COMPAQの買収が
業績面で足を引っ張る
さて、なんとか製品ラインの統合に成功した同社ではあるが、業績はどうだったのか? と言うことでまずは売上と純利益をまとめたのが下表である。
HPの売上と純利益 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 総売上 | 純利益 | ||||
1998年 | 394億1900万ドル | 29億4500万ドル | ||||
1999年 | 423億7000万ドル | 34億9100万ドル | ||||
2000年 | 487億8200万ドル | 36億9700万ドル | ||||
2001年 | 452億2600万ドル | 14億3900万ドル | ||||
2002年 | 565億8800万ドル | -10億1200万ドル | ||||
2003年 | 730億6100万ドル | 25億3900万ドル | ||||
2004年 | 799億500万ドル | 34億9700万ドル | ||||
2005年 | 866億9600万ドル | 23億9800万ドル |
2002年に赤字に陥っているのは、COMPAQの買収費用(買収そのものは株式交換で行なわれたが、総額242億ドルの買収費用のうち、のれん代に相当する144億5000万ドルの一部の償却や、買収直後に行なわれたリストラ費用などが一時的にかさんだためである。
ちなみにこの数字で2001、2002年はCOMPAQの売上を加算していないが、2003年の年次報告には加算した場合の数字が挙がっており、下表となっている。要するにCOMPAQの台所が真っ赤っかだった、というわけだ。
2003年の年次報告 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 総売上 | 純利益 | ||||
2001年 | 811億500万ドル | -14億8100万ドル | ||||
2002年 | 723億4600万ドル | -9億2800万ドル |
これは部門別の決算を見るともっとはっきりする。下表は部門別の総売上で、Image and Printing Systemはそれこそプリンターとサプライ用品、それに上で挙げたIndigoのようなものも含む。
部門別の総売上 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | Image and Prinnting System | IT Services/HP Services | Computer System | Personal System Group | ESG/ESS | |
1998年 | 167億900万ドル | 56億8500万ドル | 173億1500万ドル | |||
1999年 | 185億5000万ドル | 62億5500万ドル | 178億1400万ドル | |||
2000年 | 204億7600万ドル | 71億2900万ドル | 210億9500万ドル | |||
2001年 | 194億4700万ドル | 75億9900万ドル | 177億7100万ドル | |||
2002年 | 203億2600万ドル | 90億1000万ドル | 218億9500万ドル | 111億4600万ドル | ||
2003年 | 226億2300万ドル | 123億500万ドル | 212億2800万ドル | 153億7900万ドル | ||
2004年 | 241億9900万ドル | 137億7800万ドル | 246億2200万ドル | 145億9300万ドル | ||
2005年 | 251億5500万ドル | 155億3600万ドル | 267億4100万ドル | 167億100万ドル |
次がIT Services/HP Services(2001年に改編)で、先に触れたLivermore氏が率いている部隊である。
3つ目が、2002年まではComputer Systemで一塊にされていたが、2003年からコンシューマー向けのPersonal System Groupと、エンタープライズ向けのESG(Enterprise Systems Group)/ESS(Enterprise Storage and Services)に分離された。
なお、2002年度の売上を合算すると数字が上表と合わないのは、この時点でCOMPAQ由来のものも合算しているからで、その意味では先に示した723億4600万ドルのほうが正しいともいえる。
さて、売上だけみるとPersonal Computer Groupが一番大きく、これにImage and Printing Systemが続き、HP Services/ESSがこれに続くという感じで、一見バランスの良い売上のポートフォリオに見える。
ところが利益は? ということで、営業利益(部門別純利益は開示されていないため)をまとめたのが下表である。
部門別の営業利益 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | Image and Prinnting System | IT Services/HP Services | Computer System | Personal System Group | ESG/ESS | |
1998年 | 20億4300万ドル | 7億4800万ドル | 4億8000万ドル | |||
1999年 | 23億3500万ドル | 5億7500万ドル | 8億5000万ドル | |||
2000年 | 27億4600万ドル | 6億3400万ドル | 9億6000万ドル | |||
2001年 | 19億8700万ドル | 3億4200万ドル | -4億5000万ドル | |||
2002年 | 32億4800万ドル | 8億9100万ドル | -3億7200万ドル | -6億5600万ドル | ||
2003年 | 35億7000万ドル | 13億7200万ドル | 1900万ドル | -5400万ドル | ||
2004年 | 38億4700万ドル | 12億6300万ドル | 2億1000万ドル | 1億4200万ドル | ||
2005年 | 34億1300万ドル | 11億5100万ドル | 6億5700万ドル | 8億1000万ドル |
一番稼いでいるのがImage and Printing Systemで、HP全体の営業利益の半分以上(6割ほど)をたたき出しているのがわかる。
これに続くのがHP Servicesで、金額そのものはImage and Printing Systemにまだおよばないものの、利益率そのものは決して悪くない。
問題はPersonal Systems GroupやESSで、2005年度になると多少改善している(ただしこの時にはもうFiorina氏はいない)が、2002~2003年は完全にお荷物であり、2004年も褒められた数字ではない。
営業利益率が1%かそこらしかない、というのはビジネスとして成立していないと判断されても仕方がなく、そうなるとCOMPAQ買収を主導したFiorina氏の風当たりが強くなるのは致し方ないだろう。
そもそもCOMPAQ買収の際、COMPAQの株主は満場一致で買収を承認したが、HPは大株主が反対に回った。具体的には2人の創業者の息子であるWalter Hewlett氏とDavid W. Packard氏、さらにはCalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)やオンタリオ州教師年金計画委員会などが反対に回っている。
創業者の息子はともかくCalPERSとオンタリオ州教師年金計画委員会は年金の運用を行なっている組織であり、結果として経営陣との間で委任状争奪戦が始まった。
最終的には僅差で経営陣の主張する合併が承認されたわけだが、反対派は当然この後も経営陣に厳しい目を向けることになる。そして反対派の主張した「PC事業は利益率が低く、リスクも高い」を地で行くような決算結果が出ていれば、それは辞任させられても仕方がないところではあるだろう。(続く)
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