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GreenLakeマーケティング担当幹部に聞く、ハードウェアベンダーから「アズ・ア・サービス企業」へ

HPEの転身戦略、GreenLakeは「MSにとってのAzureのようなもの」

2019年12月17日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 米Hewlett Packard Enterprise(HPE)が「アズ・ア・サービス(as-a-Service)戦略」を進めている。その中心となるのは2年前に発表した「HPE GreenLake」で、最大のマーケティング予算を割いて認知を広げているという。今月初旬にはハイブリッドIT環境の統合ポータル「HPE GreenLake Central」も発表している。

 この分野では米Dell Technologiesも同様の戦略を発表しているが、HPEはどこが違うのか? パートナー戦略はどう進めるのか? こうした点について、HPE GreenLakeマーケティング担当バイスプレジデントのフリン・マロイ氏に聞いた。

HPE GreenLakeマーケティング担当VPのフリン・マロイ(Flynn Maloy)氏

――今回、新たにGreenLake Centralを発表しました。どのような位置付けの製品になるのでしょうか?

新たに発表された「HPE GreenLake Central」。ハイブリッドなITリソースを一元管理できるポータルだ

マロイ氏:HPEでは、オンプレミスのアズ・ア・サービスを7年以上前から展開している。現在CEOを務めるアントニオ・ネリ(Antonio Neri)がサービス事業を率いていたころに、「HPE Flexible Capacity」というサービス名でスタートした。

 Flexible Capacityを通じてコンピュート、ストレージを「使った分だけ支払う」従量課金モデルを提供したところ、顧客から非常に好評だった。そこで、サービス領域を拡大することにした。Cloud CruiserやCTPを買収し、これらの企業が持つメータリング(使用量の計測)や管理の技術を組み合わせた。そして2年前に「HPE GreenLake」というブランドにリニューアルした。

 GreenLakeは順調に成長しており、現在では30億ドルのビジネスにまで成長している。マーケティングでは最大の予算をもらっている。目指すのは、ITにおけるコカコーラのように認知されること。ITはHPEがケアしてくれる、というブランド認知を広めたい。

 GreenLake Centralは、GreenLake顧客向けのセルフサービスポータルだ。たとえば現在、顧客はストレージやコンピュートを使った分だけ支払うが、何か変更したいときはHPEの顧客担当に伝えなければならない。これが顧客自身でできるようになる。Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureはポイント&クリックでできるが、この体験を実現する。

――ただし、ハードウェアビジネスからサービスビジネスへのシフトは簡単ではありません。

マロイ氏:そのとおりだ。HPEにとっては大きな変化になる。創業来ハードウェア中心の企業だったが、アズ・ア・サービス企業へのシフトを進めている。(CEOの)アントニオ・ネリはビジョナリーであり、「2022年にすべてをアズ・ア・サービスとしても提供する」と約束している。

 こうした転身は珍しいものではないはずだ。たとえば、Adobeは6年前にパッケージソフト販売からライセンス販売に切り替えたし、MicrosoftはAzureブランドでクラウド企業への変化を遂げつつある。HPEにとって、GreenLakeはAzureのようなもの(新しい方向性を示すブランド)とも言える。

 ただし、AdobeもMicrosoftもソフトウェア企業からサービス企業への転身だが、われわれはハードウェア企業だ。ハードウェアからどうやってアズ・ア・サービス企業になるのか、ここは前例がないと言ってよい。われわれはどうやるのかを「発明」してきた。

――「すべてをアズ・ア・サービス化する」2022年に向けて、GreenLakeはどのように拡大していく計画でしょうか。

マロイ氏:現在はまだ、売上のほとんどがコンピュートやストレージといったインフラ(アズ・ア・サービス)だ。バックアップ、Hadoop、SAP、データベースなどのワークロード(アズ・ア・サービス)についても、売上はまだ少ないが急成長している。

 将来はアウトカム、ワークロードにフォーカスする。GreenLake Centralはそれを支援するものとなり、(提供するワークロードの)分野を拡大できるだろう。まだたくさんのワークロードがエッジにある。たとえば、6カ月前に「HPE GreenLake for Aruba」を発表したが、まだ基本的なインフラレベルであってエッジのワークロードではない。

――GreenLakeでのチャネルパートナーとの関係は?

マロイ氏:顧客だけでなく、チャネルパートナーもアズ・ア・サービスへのシフトについて理解しなければならない。これまでとはプロセスやマネジメントが異なるため簡単ではない。たとえば営業をどのように評価するのか、顧客との関係はどうなるのかーー。

 HPEではパートナー向けにトレーニングを行っている。すでに500社以上のパートナーにトレーニングをしたが、ここではGreenLakeよりも新しい考え方を伝えることに時間を割いている。文化を変えることは最大の障害だからだ。

 変わりたいと思っているパートナーは、シフトを理解してGreenLakeを積極的に進めているが、保守的なところがあるのも事実だ。

――日本のパートナーの反応は?

マロイ氏:わたし自身日本に住んでいたことがあり、「ITは保守的」と聞いていたが、GreenLakeは日本の顧客に受け入れられている。これはうれしい驚きだった。日本のGreenLakeチームはHPE社内のアワードも受賞している。

 AWSやAzureにすべてを置きたくないという顧客が多いのも、GreenLakeの受け入れにつながっているのだろう。パブリッククラウドに対しては保守的な日本のITカルチャーに、GreenLakeはフィットしているようだ。

――新しいパートナーへの拡大はどうでしょう。たとえば、クラウドに強みを持つパートナーなどは。

マロイ氏:業界すべてで変化する必要があるので、まずは既存のパートナーからアプローチしている。HPEのハードウェア売上の75~80%がパートナー経由だ。パートナーが健全な状態で事業を継続していることは、われわれにとって重要だ。

 もちろん、クラウド時代に生まれた新しい企業の中にも、GreenLakeを扱いたいという企業が増えている。パブリッククラウドを得意としてきたが、顧客の中にはパブリッククラウドにすべてを起きたくないというニーズもある。そこでHPEと協業したいと考えているようだ。

――Dell Technologiesも先に同様のサービス戦略を発表しました。

マロイ氏:Dellはまだ、アズ・ア・サービスを「リース」や「ファイナンス」のみと考えているように見える。高度なメータリング技術はないようだ。

 われわれはAWSと同じ感覚をGreenLakeで実現する。HPEが顧客のオンプレミス環境にテクノロジーを配置し、統合作業をしたうえで稼働させ、キャパシティ管理も行う。顧客自身はアップデートや最適化の作業をしなくてよい。こうした考え方をDellなどの競合はまだ理解しておらず、オンプレミスでクラウド体験を提供できていない。今回のGreenLake Centralで提供する「ポイント&クリック体験」によって、HPEは数年分のリードを確保した。

――“アズ・ア・サービス時代”に、HPEの競合優位性はどこになるのですか?

マロイ氏:アズ・ア・サービスの時代になっても、ソフトウェアはハードウェアなしには動かない。技術は必要だ。すべてがパブリッククラウドに行くのではなく、オンプレミスとオフプレミスの両方でバランスをとることになる。

 HPEのハードウェアビジネスは横ばいだ。それでも大きな事業規模であり、これをなくそうとは思っていない。ただ、顧客は次第にハードウェアを意識しなくなるだろう。3PARなのか、Nimbleなのかといった細かな技術の差違よりも、そこからのアウトカムを気にするようになるだろう。

 そこでは体験が重要になる。簡単、シンプル、柔軟性があり、高速。優れていない技術はサービスとして提供しない。技術の先の体験を考える必要があり、勝者は最高の体験を提供できるところになる。パフォーマンス重視なら、われわれはHPCを持っている。スケールアップが必要ならそれも提供できる。顧客が必要なものを調整して届けることが、最高の体験の提供につながる。

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