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最新パーツ性能チェック 第289回

Ryzenの消費電力と発熱を抑える「Ecoモード」でRyzen 9 3950Xの性能はどう変わるか検証してみた

2020年04月08日 11時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ASCII

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上位CPUほど差が開く

 それでは第3世代Ryzenの定格とEcoモードで性能にどう影響があるか検証してみよう。今回の検証環境は以下の通りだ。

 検証に使ったCPUは3950X/3800X/3600Xの3種類。全てTDP95W以上なのでEcoモードにすると65W動作となるが、同じ65Wでどの程度差が出るのかに注目だ。前述の通りEcoモードはBIOS設定で有効化を行なっている。

検証環境
CPU AMD「Ryzen 9 3950X」
(16コア/32スレッド、3.5~4.7GHz)
AMD「Ryzen 7 3800X」
(8コア/16スレッド、3.9~4.5GHz)
AMD「Ryzen 5 3600X」
(6コア/12スレッド、3.8~4.4GHz)
マザーボード GIGABYTE「X570 AORUS MASTER」
(BIOS F11)
メモリー G.Skill「F4-3200C16D-16GTZRX」×2
(DDR4-3200、8GB×4)
ビデオカード NVIDIA「GeForce RTX 2080Ti Founders Edition」
ストレージ GIGABYTE「GP-ASM2NE6200TTTD」
(NVMe M.2 SSD、2TB)
電源ユニット Silverstone「ST85F-PT」
(850W、80PLUS Platinum)
CPUクーラー CRYORIG 「A80」
(簡易水冷、280mmラジエーター)
OS Windows10 Pro 64bit版
(November 2019 Update)

 最初に「CINEBENCH R20」のスコアーを比べてみよう。Ryzen Master上で確認できた通り、Ecoモードを有効にするとCPUの消費電力や発熱に関連するパラメーター(PPT/TDC/EDC)が引き下げられる。軽い処理ではこれらのしきい値に達する前に処理が終わるためクロックに影響はないが、重い処理ではしきい値に早く到達するため、クロックが抑えられる。この理屈が実際のベンチでどう変わるか見てみよう。

「CINEBENCH R20」のスコアー

 Ecoモードを有効にすると定格時よりもスコアーは下がるが、シングルよりもマルチスレッド時のスコアーの方が、さらにコア数の多いCPUの方が下落率が高い。特にRyzen 9 3950Xのマルチスレッドのスコアーは19%も低下している。ただシングルスレッドのスコアーはマルチに比して下がっていないことから、CPU全コアを一気に使うような作業ほどEcoモードが効くようだ。Ecoモードを有効にした後は、どのCPUも65W動作になるが、TDPが同じでもクロックやコア数が違うので性能差はしっかりと出るのが大きなポイントだ。

 続いて「blender」のレンダリング時間も検証しておこう。CINEBENCH R20よりも長時間コアに負荷をかけるため、CPUの電力制限のしきい値を超えやすくなることが予想できる。テストは「barbershop_interior_cpu」を1フレームだけレンダリングする時間を計測した。

「blender」のレンダリング時間

 定格とEcoモード時に明確な差がついたのはRyzen 9 3950Xのみ、3800Xと3600Xについては誤差程度といってよいが、傾向としてはCINEBENCH R20と同じだ。しかし、Ryzen 9 3950XのEcoモード時と定格時の比は、CINEBENCH R20のマルチスレッドスコアーの比よりも控えめだ。

 次にこのblenderテスト中にシステム全体の消費電力を計測してみる。計測にはラトックシステム「BT-WATTCH1」を使用した。アイドル時はシステム起動10分後の安定値、高負荷時はblenderテスト中のピーク値(この場合安定値との差は僅差)とした。

システム全体の消費電力

 ここでもRyzen 5 3600Xは定格時とEcoモード時の差はほとんど出ていないのに対し、Ryzen 9 3950Xは70W近く高負荷時の消費電力が低下している。そして定格のRyzen 7 3800Xの方がEcoモード時のRyzen 9 3950Xより消費電力で上回っている。3800Xの定格時TDPは105W、3950XのEcoモード時TDPは65Wなのだから当然だが、上位CPUであるほどEcoモードの効果が絶大であることがわかった。ただ3800Xでは微妙な差しかついておらず、95W→65Wに下がった3600Xでは変化していないので、実質のところ8コア以下のRyzenにおけるEcoモードは気休めにしかならない、とも言える。

 続いては総合性能を見る「PCMark10」のStandardテストで比較する。グラフには総合スコアーのほかに、テストグループ別のスコアーも併記した。

「PCMark10」のスコアー

 まず総合スコアートップはRyzen 9 3950Xの定格時なのは当然として、同EcoモードとRyzen 7 3800Xの定格/Ecoモードはほぼ横並びとなった。CPU負荷が比較的低めのテストで構成されたEssentialsでは3800Xが強かったが、CPU負荷の高いDCC(Digital Contents Creation)では3950XがEcoモードであっても高スコアーを出している。結果DCCのスコアーが3950Xの総合スコアーを上に引き上げている感じだ。Ecoモードであっても3950Xなら、定格動作の3800Xをも上回るというのはCINEBENCH R20等でも示されていたことだ。

 もうひとつ動画エンコード時の挙動も見てみよう。「Premiere Pro 2020」で編集した4K動画(再生時間は約3分半)を「Media Encoder 2020」でH.264で1パスエンコードさせる時間を比較する。ビットレートは 80Mbpsとした。

「Media Encoder 2020」によるエンコード時間

 このテストでは定格とEcoモードの差はほとんどないと言ってよい。Ryzen 9 3950Xではわずか14秒しか開いていないが、そもそもMedia Encoder 2020のH.264エンコーダーではRyzen 9 3950Xの一部のコアしか使っていないため、Ecoモードにしなくても電力制限のしきい値を超えにくくなっているのが原因と考えられる。

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