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リアル店舗主導で新たな顧客体験を生み出すパルコのDX戦略と、ウェブやECのこれからの役割

パルコ×BiNDup対談

特集
働き方、DX、オープンイノベーション……BiNDup特別対談2020

提供: デジタルステージ

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これからは接客のデータ化が不可欠に。ブランドが主役の売場づくりとその可能性。

──消費者の店内行動データの取得と活用について、どのように取り組まれていますか?

林:オムニチャネル化の取り組みの中で、ウェブ接客のプラットフォーム構築を2013年から3年間かけて行いました。従来はお客様の購買行動、つまり、どのショップで購入されたのかはハウスカードの決済データ等で把握できるのですが、その前後にどのように行動されているかは、実はわかりませんでした。

 その後、店舗とデジタルをつなぐカギとして、2014年秋にスマホ公式アプリ「POCKET PARCO」をリリースし、ID化されたお客様について、来店前・来店中・来店後までを通して理解できるようになりました。ショップブログを見たあとのお気に入り登録、来店時のアプリでのチェックイン、店内を500歩歩いていただくとコインと呼ばれるポイントを付与する歩数カウント、接客と購入後のアンケートによるサービス評価という流れです。サービス評価は5段階の星とコメントをつけていただきますが、再度来店いただけるのは、やはり星5つの方が多い。でも大切なのは、評価が低い方のコメントを見て、接客改善に活かすことです。

 最近、渋谷PARCOで実現したのは一部のショップに導入した「電子レシート」サービスです。購入時にスマホで「POCKET PARCO」のバーコードを提示いただくと、レシートのコピーがアプリで閲覧できるしくみです。アプリに電子化されたレシートがたまるので財布の中がスマートになるお客様のメリットがあります。パルコ側では、店頭で何を購入したのかを把握できるようになりました。

 このようなデータが蓄積されてくると、お客様が次に何が欲しいのかを予測し、レコメンドできるようになります。今後のアプリの改修計画では、ショップ単位でのレコメンドに加えて、商品単位でのレコメンドの実装を予定しています。お客様にとっても、ショップにとってもメリットのある「三方良し」のしくみになると期待しています。

熊崎:パルコの一連の取り組みをお聞きして、買い物体験を通して生み出される「ブランド」の大切さを再認識しました。楽天市場は「店舗」が、アマゾンは「商品」が主役という点が大きな違いですが、もうひとつ「ブランド」が主役という在り方ですね。

 アマゾンのような商品単位での検索や表示では、ブランドイメージを訴求する場所がありません。リアルの店舗でも、ひとつのスペースにさまざまな商品が陳列されているケースが多く、空間的な制約、接客の時間的な制約もあります。

 実はリアルの店舗もオンラインの店舗も、ブランドのコンセプトやメッセージを明確に伝えることが、かなりおざなりになっています。このような情報にこそ興味があって、購買意欲につながる人も多いはずです。背景情報を知ることで、顧客体験や満足度、購入後の愛着なども大きく変わってきます。

 このような点に着目すると、ECもまだまだ進化するはずです。ギフトやプレゼントは特にそうで、贈る人と贈られる人、2人分のストーリーがあるんですね。ブランドイメージをきちんと訴求することが、ストーリーに厚みをもたせます。アマゾンが高級食品販売チェーンのホールフーズを買収したり、リアル店舗を出店したりしているのも、まさに「リアル」でしかできないことを探っているからです。

 単なるセールでは消費者は動かないようになっています。いかに効率的にモノが買えるかではなく、手にするまでの体験のエンターテインメント性が問われる時代になるでしょう。これは、先ほどの「ブランドが主役」という話にも通じていて、そのアイテムを持っていると生活の質が上がる、その服を着ると気分が高まるという感覚は、ブランドへの理解があればこそです。

デジタル時代ならではの集客と、充実したショッピング体験の提供。

──ここまでは「接客」を中心に伺ってきました。「集客」という面での取り組みや、今後の展望をお聞かせいただけますか。

林:ご来店いただくきっかけとして欠かせないのは、やはりSNSです。今回の渋谷PARCOのグランドオープンにおいてもテレビ番組等で「新しくなったんだ」「こういうショップが入ったんだ」と知っていただけた事も大切ですが、テレビで見た情報を広げてもらえるのもSNSです。

 渋谷のように、駅近くに新しいビルがたくさん立ち、商業施設ができている中で、駅から少し離れている渋谷PARCOに足を運んでもらえるムーブメントをどう作るか。ここにしかない唯一無二の体験を提供し、価値を見出してもらうことが大切だと思っています。

 店頭においても、今までは、平面でデジタル化したデータを見てもらうことが中心でしたが、スマートフォンの機能が向上するとともに、今後はスマートグラスのようなメガネ型のデバイスがどんどん進化し、3DやアーティスティックなVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)のしかけが店舗での体験として一般的になってくると予想されます。

 ショップの中にMRを取り入れることで、その人に最適なブランド表現や商品レコメンドが可能になるでしょう。現在のスマホのサービスでいえば、ARで経路をナビゲートしたり、位置情報と連携したゲームアプリのように何かに出会える、ECや動画配信サービスのようにユーザーの嗜好をとらえてレコメンドするといった体験の拡充が、今後商業施設内でも可能になると考えられます。

 このような構想を、パルコではデジタルショッピングセンタープラットフォーム「PARCO as a Service」(PaaS)と名付けています。これから5Gの時代になり、リアル店舗でもデジタル化の流れはますます加速していくでしょう。

熊崎:プラットフォームという意味では、BiNDupはCMSというプラットフォームなのですが、Google マップの埋め込みやブログ機能、EC機能を備えています。本格的なECサイトを作るためのEC-CUBEやShopifyとのAPI連携も可能です。ホームページは、単なる静的なページの集合体ではなく、アプリとしての役割も求められるようになっていますので、そのようなニーズにこたえる機能を拡充しています。

 またエンタープライズ版では独自の予約システムも提供しています。大手のフィットネス事業やスクール事業で、ワントゥーワンの接客が必要なケースで非常に役立っているという声をいただいています。BiNDupをさまざまなサービスと連携しやすくすることで、インターネットやテクノロジーに詳しくない方でも、存分に力を発揮できることを目指しています。

 私たちがCMSを開発していてよかったと思うのが、デジタルサイネージやアプリ、ユーザーインターフェイスの多くが、表示のしくみとしてはHTMLをブラウザで読み込むのと変わらないことです。キャッシュを利用することで表示や操作の軽快さを確保できるようにもなっています。CMSでアウトプットするHTMLが、パソコンやスマホに縛られず、リアルな世界へと広がっています。

BiNDupを導入している法人事例

HTMLなどの知識が要らず、自社でのサイト運用を可能にする「BiNDup」は、スモールビジネスだけでなく、大きな組織やエンタープライズからも支持されている。実際にBiNDupで作成された秀逸なホームページを紹介する。

店舗サイトの例:CARDIO BARRE(カーディオバー)

 アパレル、フィットネス事業を手がける株式会社ベイクルーズが運営。ロサンゼルスを中心に人気を誇るバーエクササイズの店舗サイトを、BiNDupで構築している。各店舗(自由が丘店、渋谷店、新宿店)やクラスごとの予約を一元管理するために、独自に開発した予約システムも導入。 インストラクターの紹介、価格表、よくある質問などがわかりやすく、潜在顧客が魅力的に感じる工夫がなされている。また、体験申し込みや入会申し込みのボタンをすべてのページに配置するなど、コンバージョンが高まるサイト設計の好例である。

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