業務を変えるkintoneユーザー事例 第59回
Slackとの連携で日常のビジネスフローに根付かせる
社長を眠らせないオバケをkintoneで退治したSQUEEZE
2019年08月30日 09時00分更新
kintoneユーザー同士で活用ノウハウを共有するkintone hive。2019年は6会場で開催され、最後は東京会場。ここではトップバッターのSQUEEZEから発表された「社長を安心して寝かせてあげたい 〜スタートアップに潜む、オバケとの戦い〜」と題されたセッションのレポートをお届けしたい。kintoneの活用範囲が広いとはいえ、オバケ退治にまで使えるとはいったい……?
あまりにも社長が寝ないのは、オバケがいるせいでは?
登壇したのは、SQUEEZEの吉田 幸平氏。同社CEOである館林 真一氏が起業したきっかけは、自身の民泊運用経験にあった。館林氏の実家が不動産業を営んでおり、空室を活用するためにAirbnbの利用を思いつき、館林氏に相談した。物件があるのは実家のある北海道は旭川市、当時館林氏が働いていたのはシンガポールにある企業。国を超えて離れた場所から民泊経営ができるのか不安はあったというが、Airbnbに物件を登録し、館林氏はオンラインでゲストをサポートすることに。利用後の現場清掃は、旭川に住むお母様が担当した。この経験を通じ、民泊向けのゲストサポートと清掃をサービスとして提供すれば、より多くの死蔵物件を民泊で活用できるのではないかと考えるようになった。それを形にしたのがSQUEEZEというわけだ。
提供するサービスはふたつ。ひとつは、民泊を営むために必要なゲストサポートと清掃サービスの提供。もうひとつは、民泊運営に必要なシステムの提供だ。具体的には、海外の駐在員の家族などをゲストサポートとして起用。複数の国をまたいでサポート網を作ることで、それぞれの地域のワークタイムのずれを利用して24時間体制のゲストサポートを提供している。現地の清掃については、クラウドソーシングで現地近くの主婦層に依頼している。実数は公開していないが、全国で数百の物件を運営しているとのこと。
そんなSQUEEZEは起業から5年目のスタートアップ企業だ。ベンチャーやスタートアップの段階にある企業ではありがちな話だが、実現したい夢に向かって全力投球するために創業社長がなかなか休みを取れないという課題を同社でも抱えていた。吉田氏はある日のslackの画面キャプチャを示し、「社長が深夜にも早朝にもコメントをしている。社長を眠らせないオバケがいるのではないか」と、面白おかしく社長に関するエピソードを紹介した。
「社長ちゃんと寝てますか?と聞くと、寝てますよ3時間くらい、と平気な顔で答えるんですよ。健康的にもよろしくありませんし、社長がもっと寝てくれないとつきあうこっちも寝られません。社長に寝てもらうために、kintoneを導入して業務改善を行なおう!となった訳です」(吉田氏)
部署と業務が交差するとき、オバケは姿を現す!
社長を眠らせないオバケとは一体何か。オカルトな話ではなく、実務的な課題があるはずだと吉田氏は業務フローを見直した。そこで気がついたのは、社内を飛び交う情報の多さだった。この大量の情報こそがオバケの正体であり、気になって社長が眠れなくなる原因なのではないか。
「社内には3種類の情報が流れています。コミュニケーション系、業務フロー系、そして情報共有系です。中でも業務フロー系と情報共有系は部署と業務が交わる部分であり、この辺りに多くのオバケが潜んでいました」(吉田氏)
当時、業務フロー系の情報はGoogleスプレッドシートで、共有すべき情報はGoogle Driveで管理されており、都度Slackで共有されていた。Slackには大量の情報が流れており、その中から自分に必要な情報を拾い上げるのは難しかった。そこでこれらをkintoneアプリに移行し、業務を効率化していった。
「作ったアプリひとつひとつは難しい物ではありません。顧客管理や見積依頼、受注後の顧客管理など、テンプレートにあるようなものがほとんどです。ただ、一連の業務の流れに沿ってアプリを作っていくことと、画面をできるだけ見やすく作ることに気をつけました」(吉田氏)
プラグインを使い、部署や担当者ごとに見るべき表示を切り替えられるようにしたほか、チェックボックスにチェックが入ったら次の担当者に通知が届くようにした。さらにキンスキ.comを参考にトップページを業務ポータル化、Slackなどkintoneアプリ以外へのリンクもまとめることで、業務に当たって「まずkintoneにログインする」ことを習慣づけようと工夫した。
「社長に見せたら、めっちゃクール!とほめてもらいました。ですが、社内にはなかなか浸透しませんでした。日常業務の導線にkintoneが入っておらず、通知に気づいてもらえなかったのです。そこでさらにひと工夫しました」(吉田氏)
Slackはすでに毎日見るものとして定着していたので、kintoneとSlackを連携させ、通知をSlackに流すようにしたのだ。その努力が実り、kintoneが業務の一部として根付かせることに成功。kintoneを他のアプリと連携させるというと難しそうに感じるが、「Google検索さえできれば、難しいIT技術を知らなくてもできます」と吉田氏は言う。
kintoneを使ったオバケ退治は成功、しかし社長は寝てくれなかった
かつては情報が多すぎてアクセスしにくかった。業務フローが整理されていなかったので、情報自体はどこかにあるはずなのに、探しても見つからない。情報が見つかったとしても、それを持って誰に依頼すればいいのかわからない。そんな状況から吉田氏は、kintoneを使って業務フローを設計、プロセスを回せるようにした。
「課題が解決して、これこそ私が倒したかったオバケだったんだと確信しました」(吉田氏)
SQUEEZEという社名には、「中身がぎゅっと詰まっている」という意味が込められている。民泊というアプローチで、価値がぎゅっと詰まった社会を作っていきたい。ニッチな業態ゆえに手本とする先行者もなく、創業社長は自分の思いを支えに眠る間も惜しんで仕事に打ち込んできたのだろう。
「オバケを倒し、業務は効率化され、社長はゆっくり眠れるようになりました。眠れるようになったはずなんです。でも、深夜のslack投稿はいまも続いていて……結局社長は、自分の信念に突き動かされて寝る間も惜しんで働く人だったということがわかったのでした。その礎として、kintoneを中心とした業務インフラが今後も活かされていくでしょう」(吉田氏)
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