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技術もエモも豊作だった「JAWS FESTA 2019」 第2回

クラウドとコストの関係を問う亀田さんの基調講演

初の札幌開催となるJAWS FESTA 2019に来たぜ!

2019年11月02日 15時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 今年もJAWS FESTAの季節がやってきた! 好天に恵まれた2019年11月2日、北海道テレビ放送(HTB)の創世スクエアスタジオで開催された「JAWS FESTA 2019 SAPPORO」には、地元北海道はもちろん全国からクラウドユーザーが集まった。

北海道テレビ放送のエントランスではOnちゃんがお出迎え

融雪や農業ITのセッション、AWS DeepRacerも来た

 AWSのユーザーコミュニティであるJAWS-UGは、年に1度都内でJAWS DAYSという全国規模のイベントを行なっている。このJAWS DAYSの地方版とも言えるイベントがJAWS FESTAで、AWS re:Invent開催前のこの時期に開催されている。運営も地元のJAWS支部が担当し、JAWS DAYSより地元ユーザーの登壇が多い。地元ユーザーと全国のクラウドユーザーが交流し合える貴重な場ともなっている。

 JAWS FESTAは過去、大阪や仙台、福岡、名古屋、松山などで開催されてきたが、7回目となる今年はいよいよ北の大地にやってきた。会場となったのはJR札幌駅や大通り公園からもほど近い、創世スクエアスタジオの北海道テレビ放送(HTB)だ。当日は10時のスタートにあわせ、朝からスタッフが会場準備を進めていた。冒頭、挨拶に立った実行委員長の小倉大氏は、遠方含めて札幌に集まってきた参加者と会場提供してくれた北海道テレビ放送、スポンサーへの感謝を行ない、イベントを楽しんでくれるよう呼びかけた。

実行委員長の小倉大さん

 イベントでは午前中と午後に1本ずつの基調講演があり、3つのトラックで小規模なセッションも行なわれた。放送局ということで、基調講演はスタジオで行なわれ、各会場にサテライト配信された。また、AWS Summitで人気も高かったAWS DeepRacerのワークショップやハンズオンも開催されたほか、融雪や農業など地元課題に根ざしたセッションも多かった。開催直前にチケットは完売していたが、好天に恵まれ、会場には多くのクラウドユーザーが訪れた。

ソフトウェアが駆動するデジタライゼーションとクラウド

 基調講演に登壇したのはアマゾン ウェブ サービス ジャパン エバンジェリストの亀田治伸さん。「変わりゆく世界を支えるIT ~コストドライバーからプロフィットラインに向けて」というタイトルで、AWS初心者からベテランまでの幅広い層に向けたクラウドの価値をアピールした。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン エバンジェリスト 亀田治伸さん

 まずはクラウドのおさらい。固定資産だったITがサービス型に変革する中、「初期投資は不要」「低額の変動費」「使用分のみの支払い」といった特徴により、チャレンジを下支えするプラットフォームになるのがクラウドだ。コンピューティングを提供するAmazon EC2は約1.1円/時間で利用でき、この中にはデータセンターやインフラの構築、ハードウェア、電気代、セキュリティ、運用保守の費用まで含まれる。

 AWSは競合分析よりもユーザーの価値にフォーカスしており、ユーザーのフィードバックを得ながら、継続的にサービスを開発している。サービス数はすでに165以上にのぼり、年間(2018年)の機能拡張は1957回。ユーザーは価値として、柔軟性やスピード感を得ることができ、捻出できた時間を本来フォーカスすべきサービス改善に向けることができる。

ユーザーのフィードバックから生まれるAWSの新サービスと機能拡張

 一方で、ユーザー企業側はデジタルトランスフォーメーション(DX)が大きな課題となっている。AWSは「ソフトウェアによる価値の最大化」を意味する「デジタライゼーション」というキーワードを前面に押し出しているが、デジタル化によってビジネスや業界、生活を変えるという点では共通している。

 2012年、Webブラウザの生みの親とも言えるマーク・アンドリーセンは『Software is eating the world』と語り、ソフトウェアにシフトする未来を表現した。家電を例にするまでもなく、ハードウェアという物理的な制限から解放され、ソフトウェアによって多くのインターフェイスが用意され、バージョンアップが継続的に行なわれる世界になっている。

 デジタライゼーションは米国のビジネス界にも大きな影響を与えている。1965年、企業の平均存続年数は67年だったが、2015年には15年にまで短縮している。また、デジタルを駆使することで、短時間で米国のタクシー業界を崩壊させた「Uberlization」のような現象は、既存ビジネスや資産を持たず経営リソースをUI/UXに振り分けることで実現されているという。「もはや1つの製品やサービスをずっと使い続けるという時代はなくなっている。今は米国での動きだが、これは例外なく日本にやってくる」と亀田さんは警鐘を鳴らす。

業界を破壊するUberizationが進行中

 Amazonのジェフ・ベソスCEOは、「今後10年間に何が変わるかを頻繁に尋ねられるが、実際は10年間なにが変わらないかを問う方が重要な知見を得られる可能性が高い」と語っているとのこと。その点、Amazonの顧客は「早く安く、より多くのモノを欲している」という不変の要望があるため、その実現方法のテクノロジーを進化させるために長期的な投資を行なっているという。

予測できないコスト、マネージドサービス、学習コスト

 とはいえ、「日本のクラウド導入はまだまだ遅れているし、コスト削減の手段ととらえられることが多い」と亀田さんは指摘する。

 従来型のITは余剰キャパシティを見越した必要以上の投資になることも多いが、従量課金制のクラウドの場合はビジネスの成長に追従することが可能になる。とはいえ、予測つかない支出になり、減価償却としてはマイナスになるため、経理のユーザーは反対勢力に回ることも多い。「しかし、今はシステムのコストより、エンジニアのコストの方が高くなっている。この視点を持てることが、企業にCIOが必要になる理由」と亀田さんは語る。

 AWSのようなマネージドサービスが苦手という人もいる。現状、AWSの中でOSやミドルウェアの導入が必要なEC2だけで、それ以外はAWSが担当するマネージドサービスという区分だ。AWSに特化したサービスであり、ブラックボックスと見られることも多く、敬遠する人も多い。これに対して、AWSではITをフルコントロールする機能を提供している。たとえば、AWS Systems Managerであれば、サービスの状況をさまざまな角度でいち早く知ることができる。また、障害に関してもRTO(目標復旧時間)とRPO(目標復旧時点)をビジネス目線で設定すれば、それに応じてさまざまな監視や冗長化手法、バックアップ、アプリケーション設計を選択できる。「差別化を生み出さない高負荷なタスク(Undifferentiated Heavy Lifting)」はAWSに任せ、本来差がつくカテゴリに集中すべきという思想だ。

顧客を本来ビジネスに集中させるAWSのマネージドサービス

 学習コストの高さも課題と言える。たとえば、囲碁や将棋のプログラムや自動運転などで用いられる強化学習は、学習データを使う深層学習より理解が難しい。そのために作られた学習キットが会場でもハンズオンが行なわれたAWS DeepRacerだ。AWS RoboMakerやAmazon SageMakerを用いたシミュレーション、スコアリング、アルゴリズムの強化などを遊びながら学べるという。「日々の蓄積は今後数年にわたって大きな差となる。そこで得た信頼は長きにわたってあなたを支えるはず」と亀田さんは語る。

 最後、亀田さんは最近AWSがユーザーとして規定する「ビルダー」やクラウドを利用することによる「スーパーパワー」、さまざまな選択肢を与える「フリーダム」、新しい標準を意味する「ニューノーマル」など過去のre:Inventのテーマを説明しつつ、今年のre:Invent 2019とre:Capイベントについて告知し、基調講演を終えた。各セッションは後日レポートする。

初出時、北海道テレビ放送の社名を誤って記載しておりました。お詫びして、訂正いたします。記事は訂正済みです。(2019年11月2日)

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