そもそもなぜノイズを消すのか?
ノイズキャンセリングヘッドフォンは、かけると周囲の音が「止む」感化を覚えます。その一方で、逆につーっと耳が詰まるような感覚を覚えたり、耳が疲れると感じる人もいるでしょう。
現在一般的なアクティブノイズキャンセリングは、周囲のノイズを打ち消す音を再生する方式になっています。都市をアクティブに移動し続ける人にとって、アクティブノイズキャンセリングは膨大なノイズを無効化し、結果として静かな空間を作り出します。
しかし実は静かに感じるだけで、耳への負担を強いている可能性がある。その結果、耳が詰まる、疲れる、と言う感覚を覚える人が出てくるというわけです。
ゼンハイザーの提案はノイズキャンセリングの「もう一歩、先。」だといいます。
ただ単にノイズキャンセリングが強力であれば良い、という競争に乗るのは、「音質ファースト」を追究するゼンハイザーのやることではありません。オーディオ体験をより高める際、音質を重視する。ノイズキャンセリングが強いと言うことは、それだけノイズを打ち消すためにヘッドフォンの限られたリソースを使っていることでもあるのです。
一方、必要十分な範囲でノイズが消せれば、それで十分。ゼンハイザーはノイズキャンセリング機能を「音楽を最適な音量で再生できるようにするため」に活用するという考え方は目から鱗でした。ヘッドフォンで音楽を聴くことに対して、世界保健機関も警鐘を鳴らしてきましたが、ノイズキャンセリングヘッドフォンによって大きな音にする必要がなくなるため、耳の健康にも有利になるというのです。
耳の健康を良い音で守る
さらにゼンハイザーのこだわりは続きます。良い音を作り出すことは、耳にとっても長期的な健康をもたらすと考えていました。
ドライバーを水平に保つことで、正しい波によって良い音が作り出されます。それができない製品は、チューニングなどでごまかしたり、製品の「味」ということで片付けようとする。しかしゼンハイザーはそうしたことをしないように音を作り出そうとしており、耳の健康を含め、良い音を聞き続けてもらいたい、という想いが詰まっていました。
メーカーによってさまざまな考え方があります。そして写真がそうであったように、今後はオーディオについても、アルゴリズムによるアシストによって体験が高まっていくことが考えられます。しかしそれが全て正解ではなく、アルゴリズムがなかった時代、アナログの技術で性能を実現してきたメーカーの製品に触れると、我々人間もまだまだアナログで情報を受け取る生物であることを再確認できそうです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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