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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第542回

Indigoを買収してデジタル印刷ビジネスに参入したHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年12月23日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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COMPAQの買収が
業績面で足を引っ張る

 さて、なんとか製品ラインの統合に成功した同社ではあるが、業績はどうだったのか? と言うことでまずは売上と純利益をまとめたのが下表である。

HPの売上と純利益
年度 総売上 純利益
1998年 394億1900万ドル 29億4500万ドル
1999年 423億7000万ドル 34億9100万ドル
2000年 487億8200万ドル 36億9700万ドル
2001年 452億2600万ドル 14億3900万ドル
2002年 565億8800万ドル -10億1200万ドル
2003年 730億6100万ドル 25億3900万ドル
2004年 799億500万ドル 34億9700万ドル
2005年 866億9600万ドル 23億9800万ドル

 2002年に赤字に陥っているのは、COMPAQの買収費用(買収そのものは株式交換で行なわれたが、総額242億ドルの買収費用のうち、のれん代に相当する144億5000万ドルの一部の償却や、買収直後に行なわれたリストラ費用などが一時的にかさんだためである。

 ちなみにこの数字で2001、2002年はCOMPAQの売上を加算していないが、2003年の年次報告には加算した場合の数字が挙がっており、下表となっている。要するにCOMPAQの台所が真っ赤っかだった、というわけだ。

2003年の年次報告
年度 総売上 純利益
2001年 811億500万ドル -14億8100万ドル
2002年 723億4600万ドル -9億2800万ドル

 これは部門別の決算を見るともっとはっきりする。下表は部門別の総売上で、Image and Printing Systemはそれこそプリンターとサプライ用品、それに上で挙げたIndigoのようなものも含む。

部門別の総売上
年度 Image and Prinnting System IT Services/HP Services Computer System Personal System Group ESG/ESS
1998年 167億900万ドル 56億8500万ドル 173億1500万ドル    
1999年 185億5000万ドル 62億5500万ドル 178億1400万ドル    
2000年 204億7600万ドル 71億2900万ドル 210億9500万ドル    
2001年 194億4700万ドル 75億9900万ドル 177億7100万ドル    
2002年 203億2600万ドル 90億1000万ドル   218億9500万ドル 111億4600万ドル
2003年 226億2300万ドル 123億500万ドル   212億2800万ドル 153億7900万ドル
2004年 241億9900万ドル 137億7800万ドル   246億2200万ドル 145億9300万ドル
2005年 251億5500万ドル 155億3600万ドル   267億4100万ドル 167億100万ドル

 次がIT Services/HP Services(2001年に改編)で、先に触れたLivermore氏が率いている部隊である。

 3つ目が、2002年まではComputer Systemで一塊にされていたが、2003年からコンシューマー向けのPersonal System Groupと、エンタープライズ向けのESG(Enterprise Systems Group)/ESS(Enterprise Storage and Services)に分離された。

 なお、2002年度の売上を合算すると数字が上表と合わないのは、この時点でCOMPAQ由来のものも合算しているからで、その意味では先に示した723億4600万ドルのほうが正しいともいえる。

 さて、売上だけみるとPersonal Computer Groupが一番大きく、これにImage and Printing Systemが続き、HP Services/ESSがこれに続くという感じで、一見バランスの良い売上のポートフォリオに見える。

 ところが利益は? ということで、営業利益(部門別純利益は開示されていないため)をまとめたのが下表である。

部門別の営業利益
年度 Image and Prinnting System IT Services/HP Services Computer System Personal System Group ESG/ESS
1998年 20億4300万ドル 7億4800万ドル 4億8000万ドル    
1999年 23億3500万ドル 5億7500万ドル 8億5000万ドル    
2000年 27億4600万ドル 6億3400万ドル 9億6000万ドル    
2001年 19億8700万ドル 3億4200万ドル -4億5000万ドル    
2002年 32億4800万ドル 8億9100万ドル   -3億7200万ドル -6億5600万ドル
2003年 35億7000万ドル 13億7200万ドル   1900万ドル -5400万ドル
2004年 38億4700万ドル 12億6300万ドル   2億1000万ドル 1億4200万ドル
2005年 34億1300万ドル 11億5100万ドル   6億5700万ドル 8億1000万ドル

 一番稼いでいるのがImage and Printing Systemで、HP全体の営業利益の半分以上(6割ほど)をたたき出しているのがわかる。

 これに続くのがHP Servicesで、金額そのものはImage and Printing Systemにまだおよばないものの、利益率そのものは決して悪くない。

 問題はPersonal Systems GroupやESSで、2005年度になると多少改善している(ただしこの時にはもうFiorina氏はいない)が、2002~2003年は完全にお荷物であり、2004年も褒められた数字ではない。

 営業利益率が1%かそこらしかない、というのはビジネスとして成立していないと判断されても仕方がなく、そうなるとCOMPAQ買収を主導したFiorina氏の風当たりが強くなるのは致し方ないだろう。

 そもそもCOMPAQ買収の際、COMPAQの株主は満場一致で買収を承認したが、HPは大株主が反対に回った。具体的には2人の創業者の息子であるWalter Hewlett氏とDavid W. Packard氏、さらにはCalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)やオンタリオ州教師年金計画委員会などが反対に回っている。

 創業者の息子はともかくCalPERSとオンタリオ州教師年金計画委員会は年金の運用を行なっている組織であり、結果として経営陣との間で委任状争奪戦が始まった。

 最終的には僅差で経営陣の主張する合併が承認されたわけだが、反対派は当然この後も経営陣に厳しい目を向けることになる。そして反対派の主張した「PC事業は利益率が低く、リスクも高い」を地で行くような決算結果が出ていれば、それは辞任させられても仕方がないところではあるだろう。(続く)

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