南信州の廃村「大平宿」で昔の生活体験をした
2019年10月05日 15時00分更新
文● 有馬桓次郎 編集●スピーディー末岡/ASCII
当時のまま時間が止まったような大平宿
大平宿には車で乗り入れることはできないので、村の入口近くにある駐車場にとめ、まずは村の中を散策する。すごい、何だここは! 平日なので歩いているのは我々3人のみ。しんと静まりかえった村の中を細い砂利道がのび、その左右に古い民家が点在している。それが廃村というにはくたびれきっていなくて、住んでいる人の息吹が感じられる姿で建物が保存されているのだ。「時間が止まったような」とは、まさにこういう雰囲気のことを指すのだろう。
二言目には「すげー!」「すごいっすねここ!」と語彙力皆無な感想をつぶやきながら村の奥へと歩いていく……と、その時。通り過ぎようとしていた古民家の扉がいきなりガラリと開いて、口から心臓が飛び出るかと思った! どうやら建物の修繕に来ていた元住人の方らしい。こういう人たちの手で、村の環境が今に残されているのだ。正直、クマでも出たのかと……。
まるでタイムマシンで持ってきたような村の中を、周りに見とれながら歩いていく
この直後、横の家からいきなりおじさんが出てきて腰抜かしそうになるほどぶったまげるのだ!
このとおり、大平宿は完全なる携帯電波のエリア圏外
そのかわり、緊急時の連絡用に衛星公衆電話がひとつ備えられている
村の小道に沿って、一本のきれいな小川が流れている。これはかつて飯田藩がずっと上流から分水して引いてきた用水で、村の生活用、灌漑用に使われたことから「井戸川」とよばれている
村の入口に備えられたネコ車を使って荷物を運ぶ。大きな荷物は高永さんの押すネコ車にのせ、その他の荷物は小だまさんと筆者が手分けして運びこんだ
今晩泊まる古民家が見えてきた。今晩の宿は「深見荘」
深見荘は平成に入ってからの火災で一度焼け落ちたが、残った建材をつかって江戸末期の木賃宿そのままに再建した家だ
鍵を開けて中に入り、ブレーカーを入れて電気を通す。電気は基本的に照明用で、電化製品の持ち込みは禁止。囲炉裏のある板の間の奥には、6畳の居室が2間ならんでいる
土間には谷川の水をそのまま引いてきた流しと、羽釜つきのかまどが
隅にはお風呂を沸かすボイラーがある。もちろんガスではなく、すべて薪炊きだ