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「arrows」シリーズを支える工場が見据えるもの作りの未来

2019年09月30日 09時00分更新

文● スピーディー末岡/ASCII編集部

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日本のもの作りの火を絶やさない!
JEMSの社長に今後の展望を聞く

 メイド・イン・ジャパンにこだわり、国内で研究から製造まで行なう富士通コネクテッドテクノロジーズの「arrows」シリーズ。前回は純国産ならではのクオリティーを確かめるべく工場見学に参加したが、今回はこの工場の責任者で、ジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社(JEMS) 代表取締役社長の髙橋英明氏に、もの作りの今後についての話を聞いた。

──さっそくですが、工場の概要を教えていただけますか?

髙橋英明社長(以下、髙橋) もともとは富士通のディスプレーサブシステムとか、大型のシステムプリンター装置などの開発・製造を担当する富士通周辺機株式会社(FPE)として事業を開始しましたが、その後、携帯情報端末の開発・製造を手がけることになり、昨年3月末に携帯電話事業及びユビキタス事業をFPEから分割・継承し、現在に至っております。JEMSとしては、操業開始後いまだ2年目で、本年4月からは、ポラリス・キャピタル・グループが株式の100%を保有しています。

──それでは、工場の規模感を教えてください。

髙橋 工場の作業エリアは約2万平方メートルの広さで、この中で各部門が業務しております。たとえば、プリント基板への部品実装は月約2億個強行なっております。また、富士通部ブランドの携帯情報端末以外に、他社ブランドの情報端末の製造受託もしており、日本の製造力を強化する目的で、各種自動機(製造ロボット)の導入も積極的に推進しており、ある機種では製造工程数の約9割を自動機で製造しています。

ジャパン・イーエム・ソリューションズ 代表取締役社長 髙橋英明氏

──ほぼ自動化なんですね。

髙橋 完全自動化もできなくはないのですが、お客様のきめ細かい要望に応えるには、やっぱり人の手による仕上げやチェックが必要になってきます。最後の梱包もディープラーニングなどを活用すれば自動化できるんですけど、かなりのコストがかかってしまう。(投資を)回収できないレベルで。

──落下実験などでは独自のロボットが使われていましたが、ラインのロボットも独自のものなのでしょうか?

髙橋 いや、ロボット単体は購入しますが、部品を掴むチャック部分、外装フレーム、制御系とかをシステムとして構築するのは、すべて社内設計で対応しています。

自動化のメリットは作業効率だけではない

──それらのロボットを使うことによって、どのくらい作業効率が上がったのでしょうか?

髙橋 具体的な数値は出せませんが、当然ながら自動化することによって大幅に効率は上がっています。単にコストの問題ではなく、期待しているのは品質です。もの作りというのは「納期」「品質」「コスト」です。コストも抑えられて、品質も安定するし、納期は守られる。それを狙って自動化を進めたという背景があります。

──工場を見させてもらいましたが、意外と作業している方が多いと感じました。

髙橋 外観検査機を入れても、すべてロボットが合否判定できるわけではありません。製造工程では良品のように見えても不良品という、微妙なレベルのものが出てきます。一見すると何も問題がないように見えて、細かく見るとキズがついていたりして売り物としてのレベルまでいってない。その判断がロボットでは難しいので、人の目で確認します。塗装の光沢だったり、ハンダのなじみだったり。不良品が出たら交換すればいいじゃないかと思われそうですが、われわれはメイド・イン・ジャパン、高品質をうたっていますので、そこはしっかり検査をします。

──ただ、ヒューマンエラーもありますよね。

髙橋 そうですね、基本的に人間は間違うことがあることを前提に、カメラや製造履歴システムなどをラインに導入し、製造データとして保管しております。たとえば最終顧客様より添付品が付いていないといったご指摘を頂戴した場合は、保管している製造データをもとにキャリア様・ショップ様に情報提供し、ご理解を頂くようにしています。

時代の流れに遅れないよう
ロボットの汎用性を高めていく

──最近、デジタル業界のトレンドは移り変わりが激しいですが、ロボットもその都度アップデートしていくんでしょうか?

髙橋 自動化のメリットはいかに汎用性を高めていくかです。たとえばスマートフォン専用に作ったとして、スマートフォンはライフサイクルがありますから、そのたびに全部作り替えてたらコストが大きくなってしまうし、効率的ではありません。プラットフォームを持ってて、大きさ(インチサイズ)が変わったり、製品のカテゴリーが変わっても、製品を置くトレーを変えるだけでさまざまな条件に対応できるように汎用性を高めていきます。

──なるほど、常にフレキシブルに対応できるような準備をしているのですね。

髙橋 弊社は独立しましたが、昔ではできなかったこともスピード感をもってできるようになったメリットがあります。昨年の11月に中国・深センに調達のサポートのための子会社を設立しました。これは富士通時代だったらできなかったと思います。このように臨機応変に動ける反面、リスク管理はしっかりやっていかないといけなくなりました。社員全員が会社維持のために力を合わせていこうと従業員にはよく言っています。

──会社をしっかり回していくことも重要ですね。

髙橋 これは私の個人的な考え方ですが、いろいろなお客様のご要求にお答えするためには、ソフトだけでは対応困難と考えており、最適なハード機器との組み合わせで、お客様に最適なソリューションを提供できると考えております。

日本中の携帯電話をココで作りたい

──それでは最後に、今後のJEMSの展開を教えてください。

髙橋 結論から言うと、日本の携帯端末系を含めたプロダクトをここに集めたいと思っています。気がつけば、日本で携帯電話を製造している拠点はここしかないんです。他社さんに我々のもの作りのコンセプトをしっかり説明して、日本で付加価値を残していこうというスタンスで、いろいろご提案している最中ですね。ここで他社さんの携帯も作ることで、より多くのフィードバックが活用でき、安定した品質でご提供できると思います。

──ありがとうございました!

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