusters on AWSの概要

 ニュータニックス・ジャパン マーケティング統括本部 プロダクト・マーケティング・マネージャー 三好哲生氏はNutanix Clusters on AWSのおもなユースケースとして以下のような例を挙げている。

・リフト&シフト―コードの変更なくアプリケーションをクラウドへ移行したり、データセンターの統合が容易になる。アーキテクチャの再設計も不要なので、移行に際してのコストと時間が大幅に削減できる

・オンデマンドの自在性―オンプレミスの環境をパブリッククラウドにオンデマンドで拡張できるため、一時的な容量の拡大(または縮退)や異なるリージョンへの拡張なども数分以内で実現。季節的なニーズの増大や優先順位の変更などにも柔軟に対応可能

・ビジネス継続(DRサイト)―20以上のAWSリージョンから任意にリージョンを選択し、現在のオンプレミス環境の延長線上にディザスタリカバリサイトを構築できる(現在の環境から独立したディザスタリカバリを別途構築する必要がなくなる)

・クラウドネイティブサービス―マシンラーニングやハイパフォーマンスコンピューティングなどクラウド前提のモダンなワークロード/アプリケーションを、新たにアーキテクチャを再設計することなく、パブリッククラウド上から利用できる

想定される主要なワークロード

Nutanix Clusters on AWSの4つの差別化要因

 AWSをはじめとするパブリッククラウドと、オンプレミスの環境を"シームレス"に接続することを謳うソリューションはいくつも存在する。たとえば同じAWSをベースにした「VMware Cloud on AWS」はすでにグローバルで多くの顧客を獲得しているサービスであり、現在も実績を拡大中だ。

 こうした既存のサービスとNutanix Clusters on AWSの差別化要因はどこにあるのか。ハースト氏はNutanix Clusters on AWSにおける重要なポイントとして以下の4点を挙げている。

・ポータビリティ(可搬性)の担保―ライセンスを含め、オンプレミスとパブリッククラウドの間であらゆるサービスが可搬できなければならない。どちらの環境においてもコンサンプションのエクスペリエンスは同等であることが必須

 特に目を引くのが多様なライセンス形態を受容している点だ。Nutanix Clusters on AWSでは利用モデルとして、

・オンプレミスのキャパシティベースライセンスをAWSへと転送するタームベースライセンス(1~5年)の「BYOL(Bring Your Own License)」モデル

・クラウドのクラスタを対象に、時間単位の月額従量課金支払いである「PAYG(Pay-as-you-Go)」モデル

・年間最低コミットメント(最低金額3万5000ドル)を先払いし、ディスカウント価格を適用する「CC(Cloud Commit)」モデル

の3つを用意しており、これらを組み合わせることでより柔軟な利用形態を選択することが可能になる。たとえば、ユーザーが契約しているAWS VPC内に自身のNutanixタームライセンスを持ち込んでもいいし、PAYGモデルを適用してもいい。また、EC2ベアメタルインスタンスの支払いに、ユーザー自身のAWSクレジットを利用することもできる。ハースト氏が言う「コンサプションのエクスペリエンスが同等」はサービスやアプリケーションの使い勝手はもちろんのこと、ライセンスモデルにも適用されている点がユニークだ。

3種類のライセンスモデル

 

・クラウドのネイティブ統合―他のベンダーはオンプレミス/プライベートクラウドからパブリッククラウドという移行モデルにフォーカスしているが、Nutanixはパブリッククラウドとのネイティブ統合を提案

 クラウドネイティブ統合についてはオンプレミスとパブリッククラウドの間を行き来する際、可能な限り低遅延な通信を実現することを意味する。Nutanix Clusters on AWSではオンプレミス環境とAWS VPCの間に中間レイヤーが存在せず、AWSのネットワークレイヤにNutanixのハイパーバイザであるAHVが組み込まれており、2つの環境のネイティブな統合を実現している。また、ユーザーは既存のAWSアカウントを使用し、VPCやサブネットなどのインフラや未使用のAWSクレジットを再利用することも可能となる。ハイブリッドクラウドにおける"シームレス"をスピードと使い勝手の両方の意味で向上させている点に注目したい。

・ ”シームレス"が意味するもの―パブリッククラウドからオンプレミスへ、またはオンプレミスからパブリッククラウドへとシームレスに、かつ自由にワークロードやアプリケーションを移行できるようになると、どういう変化が起こるのかをユーザ企業が理解できている必要がある

 "シームレス"はおもにコストに係る主張となる。ワークロード/アプリケーションをリファクタリングすることなく、またクラウドごとにスキルセットの異なる個別の人材/チームを配備することなく、最適な環境に自由にデプロイしたり、使わなくなったリソースをワンクリックでハイバネート(一時停止)できれば、コストの大幅削減につながる。ワークロードに最適な環境にシームレスに移行できるということは、無駄なコストを省くことだとしている。

・オペレーションのハーモナイズ(調和)―オンプレミスとパブリッククラウドでは運用/管理に求められるスキルが異なっていた。真のハイブリッドクラウドを実現するにはまったく同じスキルセットでもって両方の環境をオペレーションできるような一貫した構造とそれを実現する"ワンキー(one key)"が必要

 "ハーモナイズ"はハースト氏が「(ハイブリッドクラウドにおいて)もっとも重要なポイント」と指摘している部分だ。前述したようにNutanix Clusters on AWSでは、オンプレミス/クラウドを問わずすべてのクラスタをPrismで管理することができる。

 ハースト氏は「ハイブリッドクラウド環境は理想的ではあるが複雑(サイロ化したツール、別々の管理、異なるアーキテクチャなど)に悩まされており、パブリッククラウドとオンプレミスでは求められるスキルセットが異なる」というユーザーの悩みに着目。すべての環境をまたいだ単一のクラウドとして運用できる"ワンキー"ソリューションとしてNutanix Clusters on AWSを開発したとコメントしている。Nutanix(オンプレミス)の世界を維持したまま、AWS(パブリッククラウド)へとストレスなくアプローチできる"ハーモナイズ"がNutanix Clusters on AWSにおける最大の特徴だとしている。
 

 オンプレミス環境をハイブリッドクラウド/マルチクラウドへとシームレスに拡張していく動きはここ1、2年加速しているが、単にレガシーアプリケーションをクラウドに移行するだけでなく、ユーザはよりシームレスな移行(オンプレミスへの回帰)とシンプルで柔軟な運用/管理、そして可能な限り低遅延な通信を求める傾向にある。 Nutanixは今後、同社のハイブリッドマルチクラウドアーキテクチャとしてAWSだけでなく、Microsoft AzureやGoogle Cloudなど他のパブリッククラウドにも適用する意向を示しており、ITインフラの"シームレス"と"ハーモナイズ"をさらに拡大していく姿勢を見せている。
 

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