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サイボウズデイズ大阪で聞いた目的ドリブンの業務改善

業務改善の前に立ちはだかる3つのハードルを越える

2019年12月27日 13時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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ハードル2:問題は分かってるけれど、解決策が実行できない

 第二のハードルは「問題は分かってるけれど、解決策が実行できない」というもの。

 やるべき問題はわかっていたが、解決策がないとか、解決策を実行できない、というのもあるあるだ。ひとりで悩んでいると、忙しい自分だけでは解決できないもの。問題を現場で可視化したら、次に必要なのは具体的な解決策だという。

「現実的に何をやったらいいのかという解決案が欲しい。それがなかなか出てこないと、どんどんテンションが下がってしまうんです。解決策探しで時間をかけるのはもったいないです。kintoneなら、ぱぱっと解決策を作れます」(高橋氏)

問題の可視化と、解決するための武器=kintoneを与えることが大事

 kintoneなら現場の人がマウス操作で業務アプリを作れるので、100社100通りの問題に合わせて、自分たちで解決策を形にできるようになる。業務システムはIT部門やシステム開発会社に頼まないとできないという前提が崩れるのだ。

 その成功例として、業務改善の基盤にkintoneを採用している神戸市役所の事例を紹介してくれた。神戸市役所はまず職員を集めてセミナーやハンズオンでkintoneを知ってもらった。そして、次のステップとして、どんなことに困っているのか、その業務がどう変わったらうれしいのか、を書き出してもらった。

 この結果をワークショップでシェアし、チームが選んだ課題の改善策をkintoneで作成するのだ。当然、1日がかりの作業となるが、こんなに手間をかけるのは、神戸市職員内部の業務改善の力を底上げしていきたいというのが理由だという。

セミナーで課題を洗い出した後、ワークショップで解決策を実際に作成してしまう

 現場が主体であることが重要だとはいえ、情シス部門の人に「現場なんて全然システムのことをわかってないのに、まかせていいの?」とか「じゃぁ、全部任せてしまえばいいんですか」と斜に構えられてしまうと困ってしまう。サイボウズが知っているいろんな成功事例の裏には、現場の方が主導で業務改善をしたことは確かだが、下支えとしてIT部門がサポートしてくれていることが多いそう。

「たとえば、IT部門の人でないと、マスターの重要性がわからないんです。リレーションとかがピンと来ない方もいらっしゃいます。そうすると、会社名や製品名をベタ打ちし始めてしまい、後で名寄せができなかったり、検索できなかったりします。株式会社がかっこになっていて、ダウンロードしたファイルをExcelで全部置換したりしなければなりません。そうならないように、IT部門には、マスターを作っておいた方がいいよとか。1個のデータベースになんでもかんでも入力するんじゃなくて、用途別に分けた方がわかりやすいよ、というように、技術的な部分でサポートしていただきたいです」(高橋氏)

ハードル3:成果が出ない。だから、業務改善が続かない

 第三のハードルは「成果が出ない。だから、業務改善が続かない」とのこと。業務改善はモグラ叩きのようなもので、1回のチャレンジで終わることはない。ある課題を潰せば、また別の課題が見えてくるはず。しかし、この作業の繰り返しは、成果が出ないと続けていくモチベーションは維持できない。

「kintoneの話をしていると、とりあえずスモールスタートしませんかというご提案をしてしまうことがあります。しかし、とりあえずやるというのは危険です。安易に手を出して、効果が出なかったとなると、周りから無駄なシステム投資をしたな、と思われてしまうんです」(高橋氏)

 「身近な例で想像してみてください」と高橋氏。体調が悪くなった時に、咳も出るし、背中も関節も痛いし、熱も出る。いろんな症状が出てくるが、咳止めと関節の薬などを全部買うことはない。それぞれ対処していたらきりがないので、最初にどの問題を対処すればいいのか、絞り込んでいく必要がある。普通は、熱が出ていることに対処するため、解熱剤を飲むだろう。しかし、本当にそれが解決なのか、と言われるとそうではないという。

 熱が出た原因を深掘りして調べる必要があるのだ。実は、体力が落ちていることが原因だったり、社内に風邪を引いている人がいるかもしれず、対処しないと何回でも問題が起きかねない。

問題を深掘りして、根本の原因を探ることが大切

 業務課題でも同様で、問題を見つけても安易に解決策にとびつかず、根本原因を探すことを優先すべきだという。

 京屋染物店の事例では、売り上げが伸びず、存続が危うくなっていた。営業とデザイン、染色、縫製の4部門すべてが頑張れば絶対売り上げが上がると考えたが、うまくいかなかった。営業は広告を打たせてくれといい、デザインはシステムを変えてくれといい、染色は工場を広げてくれと言う。

 みんな言っていることは正しい感じはするが、一旦、落ち着き、どこで問題が起きているか把握するため、プロセスごとにどれだけ在庫があるかをデータ化してみた。すると、明らかに縫製・検品のところでものすごい量の在庫が止っていることが判明した。そのため、縫製・検品の業務を改善し、うまくいったそう。この原因を探すためには、考え続けるしかない、と高橋氏。とにかく、分析し続けるしか策はないという。

課題を深掘りして根本原因を見つければ、効果的な対策が打てる

 最後に、2020年1月28日、サイボウズの大阪オフィスで開催されるワークショップの体験会が紹介された。実際に、2時間半かけて、業務改善の考え方や課題の深掘り、業務の棚卸しなどのやりかたを学べるという。

 筆者はさまざまな企業の取材を重ねているが、この3つのハードルはどこでも見かけるもの。キラキラした事例紹介では楽々とクリアしているが、多くの企業ではこのハードルに手を焼いているのだ。今回、多数の事例を見てきたサイボウズ側の高橋氏から、実践的で効果的なアドバイスをまとめて聞けたのは値千金だった。セッションの参加者は、業務効率改善というふわっとしたキーワードを、かっちり実現し、結果に繋げる気づきを得られたことだろう。

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