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ASCII STARTUP イベントピックアップ 第74回

「第2回 メドテックグランプリ神戸」レポート

「涙で乳がん検知」が受賞 医療改革を目指す企業を育成するコンテスト

2020年04月28日 09時00分更新

文● 野々下裕子 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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高濃度乳房の検査も可能なマイクロ波マンモグラフィの開発
Field Theory 大鵬薬品賞

 乳がん検診の世界標準であるX線マンモグラフィ検査は、50歳以下の8割を占めるといわれる高濃度乳房において有効性がないことが指摘されている。Field Theoryは高濃度乳房の検査も可能なマイクロ波マンモグラフィの開発を世界で初めて成功させた。

 微弱な電磁波で、プローブでなでるだけなので痛みも無く、育児期間中でも検査が受けられ、ステージ0の癌も見つかる世界最高性能を備えている。現在は試作品を開発中で、2022年の薬事承認を目指している。さらに機器の開発とあわせて健診センターを立ち上げ、データの収集によって乳がんで命を落とす女性の数を少しでも減らすアイデアも提案していたことが評価され、大鵬薬品賞に選ばれた。

涙で乳がんを検知できるTearExo法
Team TearExo 最優秀賞/日本ユニシス賞/ロート賞

 涙で乳がんを検知できるTearExo法を開発。世界初の化学ナノ加工技術を用い、微量な涙液等からがんの有無を正確に判断できる指標となるがん細胞由来のエクソソームを超高感度で測定する。従来のバイオマーカーはがんと炎症の見分けがつかないが、TearExo法はがん細胞由来のエクソソームを破壊せずに高感度で高速に検出できるため、実現できればがんの早期発見につながる。知的財産も取得済みとのことだ。

 現在はモデル実施例として乳がん検知を行なっている。5種類のエクソソームセンシングチップ使って測定するが、ドライアイをチェックするのに使用する既製品のろ紙を使い、パターン認知で患者と健常者を判別する。他のがんにも応用可能で、将来的には自宅で検査できることなどを目指す。

 神戸大学大学院の工学研究科チームと医学研究科チームにより立ち上げられ、若いメンバーを中心に開発を進めており、臨床試験などを経て2022年度末頃に起業を予定している。高度な技術力が評価され、社会実装に期待が持てるという理由で、ユニシス賞を受賞し、涙の研究を手がけるロートからも賞を受賞している。審査員全員で決める最優秀賞も受賞しており、世界を目指せる技術だと評価された。

 コンテストでは会場参加者の投票による審査も実施し、1位にはTeam TearExoが選ばれ、2位はRAINBOW、3位はバイオチューブという結果となっていた。

 その他、最終審査に選ばれたのは以下の5社。

・世界初の自己組織化ナノシートDDSを用いた持続的薬剤徐放の実現/自己組織化ナノシートDDSプロジェクト(東京大学)
・AIで点眼状況を把握する点眼瓶センサー/株式会社シンクアウト
・ペプチドの化学合成による中分子創薬/株式会社Craftide
・核酸構造を標的とした医療技術の創出/GoodNuc
・薬剤耐性菌に対し抗菌性を持つ高分子ドレッシング材の開発/SISTech-Polymers(システック-ポリマーズ) )

 発表会終了後に審査員と参加者による懇親会も行なわれ、そこでも新たなビジネス連携の話が進んでいたようだ。

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