音楽を「音が苦」にしない好バランス機
まずは自宅PC机(横幅60cm)に設置。PCとUSB接続し、映画やハイレゾ音源を楽しむことにした。スピーカーから耳までの距離は50cm程度だ。
まず驚くのは「サイズを超えた低音」だ。適度に引き締まりながらも、量感十分。22インチのディスプレーで映画を観ると、画面と音声がピッタリマッチしているように感じる。試しに80インチのスクリーンで映画を見たが、それだと画面に音が負ける印象を受けた。自分は必要性を感じなかったが、アクション映画の場合は、足元にアクティブサブウーファーを設置すると、より楽しめることだろう。
どの映画を見ても、セリフなどが明瞭でありながら、ボディーや質量を感じる。高域がスムースに伸びているのだが、それをことさら強調せず耳なじみのよいバランスはお見事の一言。でありながら、リバーブなどエフェクトのかかり具合がわかりやすく、モニター的な聞き方もできる。この分解能の高さは驚異的だ。並のデスクトップモニターとは一線を画する。本当に8万円を切るプライスのパワードスピーカーなのかと耳を疑ってしまう。
さらに驚異的というより本領発揮するのがハイレゾ音源だ。一言で言い表すなら「音楽が音が苦」にならないところがこのスピーカーの美質。音楽の全体像をしっかり描きながら、明瞭闊達で陽性の鳴りっぷりは気持ちのよいもの。暖色系な音色は、どこかホッとさせるものがある。音量を上げていっても「やかましい!」と思わせないところも素敵だ。とはいえ、原寸大リアリズム再生はサイズゆえに無理で、スピーカーの間隔は1~1.5m位として、ミクロコスモスともいえる音世界に浸るのが幸せな使い方だろう。
Amazon Music HDのストリーミング・ハイレゾ音源をBGMに執筆をはじめたのだが、結局聴き惚れてしまい何度も手が止まってしまい仕事にならないほど。
わが国を代表するオーディオ雑誌「Stereo Sound」の視聴室で聴く機会を得たので、アナログ入力の音および通常リスニングも確認しよう。まずはオーディオファイルがスピーカーチェックでよく使う1枚、ロック史に残る名盤にしてイーグルス・サウンドの完成形である「ホテル・カリフォルニア」は、イントロの哀愁漂うメロディと幾重に重なるギターサウンドの美しさが魅力。低域チェックによく使われるAメロ前の2発の強烈なタムドラムを苦もなくクリアすると、ドン・ヘンリーの渋く深みのある声に耳を奪われた。楽曲最後を締めくくるフェルダーとウォルシュのツイン・リード・ギターは見事なプレイバック。この楽曲はJBLの4312系がピッタリだと思っていたのだが、A80の音もかなりイイ!
USB入力ではDSDの音質は楽しめないため、SACDプレーヤーでSACDによる高音質音源を体験することにした。Stereo Soundのリファレンスディスクから、ポップスを集めた傅 信幸氏選曲「Nobu's Popular Selection」に納められているTOTOの「ロザーナ」は、TOTOの優れた演奏はもちろんのこと、レコーディングエンジニアたちの卓越した技能や当時の最新デジタル技術が見事に融合していることを改めて感じるもの。もちろん聴いていてノリノリなのは言うまでもなく。
なるほど良いスピーカーだ。そして、音楽はもっと楽しめるということを改めて思い直した次第。これはPC内蔵スピーカーやチープなヘッドホンなどでは得られない再生悦楽だ。
色々とセッティングを試したが、スピーカーの間隔は1~1.5m位がベストな様子。原寸大のプレイバックが無理なのは最初から分かっているが、一方で大型スピーカーでは得られない音世界は一聴の価値アリだ。クラスを超えた、という言葉がピッタリの高品位サウンドは、さすがフィル・ジョーンズの手腕である。
試聴機を返却した夜、再びPC内蔵スピーカーを聴きながらの作業をしはじめたのだが、どうも作業が進まない。A80があった時は聴き惚れて手が止まっていたのに、今度は気分が乗らなくて手が止まる……(結局仕事をしてない)。それは恋人が部屋から去った寂しさにも似ていると共に、A80を本気で惚れてしまったことを感じた。