●CPUはZen2だがキャッシュ構成が異なる
CPU部の設計は(GPUを持たない)Ryzen 3000シリーズと同じZen2をベースにしているが、L3キャッシュが大幅に削減された。Zen2の場合CCX(2〜4コア)ごとに16MBのL3キャッシュが割り当てられていたが、Ryzen PRO 4000GシリーズではCCXごとに4MBに減らされている。
先の大原氏の解説にもある通り、Ryzen PRO 4000Gシリーズは必要な回路を単一のダイに集約(モノリシックダイ)しているため、コストと実装面積のバランス的にL3を削ったと考えられる。
●PCI ExpressはGen3までの対応
Zen2といえばコンシューマー向けCPUとしてはPCI Express Gen4に対応した最初のアーキテクチャーだが、Ryzen PRO 4000GシリーズはPCI Express Gen3までの対応になる。つまりCPUに直結するM.2スロットもPCI Express x16スロットもGen3までの動作となる。もちろん既存のGen4対応のSSDやビデオカードはGen3相当の性能になるだけで問題なく動作する。
PCI Express Gen4接続のM.2 NVMe SSDを使って高速ストレージ環境を夢見ていた人には残念な話だが、本シリーズが想定しているユーザ層を考えれば妥当な選択と言えるだろう。
上図は検証に使用したB550マザーボード(ASRock「B550M Steel Legend」)とRyzen PRO 4750Gを組み合わせ、CPUに近い側のM.2スロットにPCI Express Gen4に対応したCorsair製M.2 SSD「Force MP600」を接続。「CrystalDiskMark」で読み書き速度を計測したところ、Gen3相当の速度しか出なかった。「CrystalDiskInfo」上でもGen4対応のSSDがGen3接続になっていることが読み取れる。
上の画像と同じ環境でCPUをRyzen 7 3700Xに、GPUをRadeon RX 560にした環境でCrystalDiskMarkを試したところ、ちゃんとForce MP600の性能が引き出せていた。PCI Express Gen4の性能が引き出せないのは、CPU由来の制限であることが確認できたわけだ。
ビデオカードに関しても検証してみた。上と同じRyzen 7 PRO 4750G環境にPCI Express Gen4に対応した「Radeon RX 5700」のリファレンスカードを装着。「GPU-Z」で接続状況を読み取ると、GPUはGen4対応だが接続はGen3であることが確認できた。
ただ注目すべきポイントとして、Ryzen 3000Gシリーズではビデオカードを接続してもx8接続でリンクしていたが、Ryzen PRO 4000Gシリーズはx16接続になっている。この点は進歩といえるだろう。
●対応チップセットはB550以降。ただし対応BIOSがあれば400シリーズでも動作可能
今回気をつけたいのがマザーボードの対応だ。AMDのSocket AM4は長期間使えることが強みとされているが、AM4ならずっと使えるという訳ではない、という話になってきた。Ryzen PRO 4000Gシリーズを含む4000番台の型番が付くCPUやAPUは、X570やB550といった新世代のチップセット環境での運用が推奨され、B450等の旧世代チップセット搭載マザーボードでの動作は対応BIOSが出ない限り利用不可、となっている。
今回のRyzen PRO 4000Gシリーズもマザーボードによって対応BIOSが出るものと出ないものに分かれており、Ryzen PRO 4000Gシリーズを使いたければ自分のマザーボードのBIOSを「AGESA Combo V2 1.0.0.2(表記はマザーメーカーにより微妙に異なる)」以降のものにアップデートしておく必要がある。
ただアップデートすると一部旧世代CPUが使えなくなるため、人によってはBIOSをアップデートしても確実にブートできるCPU(例えばAthlon 3000Gのようなもの)を確保する必要もあるだろう。
ちなみに、今回検証に用いたB550マザーボードでも、初期出荷BIOSはRyzen PRO 4000Gシリーズに正式対応しておらず、同シリーズで使うにはBIOS更新が必要となった。筆者が今回使用したB550マザーボードの場合、初期出荷BIOSでもRyzen PRO 4000Gシリーズは正常にブートさせられたが、CPUの型番が正しく認識されないなどの軽微な不具合があった。万全を期すなら対応BIOSへの更新が確認できたマザーボードを準備しておこう。
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