世界の首脳が集まる「ダボス会議」で日本の若者が感じたこととは?
「2020年ダボス会議報告会」レポート
横浜市・関内のベンチャー企業成長支援拠点「YOXO BOX」にて2020年2月24日に、ダボス会議の報告会イベント「2020年ダボス会議報告会・未来のGlobal Shaper発掘〜世界の最新アジェンダから学び、これからの日本について考える〜」 が開催された。報告会では、ダボス会議に参加したGlobal Shapers 横浜ハブの林 志洋氏が登壇し、現地のセッションで得られた学びやGlobal Shapers Communityの活動について語った。
ダボス会議は、世界経済フォーラムが毎年1月にスイスのダボス地区で開催している年次総会だ。2020年は1月20日~24日に開催され、世界各国の首脳や経営者ら約3000人が集まり、さまざまなテーマで議論が行なわれた。
Global Shapers Communityは世界経済フォーラムの国際組織で、世界150ヵ国に423拠点のハブがあり、約9700人の若者がメンバーとして活動している。
2020年のダボス会議にはGlobal Shapersから50名が参加。今回の報告会では、参加メンバーに選出された横浜ハブの林氏からセッションの内容や現地の雰囲気が紹介された。
ダボス会議では、世界中の政治家や経済界のリーダーだけでなく、さまざまなバックグラウンドの人が集まって対等に議論を交わす場だ。ニュースでよく見るのは、大統領や有名人が登壇してスピーチをする様子だが、実際は、首脳によるフォーマルな会議のほか、専門分野に特化した会議、4、5人だけのカジュアルな会議、ランチディスカッションなど、さまざまなセッションが用意されている。社会的な立場を問わず自由に発言できるのがダボス会議の特徴で、次世代を担う若者にも議論への発言権を与えるため、林氏を含むGlobal Shaperのほか、グレタ・トゥーンベリ氏ら10代の代表も招待され、率直な意見をぶつけていたそうだ。
林氏らGlobal Shapersのメンバーは、21日~24日の本会議に先立ち、17・18日はGlobal Shapersメンバー内でのプレ・ダボス会議、19・20日は現地でのオリエンテーションにも参加した。
プレ・ダボス会議では、気候非常事態宣言、テクノロジー・ガバナンス、グローバルヘルス―の3つのテーマでセッションを開催。林氏は、テクノロジー・ガバナンスに参加したところ、最初に大量の論文が配られ、10分間で目を通して各自まとめを報告し、そこから議論を展開する、というなかなかハードな内容だったようだ。
ちなみに、プログラム中に提供される食事は、ほとんどがベジタリアンだったそう。というのも、今回の大きなテーマである気候変動の原因として畜産の影響が指摘されているからだ。イベントの運営にもサスティナビリティが重視され、会期中はすべて自然エネルギーを使用し、ゴミの削減に取り組むなど徹底されている。
21日からのダボス会議は、The Congress Centerと Ice Villageの2つ会場で開催された。公式プログラムのほかに、スポンサー企業による非公式のプログラムや、ダボスの街で任意のブース出展など、多数のイベントが開かれる。
会期中は参加者同士で交流できるSNSがあり、プログラムに参加しているメンバーの一覧がその都度パネルに掲載され、気になる参加者にメッセージが送れる。林氏はガイ・ライダーILO事務局長にメッセージを送ったところ、すぐに返事がきたとのこと。
そのほか、早朝のヨガやスキー場でのミーティング、夜間に開かれる各国のレセプションパーティーなどのプログラムもあり、いろいろな人と知り合えるきっかけになっている。林氏もニュージーランドの環境大臣とのミーティングに誘われるなど、思いがけない出会いや経験が得られたそうだ。
最後に、林氏がダボス会議で印象に残ったこととして、3つを挙げた。
1つ目は、世界的に「Future of Work(未来の仕事のあり方)」への関心が高まっていること。技術の進歩によって人間に求められる仕事の内容が変わるため、働く大人に対しても新たなスキル教育が必要となっているそうだ。
2つ目は、経済的視点でもサスティナビリティを無視できなくなっていること。企業にとっては環境に配慮することが当たり前になっており、日本との温度差を感じたとのこと。
3つ目は、参加者の多くがメンタルヘルスの悩みに言及していたこと。特に、各業界のリーダーとして第一線で活躍しているほど、インポスター症候群に陥りやすいそうだ。「働き方改革」が求められているのは日本だけでなく、無理をせずに心身の疲れに正直になることも必要だろう、と締めくくった。