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AMDが映像プロダクション向けPCを展開

「ルパン三世」シリーズのスタジオであるテレコムと、AMDが選定したアニメ制作用PCとは

2020年06月26日 11時00分更新

文● 高橋佑司/ASCII

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実際の制作現場の環境

――アニメ制作現場で使うPCに求められるスペックというのは、どれくらいになるのでしょうか。

森本氏:今回、クリエイターモデルとして提供させて頂くPCのスペックなのですが、グレードがウルトラハイエンド/ハイエンド/ミドル/ローエンドと分かれている中で、ミドルクラスであるRyzen 7 3700X、Radeon 5500 XT、メモリー64GBは、作画のところに提供させて頂いています。

 美術などでは3DCGも扱うので、Ryzen 9 3900X、Radeon RX 5700 XTというスペックになっています。PCの処理の重さ的に一番重いのは3DCGなのですが、作画の部分では重視される部分が少し違っていて、遅延がないか、入力にちゃんとついて来るか来ないかということを重視しています。

各PCのスペック
グレード ウルトラハイエンド ハイエンド ミドル ローエンド
用途 3DCG制作PC 3DCG制作PC 2DCG制作PC 販売用ローエンド
CPU Ryzen Threadripper 3970X
(32コア/64スレッド、 3.7~4.5GHz
Ryzen 9 3900X
(16コア/32スレッド、3.8~4.6GHz)
Ryzen 7 3700X
(8コア/16スレッド、3.6~4.4GHz)
Ryzen 5 3500
(6コア、3.6~4.1GHz)
グラフィックス Radeon RX 5700 XT
(玄人志向「RD RX5700XT E8GB/DF」)
Radeon RX 5500 XT(8GB)
メモリー 64GB以上 32GB以上 16GB以上 16GB以上
(最低8GB)
PCIe 4.0対応SSD 1TB以上 1TB 500GB

伊東氏:アニメスタジオのような制作現場は、なかなかすぐに機材を入れ替えるというのは難しく、以前の美術部は一番古いPCが9年前の機種で、Core i7-2600、GeForce GTX 550 Tiというスペックでした。新しい方でも5年くらい前のもので、Core i7-6700、GeForce GT 730、メモリー16GBというスペックになります。

 使っているソフトが工程によって違い、美術の場合は基本的にPhotoshopがメインで、後はModoという3Dソフトを使っていますが、そのあたりを使っての作業においては、以前のPCからの変化をスタッフにも感じて頂けているのではないかと思います。

 作画では3DCGのレンダリングとか、PCに計算をさせて出力に時間がかかるような作業はメインではなく、描いたら描いたものがそのまま作品になります。そのため、大事なのはレスポンス速度で、基本的には「紙でやっていたのと同じことをデジタルでやれる」というのが一番重要になってくる形ですね。

 デジタルに精通している人などは、3Dの空間で簡単なモデルを配置して構図を作り、それを画像にしてCLIP STUDIOに持ってきて清書する、というように、デジタルならではの使い方をする人もいますが、一番はやはり紙でやっていたことをPCでやってもストレスがない、というところが重要視されます。ブラシで描画した際に、紙と同じように遅延なくしっかりと入力が反映されるかとか、アニメの前のコマと次のコマを高速で切り替えて表示させたときに、ちゃんと切り替えられるかとか、レイヤー数を重ねた際にも処理落ちしないかとか、そういった部分ですね。

 アニメ制作において必要なスペックというのは、そういった「紙をいかに再現できるか」という部分で考えていくものになると思います。


――AMDさんは、実際に現場で使ってもらって、問題ないか意見を聞いてから機材を提供しているのでしょうか。

森本氏:従来使っていたPCのスペックとその問題点を聞いて、それを上回るようなスペックのPCで提案させて頂いています。


――今回、AMDさんからは何台のPCをご提供されたのですか。

森本氏:今回は美術スタッフさん全員分の14台です。なお、2年前には40台提供させて頂いております。

伊東氏:ちなみに、今はコロナの影響で全員在宅勤務になったため、提供頂いた社用のPCを自宅に送って作業している状況です。仕事で使用しているソフトはPhotoshopなどが中心なので、それぞれが個人で作業できるようになっています。


――やはり仕事用の機材に関しては、スペック的に会社にあったものをそのまま持って行くしかないということなのでしょうか。

伊東氏:そうですね。例えば新卒で入ったスタッフなどは、そこまでのスペックのPCやペンタブは買えないですし、会社と同じ作業環境でないと効率は落ちるので、やはり家に会社の機材を送る必要がありましたね。家に高いスペックのPCを持っている人は別ですが、それでも8割くらいのスタッフは送っています。主に作業で使うディスプレーや液晶タブレット、PC本体ですね。


――新しいPCによって作業効率的にどれくらい上がったなど、実感できたりすることはありますか。

伊東氏:具体的な数字ではなかなかわからないのですが、デジタル化したことによって、いちいち紙をスキャンしたりとか、そういう合間合間の細かい仕事がなくなっているという面では効率は上がったと思います。データのやり取りだけで済むようになって、人が動くところが減ったなという印象は受けます。

 デジタル化によってアニメの絵がこれだけ変わったとか、具体的に目に見える形での変化は少ないと思いますが、例えばカレーを作るときに、野菜の皮を今まで包丁で剥いていたものをピーラーで剥いたら、出来上がるのは同じカレーでも、そこにかかる労力は減りますよね。そういったイメージの変化だと思います。

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