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日本ユニシスと日本マイクロソフトの“BankVision on Azure”正式採用

北國銀行が勘定系Azure移行決定、「地域のデジタル化」貢献も視野に

2019年11月22日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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「世界でもなかなか類を見ないプロジェクト」実現に向けて協議を重ねる

 日本ユニシスの取締役常務執行役員の葛谷幸司氏、日本マイクロソフト 執行役員常務 サービス事業本部長の内田聡氏はそれぞれ、BankVision on Azureを推進する市場背景や、北國銀行の正式採用決定に至るまでの両社の取り組みを紹介した。

日本ユニシスの取締役常務執行役員の葛谷幸司氏

日本マイクロソフト 執行役員常務 サービス事業本部長の内田聡氏

 日本ユニシスの葛谷氏はまず、BankVisionの歴史を説明した。2003年、銀行の勘定系システムをWindows Server+SQL Server環境で稼働させることを目標にスタートしたBankVisionプロジェクトは、2007年度に物理サーバー基盤を使った商用サービスを開始。さらに、2018年度からは仮想環境版のBankVisionも提供を開始している。そして今回発表されたとおり、2021年度にはBankVision on Azureが本番稼働を開始することになる。

勘定系システム「BankVision」モダナイゼーションの歴史

 この10年以上に及ぶBankVisionの開発過程においては、常に日本マイクロソフトおよびマイクロソフト本社と協議を重ねてきたという。

 「銀行の勘定系システムを動かすためには、非常に高いSLAを達成しなければならない。これまでのBankVisionの開発においても、マイクロソフト本社の技術者と議論を重ね、たとえばWindowsやSQL Serverにさまざまな機能を組み入れていただいた経緯がある。今回もAzureの採用に当たっては、技術面の課題やサポート面の課題などを協議しながら開発を進めてきた」(日本ユニシス 葛谷氏)

 また日本マイクロソフトの内田氏も、フルバンキングシステムのクラウド化は「日本では初めて、世界でもなかなか類を見ないプロジェクト」だと語った。金融機関が求める高度な要件をクリアするために、可用性、セキュリティ、信頼性などさまざまな課題について議論を重ね、国内200名体制の金融専任チームや米本社側のAzureエンジニアリングチームのフルサポートも受けながら、そうした課題をクリアしてきたと明かした。

米マイクロソフト Microsoft Solutions Corporate VPのコーリー・サンダース氏。「北國銀行と協力することで銀行業務の“新しいやり方”を展開できる。今回の取り組みにとてもエキサイトしている」

 なお今回の発表において、具体的なSLAの数値やシステム冗長化の手法などは明らかにされていない。内田氏は「あまり詳しくはお話しできないが」と前置きしながら、顧客である北國銀行、日本ユニシスと協議を重ね、「費用対効果およびSLAの観点からベストだと考えられる選択をした」とだけ説明している。

 また内田氏は、Azureではコンプライアンス/監査対応の側面で、金融機関向けの特別対応を実施していることも紹介した。一般ユーザー企業向けの対応内容に加えて、金融機関の場合は顧客自身での監査権を持つほか、当局検査への対応も行う。さらに有償プログラムとして、年次サミットやコミュニティへの参加を通じた個別の提言、マイクロソフト技術部門担当者への直接アクセス、情報開示要求への個別対応なども提供するという。

Microsoft Azureの金融機関向け特徴。日本マイクロソフトでは200名規模の支援体制を敷いている

 日本ユニシスの葛谷氏は、BankVisionの既存ユーザーである他の地銀に対してもプロジェクトの状況は報告しており、今後各行のサービス契約更改の時期に合わせて、Azure版を採用するかどうかを選択していくことになると述べた。ただし、単なるコスト削減にとどまらないクラウド化の価値については顧客も理解しており、クラウド移行が加速していく方向感はあるという。

 「この5、6年で、(地銀の)経営者の意識は相当変わってきたと思う。クラウドを利用することのメリット、たとえばSaaSやPaaSのサービスを組み合わせられること、特にデータ活用におけるAIサービスの有用性など、理解もすごく進んでいる。まだ『本当にクラウドで大丈夫か』という意識や契約時期の都合もあるが、これから(クラウド採用が)どんどん加速していくという方向感は間違いないと考えている」(日本ユニシス 葛谷氏)

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