歴代で一番嫌われたCEO
従業員から不満が噴出
加えて、Hurd氏の言動は従業員には「好ましくない」(巧緻な言い方)だったようだ。対外的にはともかく、社内に対しての言動はかなり粗暴なものだったそうで、さらにはコストカットと売上ノルマの上昇が課せられ、おまけに給料も増えなければボーナスも切り下げとあれば、それは従業員の感情が悪くなるのも無理はない。
HPは定期的に社内の従業員の生の声をまとめる“The Voice of the Workplace”というアンケートを実施しているが、Hurd氏辞任直前の結果では「同条件の仕事のオファーがあれば、すぐにでも(HPを辞めて)転職する」と考えている従業員の率が7割近かったという。さすがにこれはまずいと取締役会も考えたようだ。
おまけにNY Timesが、実はスパイ事件で社内のリーク犯探しを率先してやっていたのはHurd氏だった、という新事実を公表するなど、このままHurd氏にHPの舵取りを任せておくにはいろいろと「不都合」が噴出しまくった結果がこの解任につながった、というのが正確なところだろう。
そもそもHurd氏がこうした独裁に近い、自分の好き放題にやれた理由は?というと、やはりスパイ事件の影響が大きい。
スパイ事件の結果で、社外から取締役会会長を招くのはうまくいかないと判断されたことでHurd氏はCEOと会長の両方を兼任することになり、結果チェック機構が働かなかったという事情も大きい。
その意味では、暴走しかけていた(いや、既に暴走していたのかもしれないが)Hurd氏を止めるのに、今回の社内規約違反はちょうど適切なイベントだったのかもしれない。
余談ではあるが、Hurd氏就任前の時点で、歴代で一番嫌われていたCEOはCarly Fiorina氏であったが、当然ながらHurd氏就任後は、Hurd氏が最も嫌われた最悪なCEOとして認識された。
なにせ直属の部下が陰で“Mark Turd”(Turd:俗語で「糞ったれ」)と呼んでいたそうだから、推して知るべしというか、この話が2008年あたりからシリコンバレーで広く流布していたというあたり、最近中東に逃亡したどこぞの元CEOを連想しなくもない。
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