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AWS初心者もコミュニティ初心者もアウトプット初心者も集まれ!

JAWS-UG初心者支部のLT大会は多彩で気楽に楽しめる

2020年01月15日 10時00分更新

文● 重森大 編集●大谷イビサ

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 AWS re:Invent 2019直後の2019年12月18日に開催されたJAWS-UG 初心者支部は、すでに21回目。前半はアマゾン ウェブ サービス 亀田 治伸さんによるre:Inventの振り返りだったが、後半はre:Inventを中心にしたLT大会。多種多様なLTをお届けしよう。

山崎さん、初心者支部の立ち上げから卒業までを語る

 JAWS-UG初心者支部で、「アウトプットのすすめ」という勉強会が開催された。さっそく実践ということで、次の勉強会はLT大会となった。筆者が取材したのが、そのLT大会の日だったという訳だ。JAWS-UGに限らず、コミュニティ活動の初心者は先輩達の軽妙なセッショントークを楽しみつつも、「自分には真似できない」と考えていると思う。しかしそんな先輩達も、かつてはアウトプットの初心者だったはず。アウトプットを重ねることで、話題選びや話し方のテクニックを磨いてきたのだ。今からでも、あなたにでも、真似できないはずはない。

 とはいえ、いきなり大舞台での登壇はやはり難しい。初心者が集まっている場所からスタートするのがいいだろう。その点、JAWS-UG初心者支部の存在は大変ありがたいと言えるだろう。ちなみに、この日初めてJAWS-UG勉強会に参加した人に挙手を求めたところ、3分の1程度の人が手を挙げた。話す方も初心者なら、聞いている方も初心者。気楽に、好きな話題でアウトプットにトライできる場がここにある。

 LT大会、最初の登壇者はJAWS-UG初心者支部を立ち上げた山崎 奈緒美さん。今ではJAWS-UG東京、AWS-HUB、JAWS-UG情シス支部、JAWS-UGアーキテクチャ専門支部など幅広い活動を展開している山崎さんにも、当然だが初心者の時代があった。

「関東には数多くの支部があります。地域で分かれている支部だけではなく、専門分野に特化した支部もあります。いずれもテクニカルな話題が多いので、初心者がついて行けないこともあります。そこで、こんな支部があったらいいなと自分で考えた支部を、自分で立ち上げてみました」(山崎さん)

JAWS-UG初心者支部を立ち上げた山崎 奈緒美さん

 こうして、「(運営)初心者による、(AWS)初心者のための、(JAWS-UG)初心者支部」がスタートした。山崎さんだけではなく、立ち上げに協力したメンバー全員がコミュニティ運営初心者。掲げたのは「いつかは初心者を卒業しよう」というテーマ。その言葉通り、手探りでコミュニティを立ち上げ運営を軌道に乗せた後は、次の世代に引き継ぎ、見守ってきた。今ではJAWS-UG初心者支部の運営メンバーも3代目にバトンタッチされ、新しいコミュニティリーダーが育ちつつある。

 何気ない仕組みだが、ここには初心者を次のステップに引き上げる大きな力が潜んでいる。JAWS-UG初心者は、支部運営初心者へ。運営チームは初心者を卒業してより専門性の高い支部へ。このサイクルが回らなければ、新しい初心者が入ってくることができないし、育って行く道筋も見えない。JAWS-UG初心者支部は初心者に広く門戸を開いているだけではなく、いつまでも初心者のままでいるのではなく、一歩、もう一歩と成長させてくれる支部なのだ。

 最後に山崎さんは「アウトプットしないのは知的な便秘」という有名な言葉を引用して、アウトプットしていくことの重要性を、念を押すように語った。

「アウトプットはブログなど体裁の整ったものに限りません。新しく学んだことをまわりの人にしゃべったりするだけでもいいんです。やりやすい方法でアウトプットを始めてみてください。インプットを得て、アウトプットして、そしていろいろな初心者から卒業して次のステップに進んでみてください」(山崎さん)

re:Invent関連3連発、楽しみ方はそれぞれだが結論はいっしょ、「来年行け!」

 休憩を挟んで後半は、怒濤の7本連続LT。まずはJAWS-HPC専門支部の小林 広志さん。「究極のアウトプット re:Invent登壇までの道のり」というタイトルでのLTだったが、re:Inventの話題はほとんどなし。あくまで、登壇までの道のりにフォーカスしたLTだった。

「私がHPC on AWSを使い始めたのが2013年。2014年にはAWS Summit Tokyoで登壇して、大きな反響を得ました。それに気分をよくして2015年のCFD(流体解析)カンファレンスに意気揚々と乗り込んだところ、そんなの使えないという雰囲気になり凹みました」(小林さん)

JAWS-HPC専門支部 小林 広志さん

 そんな浮き沈みを短期間に経験した小林さんは、2016年にJAWS-HPC専門支部を設立。「HPC on AWSの良さを皆にわからせてやる、という意気込みでしたが、つまりは自分が好きなものを広めたかっただけ」と言うが、その行動力には学ぶべき部分が多くある。実際、JAWS-HPC専門支部設立の翌年、2017年から2019年まで、re:Inventで何らかの形で登壇しているのだから、しっかり実を結んでいる。アウトプットの先に、さらに行動が伴えばより大きな力になるという見本のような経歴だ。

 re:Inventの話題が続き、次のLTはみゅずさんの「英語が話せなくてもコミュ障でもなんとかなるre:Invent」。re:Inventの話題に入る前の自己紹介で「色々な人と話すのは好きなんだけど、得意じゃない」と語ったみゅずさん。懇親会などでも他の人の話を聞いているだけで、自分から話しかけて輪に入っていく自信がないとのことだが、このように登壇することで向こうから話しかけてくれるので、コミュニケーションに自信がない人ほど登壇するといいとアドバイス。

「コミュニケーションに自信がない私がアメリカに抱いていたイメージは、知らない人でも気さくに話しかけられまくるコミュニケーション大国でした。実際に買物中に話しかけられたりしましたが、数えるほどで、思い込んでいたほどではありませんでした。入国審査とホテルのチェックインが一番緊張したくらいです」(みゅずさん)

JAWS-UG初心者支部 みゅずさん

 ちなみにみゅずさんの英語力自己評価は、時間をかければドキュメントを読めるけれど、会話は無理な程度。次々に新単語が飛び交うテクニカルセッションは難しいけれど、マイペースにドキュメントを読みながら進められるワークショップは楽しめたそうだ。英語力に自信がなくてre:Invent参加に二の足を踏んでいる人は、ワークショップとイベント中心にスケジュールを組むといいかもしれない。

 さて、そんなre:Inventに、「英語なんかできなくてもいいから参加してみて」と呼びかけたのは、株式会社Timersの鈴木 一史さん。LTタイトルは、「AWS re:Inventに参加してよかった2つのこと」。

「正直、行く前は不安でした。セッション動画はあとからオンラインで見ることができるし、そもそも英語できないし、行く意味はないんじゃないかと思っていましたが、間違いでした」(鈴木さん)

Timersの鈴木 一史さん

 行かなくてもいいのではないかと思っていた鈴木さんが現地で実感した2つのポイントとは、トレンドを肌で感じられることと、re:Invent自体がイベントとして楽しいとことだった。サーバーサードエンジニアである鈴木さんは普段からAWSの技術情報にアンテナを張っているものの、どうしても自分が使うサービスにインプットが偏りがち。しかしre:Invent会場では大きなうねりとしてAWS全体のトレンドを肌で感じることができたという。

「イベントとしての楽しさも、現地と中継動画では全く違いました。3時間のキーノートを動画で見ていたら飽きると思いますが、現地ではじっくり楽しみながら見られます。re:Playも楽しかったですね。そもそもラスベガスという街全体が楽しいということもあります。カジノは大敗でしたが(笑)」(鈴木さん)

 英語ができれば10倍楽しいと思うけれど、英語ができなくても十分楽しめるから、行ける人は来年絶対行って欲しい、鈴木さんはそう締めくくった。

テクニカルな内容から社内勉強会のやり方まで多彩なLTが楽しい

 怒濤のre:Invent攻勢の後は、AWSの機能を紹介するLTが続いた。面白かったのは、迫 康晃さんの「Yahoo! HackDayで使ったAWSサービスについて」。11月末に日本語対応したばかりのAmazon Transcribeを始め、マルチメディア向け機能を組み合わせて簡単なビデオ編集アプリをWeb上に構築した経験を語ったものだ。

 Webアプリに動画を読み込ませると、そこで話されている言葉をテキストに書き起こしてくれる。その中から必要なテキストだけを選択すると、その部分だけをつなぎ合わせた動画を生成してくれる。ハッカソンで作ったものだから、じっくり作り込まれたものではなく、UIも簡素。とはいえ、週末だけで動画編集アプリができてしまうということ自体がすごい。

迫 康晃さん

「Amazon TranscribeやAWS Elemental Media Convertの使いやすさもありましたが、初めからAWS CodeBuildでデプロイを自動化しておいたのも開発時間短縮につながりました。ハッカソンではアイディアをその場で形にして、実際に動かしてまた改善するというサイクルを超高速で行なう必要があります。デプロイを自動化しておくと、このサイクルを高速で回せるようになります」(迫さん)

 その後は、佐藤 智樹さんがLambdaのデバッグ方法について語ったり、佐藤 雅樹さんが「ワンクリックでセキュリティを向上できるので、ぜひIAM Access Analyzerを使いましょう」と訴えたりと、テクニカルな情報が続いた。そしてトリを務めたのは、「一週間でAWS初心者にAWS資格を合格させた勉強会のやり方」というタイトルで登壇した平石 匠さんだ。社内でAWS関連のプロジェクトに携わっている平石さんは、エンジニアのスキル向上のため社内勉強会も開催している。LTではそこで得られた知見が語られた。

「勉強会のコツは、“教える”ことを手放すことです。アウトプットを重視し、アクティブラーニングの手法を取り入れます。たとえばS3について教えるとき、こちらから説明するのではなく、誰かにS3について知っていることを解説してもらいます。それを受けて、他の人補足してもらうようにしていけば、参加者が能動的に勉強会を進めてくれます」(平石さん)

平石 匠さん

 ここでもやはり、アウトプットが大切だという話に。しかしJAWS-UGの勉強会に出るくらいの人でもアウトプットは難しい。社内の勉強会で急に聞かれてもうまく話せない人はいるだろう。そういうときには、じれったさを我慢することが肝要だそうだ。ヒントを与えてみるなどして話し始めるのを待つ。何も出てこなかったとしてもホストがいきなり解説せず、他の参加者に答を求めるなど、あくまで参加者主体を貫く。そのほかにも勉強会の雰囲気作りや目的意識の共有など、アウトプットを有益なものにするためにはアウトプットしようとする側だけではなく、受け取る側の姿勢も大切だと考えさせられるLTだった。

 

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