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データ活用でフィットネスクラブの経営を変えるSportip

2019年11月18日 06時30分更新

文● 萩原愛梨 編集● ガチ鈴木/ASCII 写真● 曽根田元

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――そもそもAIオンライン指導ツールを開発するに至った背景は何でしょうか?

 私自身の原体験が根底にあります。私は幼少期から野球をしていたのですが、高校の時に野球を辞めざるを得なくなりました。実は小学校の時に「胸郭出口症候群」といい、先天的な身体の歪みがあることが発覚したのです。しかし高校の時の指導者は、私の身体的特徴を考慮しない指導を続け、その結果障害が発生し、12年間取り組んだ野球を続けられなくなってしまいました。

 選手の身体に合わない指導を行なうことは、選手の技術の成長を妨げるだけでなく、選手生命を縮めてしまいます。そこから「一人ひとりに合ったスポーツ指導を届けたい」という想いが生まれ、指導者を志して筑波大学に進学しました。

 しかし、次第にひとりの指導者がもたらすことができる影響力の限界を感じ、より広く価値を届けるためにサービスをつくろうと、起業を考えるようになったんです。

 それからは、フィットネス関連事業をするベンチャー企業でのインターンをしながら経営への理解を深め、大学では筋肉や骨格といった人の身体からスポーツマネジメントまで幅広い知識を得ていきました。そんな中、骨格等を推定する技術であるOpenPoseの論文を発見したんです。

「この技術を使えば、選手の身体に応じた指導のためのソリューションになるのでは」と気づきを得て、現在に至るツール開発が始動しました。

 “結果”にこだわったプロダクトを生み出し、業界のイメージを変える。

――数多くのスポーツ分析ツールがある中で、Sportip社の強みは何でしょう?

 まずは独自開発した姿勢推定技術です。私たちのサービスの誕生のきっかけになったものです。スマートフォンのカメラ一つで人物の動作を奥行きまで捉えることができます。 次に、スポーツ科学に強い筑波大学と協業体制。筑波大学の科学的知見を生かし、映像から得た”動き”というインプットデータに対してどのようにフィードバックを返すべきか有効なデータセットを作ることができる体制を有しています。

 筑波大学との協業体制は、技術面だけでなくマーケティングの側面でも強みです。私自体が筑波大学の体育専門学群を卒業していることもあり、優秀なアスリートや全国で活動するスポーツ指導者とのネットワークがあります。彼らにプロダクトの価値を伝えていくことで、そこから広く認知を得られるのではと考えています。

 スポーツ業界というのはトップダウンで、プロのアスリートが良いとするものが業界全体に受け入れられていく傾向があります。私たちは優秀なアスリートを媒介にして、人の勘や経験に頼らないデータありきの指導が生み出す本質的な価値を広めていきたいですね。

 また、ユーザー目線では時間的コストの削減が大きな差別化ポイントと言えます。これまでのオンライン指導ツールだと便利にはなってもデータの入力・解析に時間がかかり、結果的にオフラインのほうが早いと感じられてしまうことが多くあります。しかし、Sportipの場合はプラットフォーム上で撮影した動画を自動解析するため即時結果が分かる。この点は大きな強みとなっています。

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