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国内初開催の「Cisco DevNetアイデアソン&ハッカソン 2020 東京」レポート

“ネットワークプログラミング”で価値をつくる体験を、シスコがハッカソン

2020年03月30日 07時00分更新

文● 谷崎朋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 コーディングできればネットワークの世界が広がる。“ネットワークエンジニア”から“ネットワークプログラマー”にステップアップして、新たな付加価値を提供するエンジニアになろう――。

 そう提案するシスコシステムズでは、これまでもサンプルコードやラーニングラボ、トレーニングといった学習機会を提供するオンラインサイト「DevNet DNA Developer Center」や、座学とハンズオンで“ネットワークプログラマビリティ”とは何かを学ぶオンサイトイベント「DevNet Express」などを開催し、同社コミュニティを盛り上げてきた。

 そして2020年2月24日、ネットワークプログラマーとしてのスキルや知識を評価する新たな認定資格「DevNet Associate」「DevNet Specialist」「DevNet Professional」(さらにDevNet Expertが近日追加予定)が満を持して公開された。その公開に先駆けて、2月13日と14日に都内で「Cisco DevNetアイデアソン&ハッカソン 2020 東京」が開催された。シスコ製品のAPIを使ってアイディアを形にする体験を通じて、ネットワークプログラミングの面白さを実感するイベントだ。

「Cisco DevNetアイデアソン&ハッカソン 2020 東京」会場の様子

現場エンジニアと学生が入り混じり、新しい価値を生み出す

 「国内では2016年3月から『DevNet Express』を開催してきたが、もう少し敷居を下げて、もっと多くの方にネットワークのナレッジから価値を生み出す体験をしてもらいたいと思った」。ハッカソン仕掛け人のひとり、シスコシステムズの生田和正氏はこう述べる。

 今回の参加者は、長年にわたり現場でネットワークと向き合ってきたエンジニアや、大学でネットワークについて学んでいる学生など51名。比率で言えば、現役エンジニアと学生が「7:3」といったところだ。

 年齢も経験もさまざまな参加者たちは、シスコ製品を使って何をやってみたいかアイディアを出し合い、ディスカッションを通じて33個のアイディアを10個に絞り込む。そのうえで、5名前後のチームにわかれて開発に挑んだ。成果は2日目の発表会でプレゼンを行い、上位3チームにはゲーミングノートPCやモニター、ウェアラブルヘルスケアデバイスなどが贈呈された。

アイデアソンでは33のテーマが集まった。ここから10個に絞り込む

 ハッカソンで使えるシスコ製品は、実質「すべて」だ。「DNA Center」や「IOS NetFlow」「Stealthwatch」、コラボレーション製品群といったテクノロジーがサンドボックスで提供されるほか、「Webex Teams」「Meraki」などのクラウドサービスも利用できる。

 だが、すべて使えるとは言っても、シスコ製品群は幅広く数も多い。参加者も戸惑ってしまうだろう。そこで「エンタープライズネットワーク」や「セキュリティ」「IoT&IPv6」「コラボレーション」など、各領域からシスコのエンジニア38名が参加し、参加者が自由に質問して助言を求められるルールとした。

 最終審査の基準は、創造性/アイディア、プロトタイプやデモの内容、実用性、プレゼンテーションやチームワーク力、複数の技術要素の組み合わせ。プレゼンおよびデモ時間は、質疑応答含めて10分。ギリギリまで調整を続けながら、10チームは成果発表に挑んだ。

プレゼン直前の最終確認!

笑いを誘うソリューションから新たなビジネスモデル提案まで

 ハッカソンの最終成果発表会では、10のアイディアにプラスαのユニークな工夫が盛り込まれた、楽しいソリューションが次々登場した。

 たとえばチーム「Webexバーチャルチャンネル」は、2Dイラストに立体表現を加える「Live2D」をWebex MeetingsやWebex Teams、Merakiなどと組み合わせ、ユーザーが好きなアバターでWeb会議に参加できるソリューションを発表した。Web会議で“顔出し”したくない、自室を映したくないといったニーズに加え、「将来的に相手のアバターも変えることができれば、怖い上司にもまっすぐ意見を言えるようになるかも」とメリットを力説。会場の笑いを誘った。

VTuberになればWeb会議も楽しい

 チーム「Uber Engineers」は、プロのエンジニアと技術者不足の企業をつなぐ「エンジニアマッチングサービス」を提案した。その仕組みは、Cisco DNA Centerで自動検知した機器の故障アラートを、WebHookでFlaskサーバーに通知。このサーバーがWebex Teamsに対応依頼のチケットを発行して多数のエンジニアに通知し、対応できるスキルを持つエンジニアが承諾。アサインが確認できたところで、機器のコンフィグなどより詳細な情報がエンジニアに送信される。「エンジニアはスキルを活かして稼ぐことができ、企業はエンジニア不足を解消、シスコはDevNet資格の需要が向上してDNA Centerも売上アップする」と、チームメンバーはメリットを熱く語った。

エンジニアマッチングサービス「Uber Engineers」

ハッカソン最終審査、上位3チームが発表したものは?

 ハッカソン最終審査の結果、次の3チームが上位に選ばれた。

【1位】THE KING OF SAND 【2位】わ☆ん☆お☆ぺ / One☆Ops 【3位】CIA

 THE KING OF SANDは、設定変更の検証から適用までのフローを自動化し、テスト駆動型の効率的なネットワーク運用を実現するシステムを開発した。具体的には、Cisco DNA Centerからネットワーク情報を収集し、ネットワークシミュレーションソフトウェア「Cisco VIRL」にその“クローン”を自動展開し、Ansibleで自動検証したうえで適用可能か否かの通知をCisco Teamsに投げるというもの。

THE KING OF SAND

 「コンフィグを本番環境に適用したら、うまくいかずにサービスで障害発生というのはよくあること。また、変更に関する承認作業が何度も発生する場合、業務効率も下がる」。自分もそんな経験をしたことがあると話すチームメンバーは、サービスが複雑化する現在、自動で環境を複製しながらオートテストする環境が最適解と考え、開発したと述べる。

 「ネットワークのDevOpsとCI/CDという重要な要素がうまく盛り込まれていて、とても興味深い成果と感じた」と、審査員のひとりでシスコシステムズ、アジア太平洋地域、ディスティングイッシュド システムエンジニアのアダム・ラダフォード氏は評価した。

設定のテストと適用の自動化を実現

 2位のわ☆ん☆お☆ぺ / One☆Opsは、ネットワークやデバイスを一元的に監視・管理できる、ワンオペ体制に優しい統合ビュー「Cisco Overview」を開発した。ネットワーク情報はDNA Centerから、デバイス情報はAMP for EndopointからそれぞれAPI経由で取得し、ダッシュボードに統合表示するというものだ。

わ☆ん☆お☆ぺ / One☆Ops

 ユニークなのは、エンジニアの知識レベルに応じてカスタマイズ可能という点。デモでは、レベル1「幼稚園児」のダッシュボードを紹介。右上には幼児が安心感を覚える、あんパンのヒーローが活躍する某アニメを流つつし、表記をすべてひらがなに統一。「たすけて」ボタンを押すと、Webex Teamsに「レベル1エンジニアからの丸投げです」というメッセージが投稿され、上位エンジニアにエスカレーションされる。

れべる1のだっしゅぼーど

 3位のCIAは「ストレスフリーのミーティング」をテーマに、Web会議の課題を解決するソリューションを提案した。

 CIAがWeb会議システムの課題として挙げたのは、目や耳が不自由だったり電車移動中だったりして音声が使えない場合には参加できないこと、異なる母語同士のミーティングが難しいこと、議事録作成が煩わしいこと。「本来のミーティング以外でストレッサーが存在するので、それを取り除こうと考えた」(チームメンバー)。

CIA

 実装したのは、音声とテキストの双方向他言語リアルタイムミーティングだ。CiscoのWebex MeetingsからIBM Cloudの「Watson Speech to Text」でテキスト化、さらに「Watson Language Translator」で翻訳を行い、その内容をWebex Teamsボットを通じて投稿する。これにより会話はほぼリアルタイムで文字起こし/翻訳され、さらに議事録もレポートとして自動送信することができる。

デモでは、リアルタイムの会話が若干のタイムラグで文字起こしされていた

 イベントを終えて、仕掛け人のひとりであるシスコシステムズの高田和夫氏はこう述べた。

 「前からハッカソンはやってみたいと考えており、デイヴ・ウェスト代表執行役員社長もコミュニティ醸成を加速させたいという思いがあり、今回の開催に至った。DevNet Expressは、DNAやコラボレーション、セキュリティなどアーキテクチャごとに分かれているが、ハッカソンはそうした垣根を跳び越えて、シスコのソリューションすべてを使い倒そうというのが面白い。多くの方が賛同し、参加してくれたことは大変嬉しい。今後もぜひ開催したい」(高田氏)

最後に参加者全員で集合写真!

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