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新たに提供開始した「Box Shield」で金融や政府/自治体市場も狙う

「Boxは日本企業特有のニーズにも対応」Box Japan古市社長に聞く

2019年11月15日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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日本市場における独自の取り組み、カスタマイズも積極的に行う

――SaaSの利用促進において、日本企業の課題をどのように見ていますか。

古市:米国のユーザー企業では「複数のSaaSを使いこなすのが当たり前」という状況になっており、それによって生産性を高めることができています。一方で日本の企業では、SaaSの使いこなしがまだ“発展途上”にあるというのが正直な感想です。オンプレミスのほうがいいという企業、単一のSaaS利用で満足してしまっている企業もあります。複数のSaaSを使いこなすことで、どんな成果が生まれるのかにチャレンジしてもらいたいと思っています。

 もちろん、そのハードルは高いことも理解していますので、Box Japanはそこをしっかりとサポートする体制も整えています。たとえばSlack JapanやZoom Japan、日本マイクロソフト、セールスフォース・ドットコム日本法人などと、緊密な連携関係を築いています。こうした企業とのエコシステム構築も、日本企業における利用を加速するための基盤になると考えています。

 ちなみにBoxは現在、グローバルで1400社と連携しており、日本でも150社との連携があります。こうしたエコシステムを通じて、顧客企業に複数のSaaSを活用するメリットを提供できます。

――「SaaSの利活用」「コンテンツプラットフォームに対する姿勢」などは理解できますが、米国本社が発信するメッセージをそのまま日本市場に伝えても、日本企業には響きにくい部分があるのではないでしょうか。

古市:たしかにそれは感じますね。ただし日本企業の一部でも、こうした姿勢や動向を理解して、先進的な取り組みを行う動きは見られます。

 Box Japanでは、2019年2月から「Boxコミュニティ」をスタートさせました。単なるユーザーコミュニティではなく、まだBoxを利用したことがないお客様もおよそ半数を占める広範なコミュニティで、感度の高い方が集まって、Boxを使えばどんなことができるのかを情報交換されています。こうした場を通じてBoxのメリットを多くの方に理解していただき、さらに「先行ユーザーがいるのならば安心できる」と感じていただき、それを日本におけるBoxのモメンタムにつなげていきたいと考えています。

――日本市場における独自の取り組みとしてはどんなものがあるのでしょう。

古市:日本企業の方々にBoxの良さを理解していただくために、サイボウズの「kintone(キントーン)」やデジタルアーツの「FinalCode」といった日本発のアプリケーションとの連携、さらには複合機やプリンタとの連携も行っています。

 実は、複合機との連携は米国では例がなく、日本企業のニーズに合わせて日本独自で用意したものです。日本企業にはまだまだたくさんの「紙」があり、一方で多数の複合機も導入されていますから、紙媒体をデジタル化するツールとして複合機を活用し、簡単な操作でBoxの中に取り込むソリューションを構成しました。さらに、コンビニにある複合機から、Boxで管理しているコンテンツをセキュアにプリントアウトすることも可能です。これも日本固有の使い方ですね。

 また認証機能においても、クラウドサイン(CloudSign)やシヤチハタといった日本企業との連携を進めています。シヤチハタとの連携では、Boxに保存したコンテンツに認証のための「印影」を押すソリューションを提供しています。これも日本市場のニーズに応えるためのサービスですね。

 Boxは(グローバルで)スタンダードなサービスとの連携を基本スタンスとしていますが、やはり「日本市場ではこの機能がないと使えない、使いにくい」というケースもあります。そうしたニーズに対応するために、特定の機能をBoxに取り込むこともあります。

 たとえば、Boxを特定の場所からのみ使えるようにする「IPアドレス制限」は、元々は提供されていなかった機能ですが、「どうしてもその機能が欲しい」という日本のお客様のニーズが多かったため、われわれから本社にかけあいました。本社側は当初、「あらゆる場所から利用できるのがBoxのメリットであり、その意図がまったく理解できない」と言っていましたが(笑)、現在ではオプション機能として提供しています。

 Boxが公開しているAPIは使いやすく、テストモジュールなどもサイトで提供していますから、これらを利用して日本の開発パートナーが、日本のお客様特有のカスタマイズニーズに応えることもできます。これが約150社の国内連携パートナーという結果につながっており、日本におけるビジネスの重要なポイントになっています。

 一方で、こうした取り組みを通じて、日本発のグローバルベンダーを支援することにもつなげたいですね。Boxとの連携によってグローバル市場に打って出る、そんなパートナーを日本法人として支援していきたいと考えています。

 SaaS市場では米国や中国のベンダーが先行していますが、今後はIoT連携、AI活用といったものがますます重視されるようになり、ここは日本のベンダーが得意とする領域でもあります。そこでわれわれが何かお手伝いできないか、ということも考えていきたいですね。

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