このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

ピュア・オーディオから進化した「ネット・オーディオ」が熱い!

2011年12月27日 12時00分更新

文● 折原一也

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 “ネット・オーディオ”が今、密かなブームだ。PCでのデジタルオーディオを常用するユーザーからすると、さまざまな意味で「何を今さら」と思うかもしれないが、今、ネット・オーディオに注目しているのは高音質を追求する、本家本流のピュア・オーディオのユーザーだ。

 数十万クラスの製品も当たり前というピュア・オーディオ用オーディオアンプ、ハイエンドCDプレーヤーといった、趣味のオーディオの世界の新潮流としてネット・オーディオが流行を始めているのだ。

ネット・オーディオの火付け役は「LINN」

「KLIMAX DS」

「KLIMAX DS」

 ブームのきっかけを作ったのは、イギリスの高級オーディオメーカーのLINN(リン)が2007年11月に発売した「KLIMAX DS」(294万円)を始めとする、ハイエンドネットワークプレーヤーの製品群だ。

 PCやNASとLANで接続して、可逆圧縮であるFLAC形式のオーディオをネットワーク経由で再生するもので、再生の操作は専用のPCソフトで行なうというコンセプトだった。

 現在ではDSシリーズと呼ばれることの多いLINNの製品群の思想は、ディスクによる回転や振動をネットワーク化によって排除した純デジタルのプレーヤーとして、高音質を探求するオーディオファンにも高評価を持って受け入れられた。

「AKURATE DS」

「AKURATE DS」

 その後、2008年2月に登場した「AKURATE DS」(89万2500円)、「SNEAKY MUSIC DS」(29万4000円)と、LINNはネットワークプレーヤーの裾野を広げていく。その後、ネットワークプレーヤーという製品ジャンルが確立され、オーディオメーカーが製品を投入するようになる。

 現在では、パイオニアやデノン、マランツ、オンキヨー、ヤマハといった国内外のオーディオメーカーのプレーヤー、AVアンプにも搭載されるようになり、まさにオーディオ製品のメインストリームとして確立しつつあるのだ。

「MediaWiz」(左)と「AVeL LinkPlayer」(右)

 PCユーザーの視点から見ると、現在に至るネット・オーディオブームはなかなか興味深いものがある。PCと連携して映像・音楽を再生するネットワークプレーヤーというコンセプトは、2003年頃からPC周辺機器の流行としてネットワークプレーヤーの「MediaWiz」(バーテックスリンク)や「AVeL LinkPlayer」(アイ・オー・データ機器)といった映像・音声対応製品が先行していた。

 また、ネット・オーディオの高音質ソースとして定着した圧縮音声のFLACフォーマットも、iPodの登場(2003年)を目前とした圧縮オーディオブームのなかで、MP3、Ogg Vorbisを始めとする不可逆圧縮フォーマットとともに話題の1つになったに過ぎず、現在のiPhoneに至るモバイルオーディオの本流からは外れていた。

 そこに、オーディオファンの視点から再注目したのがLINNだったのだ。LINNと言えば1972年創業の英国の高級オーディオメーカーで、デザイン性に優れた製品を投入し、インテリアとしても取り上げられることの多いハイエンドオーディオメーカーのなかでも優等生とも呼ぶべきブランドだった。

 決して、PC発のメーカーがハイエンドオーディオの世界に殴り込みをかけた訳ではない。むしろ、それまでPCテクノロジーとは無縁に近かったオーディオ出身のLINNが、オーディオの世界とは隔絶されていたPCのテクノロジーを取り入れ、オーディオファンに向けて作り込んだDSシリーズ、それが受け入れられたのがネット・オーディオブームのきっかけだったのだ。

ネットワークオーディオのシステム

NAS

バッファローの「LinkStation LS-VL」シリーズは、DTCP-IPに対応し、iTunesサーバー機能やプリントサーバーを内蔵するなど多機能なNAS。3TBモデルの「LS-V3.0TLJ」の直販価格は3万6800円

 ネット・オーディオを始めるには、難しいシステムは必要ない。用意するものは、

  1. ソースを再生するネットワークプレーヤー
  2. ソースを送り出すNAS(ネットワークストレージ)
  3. NASを接続できるホームネットワーク環境
  4. 音楽ファイルを準備・操作するPC

 の4つで、PCのユーザーには、PCで音楽CDから無圧縮/可逆圧縮でリッピングして音楽ファイルを家庭内LANのNASにコピーしておき、LAN経由でネットワークプレーヤーにアクセスして再生するシステム、と説明すればすぐに理解できるだろう。

 PC派のユーザーから見て、ネット・オーディオで異色に見えるのは「1.ソースを再生するネットワークプレーヤー」に高価なハイエンドの製品が多数ラインナップされていることだ。オーディオファンの立場からすると、ネットワークプレーヤーはHi-FiオーディオにおけるCDプレーヤーに相当し、高音質再生のためには投資対象になる。

 ネットワークプレーヤーはネットワーク上にあるオーディオソースにアクセスするためのLAN(ほとんどの場合は有線LAN)を搭載し、UPnP/DLNA1.5による音楽再生に対応しており、再生の操作は家庭内のほかの機器から行なう。

 再生可能な対応音楽フォーマットは、MP3/AAC/WMA/リニアPCMをほとんどの製品でカバーするほか、対応フォーマット、対応サンプリングレートは製品ごとに異なる。

 オーディオ機器としては、プリメインアンプを一体化してスピーカーに直結可能なタイプと、デジタル・アナログのオーディオ端子で外部のアンプなどに出力するというのが大きな区別になる。

 あとは、愛着のあるシステムでオーディオ用スピーカーを組み合わせ、CDプレーヤー以上の高音質を堪能できることがネット・オーディオの魅力なのだ。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中