施設や現場を3D空間マッピング シリコンバレー発のVRベンチャー「3i」
「日本でもオープンイノベーション推進中 3D空間を把握するシリコンバレー有力ベンチャー『3i INSITE』の実力」レポート
2020年3月19日に予定されていた、オールジャンルのXTechカンファレンス「JAPAN INNOVATION DAY 2020」が開催された。シリコンバレー発のVRベンチャー、3i.incのセッションでは、市販の360度カメラを用いた施設管理・現場調査のデジタル化ソリューション『3i INSITE』の特徴とオープンイノベーション事例が紹介された。
(「JAPAN INNOVATION DAY 2020」は新型コロナウイルスの感染予防に関する3月9日発表の政府のイベント自粛延長方針を受けまして、セッションを応募者への映像アーカイブ配信へ開催形態を変更いたしました。本セッションのレポート記事は3i.incより提供された動画から作成しています)
3i.incは、2017年に米国シリコンバレーで設立され、韓国・イスラエル、東京にオフィスをもつVRベンチャーだ。2017年に商業スペース向け没入型VRリアリティプラットフォームを開発、2018年は不動産向けにVR内覧のモバイルアプリ「VR HOME」をリリース。2019年の夏からは、大規模な商業施設や工場向けのファシリティマネジメントソリューション「3i INSITE」を提供し、2019年8月に開催されたNTTコミュニケーションズ主催の「NTT Communications OPEN INNOVATION PROGRAM」で最優秀賞を受賞している。
大企業の所有する施設は、オフィスビルや商業施設だけでなく、社会の基盤を支える発電所やダム、石油コンビナートなどもあり、これらの施設は、中に入るだけでも危険がともなう。こうした施設では、安全に安定稼働し続けるための管理や調査が不可欠だが、人による常時監視や頻繁な現地調査には時間と費用がかかる。また調査結果を写真や書類などに記録する既存の方法では、空間情報が十分に表現できず、調査員から工事事業者などの第三者へ正確に伝えにくい、といった課題がある。
もうひとつの課題として、少子高齢化により10年後にはファシリティマネージャーの50%が退任し、労働力の確保は今後厳しくなると予想されている。これらの課題解決のために、空間データやシステムの稼働状況をリアルタイムで収集し、3Dでビジュアル化して共有する仕組み、いわゆるデジタルツインが必要だ。
3i社が開発する「3i INSITE」は、ファシリティマネジメントのための次世代空間データプラットフォーム。市販の360度カメラとスマホアプリを用いることで、低コストかつ、容易に導入できるのが特徴だ。既存のシステムとの連携や、現場のワークフローに合わせたカスタマイズにも対応する。
「3i INSITE」は、iOS対応の3Dキャプチャーアプリ「3i INSITE App」と、撮影した施設データを一元管化するマネジメントシステム「3i INSITE Web」で構成される。
「3i INSITE App」は、市販の360度カメラを操作して3D空間を撮影し、GPSと連動して図面マップ上に保存する。キャプチャー動画には、写真やテキストメモのタグ情報の追加も可能だ。撮影したデータをアップロードすれば、社内外のチームメンバーとリアルタイムで施設の空間情報を共有して、迅速に工事の割り当てや進捗の報告ができる。
「3i INSITE Web」は、所有する全施設をひとつの地図上にマッピングし、現場に関するすべてのドキュメントを整理して1画面で確認するシステムだ。関連する施設情報、担当事業者の情報を管理する既存システムとの連動が可能。そのほか、キャプチャー画像上で施設内の距離、天井高、扉や機器のサイズの計測、現場のビフォー&アフター映像の比較、といった機能を備える。
国内外にデータセンターを所有する企業の導入事例では、現場ごとにかかる調査時間が約500時間短縮、報連相にかかる時間が30%削減、出張関連費が年間100万円節約できたという。
また韓国の半導体工場では、セキュリティーが厳しく、急なトラブルが発生しても即日の現地調査が難しかったが、3Dデジタルツイン化でリモート対応できるようになった、といった報告が得られた、とのこと。
現在は、データセンター、通信会社、建設業、製造業、エネルギー産業、損害保険、セキュリティーといった多様な企業との商談が進行中だ。世界中の施設からの需要に対応できるように、中国深センのHW工場、ウズベキスタンにR&D、米テキサスとオランダに物流倉庫、フィリピンにCSセンターを設置して、体制を整えているそうだ。