神戸市と米国シリコンバレーのベンチャーキャピタル 500 Startups は、2016年から実施しているスタートアップ育成プログラムの対象をヘルステック(HealthTech)領域に絞り込み、神戸医療産業都市と連携した「500 Startups Kobe Accelerator with a focus on Health(以下、500 Kobe Health)」として11月にスタートすることを発表した。
2016年から始まった育成プログラム「500 Startups Kobe Accelerator」は、海外からの参加も受け付けているため、昨年は応募の半数が海外からであった。これまでは対象を 500 Startups が得意とするITならびにデジタル領域全体としていたが、近隣の自治体や企業でも同様の支援事業が増えていることから、神戸市ならではの強みを出せる領域としてヘルステックに対象を絞り込んでいる。
国内外でも増えるヘルステックベンチャー支援
ヘルステックビジネスは世界的に注目度が高まっており、国内でも経済産業省がビジネスコンテストを開催するなど、支援活動に力を入れている。また、自治体や商工会議所がイスラエルやボストンなど、海外のヘルステック企業と交流するイベントを開催するケースも増えてきた。
そうした中、神戸市には阪神淡路大震災の震災復興事業から生まれた神戸医療産業都市があり、ポートアイランド地区を中心に、ライフサイエンス分野に関連する約350の研究機関や企業、大学が集積する日本最大のバイオメディカルクラスターがすでに整備されている。
また、バイエル薬品がインキュベーションラボ施設「CoLaborator Kobe(コラボレーター神戸)」を開設し、神戸に医薬研究所を開設する日本ベーリンガーインゲルハイムでも起業支援プログラム「イノベーション・プライズ」を行うなど、地場企業の関心も高まっている。
リブートされる 500 Kobe Health では神戸医療産業都市からのサポートをはじめ、その周辺企業や関係機関と連携していく。特別メンターによるセッションや関連施設の視察、情報交流などの機会を提供する。また、要望があれば医療関係者のヒアリングやフィールドテストへの協力など、様々な方向から支援を行うとしている。
プログラム終了後の継続的な支援が可能に
500 Startups 側にとってはヘルステック領域に絞り込んだ支援は初めての取り組みとなるため、今年に入ってから何度も交渉を重ねて体制づくりを行ったという。これまでと同様に 500 Startups のグローバルスタッフが1対1形式でメンタリングを行い、プログラムは原則として英語で行われる。マーケティング、マネタイズ手法の講義、コミュニティ形成支援など、スタートアップが苦手とする自社アピールやビジネスプランの再確認などを指導する。
参加対象は、医療や介護、健康、保険、食や美容に関連するハードウェアやソフトウェアを手掛けるヘルステック全般。ただしプログラムは11月4日から12月16日までで、間に休みを挟む実質4週間の短期集中となるため、長期的な取り組みとなるバイオや再生医療などの分野は除外される。すでに製品やサービスがあり、チームで活動しているスタートアップを推奨しており、20チームまでの受け入れ枠を用意している。
プログラム成果を発表するデモデイは昨年まで東京開催だったが、今回は神戸で開催し、神戸医療産業都市との連携を強める。さらにポートアイランド内に2020年9月完成予定の「クリエイティブラボ神戸」への入居優遇策を提供するなど、プログラム終了後も神戸市で継続的な支援を行うことを予定している。
コワーキングスペースとの連携も
神戸市のプログラムにこれまで参加した56社の中でも、ヘルステック領域のスタートアップは11社あり、そのうちの一社、医療ソーシャルワーカー向け介護施設マッチングサービスで注目されるKURASERU(クラセル)は神戸市内で起業している。
また、スタートアップ全体の育成支援策として「神戸市イノベーション拠点立地促進事業」を兵庫県と連携して実施しており、ON PAPER(オンペーパー)、.me BASE(ドットミーベース)、fabbit 神戸三宮の3事業所を認定済みで、11月にはWeWork神戸もオープンする予定だ。
それぞれのコワーキングスペースでは資金調達や海外進出など、得意とする支援メニューを持っている。これらと自治体が持つ支援メニューを相互連携させながら、ヘルステックビジネス全体の育成も目指している神戸市の動きに今後も注目したい。