よく走る
2歳児くんの保護者をしています盛田諒ですこんにちは。子は最近おむつをパンツにはきかえてトイレのお稽古をしています。子が一人でトイレをして水を流せた10月20日は「トイレ記念日」として国民の祝日にすべきではないでしょうか。
子に一人でできることが増えていく一方、親であるわたし自身は共働き育児について何かと一人で抱えてしまうことが多くて困ったものです。わたしにとって助けを求めることはかなりの力がいるのですよね。本当に困っているときほど助けが呼べず、ただ嵐が過ぎるのを待つばかり。困りごとの話をするときメディアは「SOSを出して」など簡単に言ってくれますが、人に助けを求めるのはわたしにとって人を助けるのと同じくらい勇気がいるものなのです。
先日、仕事に向かおうとする足が進まなくなったのは子が誕生1000日を迎えた11月半ばのこと。腕は上がらず目は死んで、「早くあのメール返さなきゃな」などとつぶやくゾンビと化しました。当日の夜、ぶっ倒れるように早めに寝させてもらってどうにか快復しましたが、振り返ってみればなんということはない、仕事で忙しい時期に育児が重なって疲労したというだけの話です。傍からすればなんでゾンビ化するまで放置してたのかって話なんですけどね。
●助けが呼べない4つの理由
せっかくこうして言語化してるんですからゾンビ化する前の自分にインタビューして理由をきいてみることにしましょうか。ええと盛田さん?なぜあなたは助けを呼ばなかったんですか?
1.助けを求めるレベルなのかわからない
2.誰に何と言ったらいいのかわからない
3.頼むことを考えるだけでも面倒くさい
4.そもそも疲れていて何も考えられない
ははあなるほど、これはご自愛不全症ですね。生まれもった気質や生育環境などなんらかの理由で自己愛の過不足を抱えた人がかかりやすい疾患です。ご存知ないですか?そうでしょう、今わたしが適当に作った病気ですから。
お医者さんごっこはよしますが、実際不調を伝えるのは難しいことありませんか。お医者さんから「カゼです」みたいに「過労です」と診断されれば「じゃあ漢方飲んで寝よ」となりますが、「なんか最近疲れるようになった」というだけでお医者さんにかかろうとは思えないものです。うつのように思いあたる病名が出ないうちは、専門家に意見を求めるふんぎりがつきません。
そうすると次に考えることも同じで、「最近すぐ疲れるようになった」というところから助けを求めると言っても「誰に?」「何を?」「どうやって?」がまったくわかりません。妻や知り合いに話しても「三十路だからね」「わかるわ〜疲れてやせるかと思ったけど逆に太ったよね」とか言って終わり。まあそんな深刻に考える話じゃないかもなあと、スルーしてしまうわけです。
こうして初期症状といえる段階を通りすぎて、まあ週末まではなんとか体力がもつだろうと「だろう労働」を続けていくうち、腕を上げるほどの力もなくなり、人として形状を保つのがむずかしいという段階に。そのときにはもう人としてのパフォーマンスが低下してしまっており、相談することを考えるだけでつらい、しんどい、無理、と語彙力が下がってゾンビ化するわけです。
●知恵と勇気でご自愛を
というわけでわたしにとって、過労等で困っている自分を客観視して、困った状況から脱け出すため、適当な相手を探し、自分なりのSOSを出すというのは相当むつかしい作業なのですが、問題は底つきともいうべき地獄のような危機的状況に陥ったとき、わたし本人ではなく子が危ないことです。ゾンビはいつ凶暴化して子に噛みついてしまうかわからないわけですからね。
先日、朝日新聞の取材を受けたとき、共働き親はワーク・ライフ・バランスが逆転して「ワーク・ライフ・過労」になるかもなんていう恐ろしいことを書かれてましたが、過労がある種の依存につながり、子どもを巻き込む事故や虐待の引き金となってしまうことはじゅうぶん想像できます。子どもの権利条約をもちだすまでもなく、子の安全を最優先にどうにかしたい話です。
先日、電車で「風邪をひいても絶対休めないあなたへ」という風邪薬の広告を見かけて真顔になりましたが、もしかしたらわたし以外にも、ご自愛不全症をわずらっていて、しんどいときも泣きついたりサボったりできないという人はいるかもしれません。みなさま、知恵と勇気をもってご自愛していきましょう。そのご自愛がかならず子のためになると信じて……盛田諒でした。
(11月22日の連載は休みました)
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。2歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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