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ロケーションと専業へのこだわり、ビットアイル買収の意義などすべて語る

エクイニクス古田前社長と振り返る激動のデータセンター20年史

2020年02月12日 11時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

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ハイブリッドクラウドの時代、データセンターの役割は変わらない

大谷:さて、最後に今後のデータセンターの役割についてご意見を聞かせてください。

古田:まずはハイパースケーラーへの対応ですね。ひたすら規模を追求するハイパースケーラーの市場に向けて、データセンター市場は盛り上がっていますし、実際エクイニクスもやっています。

エクイニクスの「TY5」。内装はグローバルで統一されている

あと、日本ではあまり大きなニュースになっていませんが、PacketというARMのベアメタルホスティングの会社を買収したので、エクイニクスもホスティングに踏み込み始めつつあります。だからデータセンターの専業か、兼業かというと、兼業農家にはなってきています。会社も変わってきていますね。

とはいえ、エクイニクスという立場としても、私個人の意見としても、今後はハイブリッドクラウドになると思います。結局はオンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドの共存。この比率がどうなるかが、それぞれの企業や組織で決まってくるだけの違いだと思います。

大谷:すべてのワークロードがパブリッククラウドになることはないというわけですね。

古田:先日話を聞いた大手外資系スマホメーカーは、これまでスマホのバックエンドの仕組みを作るために、AWSにかなりの料金を支払ってきましたが、結局クラウドテクノロジーを持っている会社を買って自前でクラウドを構築し、Azureまで入れて、今後Google Cloud導入も進める計画のようです。だから、AWS、Azure、Google Cloud、自社クラウドでそれぞれ1/4ずつバランスが最終ゴール。彼らとしては予想をつねに上回る需要があるので、そこをどうするかを見た結果だそうです。

個人的には「シンギュラリティ」みたいな劇的な技術の転換点って、これからも来ないと思うんですよ。5GやIoTだって、あくまで技術であって、漸次的な変化がずーっと続いていく気がするんです。だから、1つのテクノロジーで一喜一憂することが減ってますよね。

個人的には「シンギュラリティ」みたいな劇的な技術の転換点って、これからも来ないと思うんですよ(古田氏)

大谷:その分、記者は大変なわけですが(笑)。

古田:そうですね。今後、デジタルが増えることは間違いないけど、リアルが減ることにはならないと思います。やはりリアルありきのデジタル側だけど、自動運転1つとっても、鉄腕アトムのようなロボット1つとっても、リアルを実現するためのデジタルは膨大な規模と容量になります。これを実現するためのデータセンターの重要性は変わらないと思うし、われわれのデータセンターだって、地球儀的な視点で見ればある意味エッジかもしれません。

大谷:パブリッククラウドも、最近はエッジ領域に注力しつつある印象です。

古田:自動運転であればエッジは自動車だと思いますが、通信事業者からすればエッジは基地局かもしれません。汎用性のあるコンピューティングリソースをこうしたところに用意するのは意味あるかもしれません。

でも、3~5年くらいの用途が明確にならないと、意味ないと思います。理想的には多重化して拡張できる光ファイバのようなことができればいいのですが、なにせコンピューターは陳腐化しますからね。エッジコンピューティングはやはりアプリケーションに引きづられてしまう。だったら、データセンターのようなところでホスティングしておいて、必要に応じて増やしたり、減らしたりする方が合理的だと思います。

大谷:ありがとうございました。10年間、本当におつかれさまでした!

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