第9世代のCore i9最上位も軽くヒネる性能を発揮!?
では早速パフォーマンスのチェックに入ろう。比較対象として、インテルのCore i9-9980HKを搭載した「MacBook Pro 16インチモデル」にBootCampでWindows 10を導入した環境を準備。だが前世代との比較も欲しいので、筆者が昨年レビューしたRyzen Mobile 3000シリーズ搭載ノートPC「FX505DY」のベンチマーク結果を引用して比較する。
「FX505DY-R5RX560」の主なスペック | |
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CPU | AMD「Ryzen 5 3550H」(4コア/8スレッド、2.1~3.7GHz) |
ディスプレイ | 15.6インチ(1920×1080ドット、ノングレア) |
メモリー | 8GB(DDR4-2400) |
グラフィック | Radeon RX 560X+Radeon Vega 8(CPU内蔵) |
ストレージ | 256GB(NVMe M.2 SSD、PCI Express 3.0 x2接続) |
インターフェース | HDMI×1、USB3.0×2、USB2.0×1、ギガビットLANほか |
無線機能 | IEEE802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth4.1 |
バッテリー駆動時間 | 約6.8時間 |
サイズ&重量 | 360mm(W)×262mm(D)×26.7mm(H) / 約2.2kg |
OS | Windows 10 Home 64bit |
MacBook Pro 16インチモデルに搭載されているCPUも8C16T、さらにGPUも「Radeon Pro 5500M」とBravo 15に非常に近いスペックになっている(厳密にはRadeon Pro 5500MのCU数はRX 5500Mより2基多い)ので、好敵手といってよいだろう。ただMacBook Pro 16インチモデルはスペックの割に薄型ボディーを採用している機種であるため、冷却力的にハンデを背負っていることも書き添えておきたい。
前世代(FX505DY)のベンチマーク結果については、検証環境やベンチマークのバージョンが完全に合わせられなかったので、あくまで参考程度に考えていただきたい。そして何より今回の検証機が開発機であることをメーカーより念押しされた上での検証であるため、実際の製品ではもっと性能が上がっている可能性がある。
では最初に基礎体力測定として「CINEBENCH R15」のスコアーをチェックしてみよう。
FX505DYに搭載されている先代Ryzen Mobile(Ryzen 5 3550H)が4C8T、そして今回のBravo 15に搭載されているRyzen 7 4800Hが8C16Tなので、Bravo 15のスコアーが高いのは当たり前だが、マルチスレッド時のスコアーは2倍以上、シングルスレッドでも28%アップと非常に良好な伸びを示している。L3キャッシュこそ少ないがZen2ベースの設計になったことで、パフォーマンスの劇的な向上が得られた。
そして同コア数対決となるMacBook Pro 16インチモデルと比較すると、Bravo 15がマルチ・シングルスレッドともに約22%上のスコアーを示した。前述の通りMacBook Pro 16インチモデルは薄型ボディー(16.2mm)にCore i9-9980HKを格納している関係上、温度リミットに達しやすいというハンデはある。しかしそれを鑑みても、Ryzen 4000シリーズ モバイルプロセッサーのパフォーマンス非常に魅力的だ。特にシングルスレッド時のスコアーが犠牲になっていないのが素晴らしい。
続いては総合ベンチマーク「PCMark10」を使用する。テストはデータ流用元のレビューに合わせ、全テストグループを実行する“Extended”テストを実施した。バージョンはBravo 15とMacBook Pro 16インチモデルが2.1.2177、FX505DYが2.0.2115となる。PCMark10のリリースノートを見るかぎり、この2つのバージョンであればスコアーに影響はないようだ。
まず全体のスコアーを比較すると、旧世代のRyzen Mobile搭載ノートPCに比べ約1.5倍のスコアーを出している。各テストグループも概ねFX505DYに比べ大きくスコアーを伸ばしているが、特にGamingテストグループのスコアー上昇率が高い。これはCPUの性能向上はもちろんだが、GPUの変更(RX 560X→RX 5500M)が一番効いていると思われる。
そしてインテルの第9世代Core i9-9980HKを搭載したMacBook Pro 16インチモデルに対しては、総合スコアーで約11%、DCC(Digital Contents Creation)やGamingテストグループでは18〜22%上回った。
GPUのスペック的にはMacBook Pro 16インチモデルの方がCU2基分だけ多いので、Gamingテストグループで負けると予想していたが、これは意外な結果だった。ただMacBook Pro 16インチモデルも負けっぱなしではなく、ProductivityテストグループではBravo 15を上回っている。
Essentialsテストグループでは特に“App-Start-up”、つまりアプリの起動時間テストのスコアーが激増(つまり起動時間は短縮)しているが、これはBravo 15のSSDがNVMe SSDである点が関係していると推察される(FX505DYはSATA、Bravo 15検証機のSSDはPCI Express Gen3 x4接続の一般的なもの)。
FireFoxを使った“Web browsing”でも、FX505DYと比べ1.2倍になっているので、CPUのパフォーマンスアップもEssentialsスコアーアップに大きく寄与しているようだ。MacBook Pro 16インチモデルの敗因は、主に“App Start-Up”での大敗にあり、他のテストでは2〜7%の差しかない。
LibreOfficeを使った表計算&文書作成時のパフォーマンスを見るProductivityテストグループも順当に伸ばしているが、Spreadsheetはほぼ頭打ちになっているのに対し、Writingが激増。これがProductivityテストグループのスコアーをブーストしていることがわかる。だがそれ以上にCore i9-9980HKが意外な頑張りを見せた。
WritingはBravo 15に負けたものの、SpreadsheetではBravo 15を大きく引き離した。このテストはクロック勝負的な側面があるため、ブーストクロックを瞬間的に最大5GHzまで伸ばせるCore i9-9980HKには非常に相性のよいテストなのだろう。
クリエイティブ系アプリ主体ゆえにCPUパワーがモノを言うDCC(Digital Contents Creation)テストグループでは、Ryzen 4000シリーズ モバイルプロセッサーの強みが最も色濃く出ている。特にPhoto EditingやRendering and Visualizationでは2倍近い伸びを示しているが、これはOpenCLやOpenGLを利用しているためで、CPUのパワーの他にGPUのパワーもスコアーの押し上げにひと役買っているようだ。
CPUのコア数が共通のMacBook Pro 16インチモデルとの対決では、終始Bravo 15のRyzen 7 4800H優勢のままでテストが終了。唯一Rendering and VisualizationテストでMacBook Pro 16インチモデルの肉薄を許しているが、写真および動画編集(Photo editing/Video editing)では14〜33%の大差をつけている。
Gamingテストグループは「3DMark」のFire Strikeテストをほぼ流用したもの。ゆえにPhysicsはCPUパワー勝負となる。コア数が倍なのだから、スコアーもほぼ倍と、非常に分かりやすい結果となった。
ここで面白いのは、GPUスペックとしては微妙に格上のRadeon Pro 5500Mを搭載したMacBook Pro 16インチモデルの方が、スコアーで下回っている点だ。Proを冠したクリエイター/GPGPU向けGPUだけに、ゲーム系グラフィックへのチューニングが甘いとか、冷却力が不足しているためCPUと綱引き状態になっているなどの原因が考えられる。